【17】不思議な夢と『黒』の魔導書
ダンジョンから帰ってきた日、僕はヘトヘトで、夕飯を食べたらすぐに眠ってしまった。(ちなみにレベッカは、『えー!今日全然ブーちゃんと触れ合えてないのにぃ!』と不服そうだった。)
そしてその日、不思議な夢を見た。
◇◇
僕は夢の中で立派なオフィスのような所にいた。
目の前には黒い服を着た爬虫類系のイケメンが座っている。
「…ああもうっ!やっと繋がった!!
『佐伯ノブオ』君!
コンタクトが遅れてごめんね。豚の身体となかなか周波数を合わせるのが難しくてさ。
それにしても、まさか君が事故に合って、悪役令嬢のペットに憑依するとは思わなかったよ!!
玉もちゃんと拾ってくれていたみたいだねっ!」
そう言って僕のことを抱きしめた。
…あれ?僕、人間に戻ってる?!
「えっと…。貴方は誰ですか?」
困惑しながら聞くと、黒服のイケメンはポリポリと頬を掻いた。
「僕は神道露樹。
日本での顔は『サムシングクロス』の社長!
そして、本当の僕はまあ…神のようなものかな!!」
「か、神様っ…?!社長…?!」
僕はびっくりして思わず大きな声を出してしまう。
「…ううん。『神』じゃなくて『神』みたいなもの、だよ!そこら辺間違えないでねっ!」
そう言ってウインクをされた。
はて…。何かこだわりがあるんだろうか。
「いやー、実はきちんと確認を取って契約してからね、君にはこの世界に身体ごと来てもらおうと思ってたんだよ。
そう思ってきちんと部下にも下準備させていたんだ。ところが面談前に事故に遭っちゃうんだもん。ビックリしたよー!!」
ちょっと待って。
なんかツッコミ所が満載すぎるんだけど…。
「え、えーと。部下って。
もしかして執行役員の青山さんの息子さんですか?」
「そうそ。青山の息子とあとインターンの女の子。
なんて名前だったかな。確か、みんなにリエちゃんって呼ばれてたかな。」
リエちゃん…?そんな知り合いいたっけ?
「うーん。女の子の方はちょっとわかんないです。」
「あれー、おっかしいなぁ。
ノブオ•ノーリッジもその子がデザインしたんだよ?君をモデルにしたって言ってたんだけど。」
は…?ノブオ、ノーリッジ…だって?
「え、えーっとそれって、『僕』を攻略対象としてこっちに呼ぼうとしてたってことですか?!」
「うん。そうそ。こっちにはインテリ系可愛いイケメンがいないからね。
日本から来てもらおうかなって!初めての試みなんだっ。凄いでしょ!
僕の『神力』も出血大サービスで大盤振る舞いして、『黒』属性も付けたんだよ。
スキルの【人化】も君が豚になったって知って玉を通じて僕があげたのっ。」
え。色々と聞きたいことは多過ぎるけど、ちょっと待って。
「『白』属性と『抽出』っていうスキルもあったんですけど、それをくれたのは貴方じゃないって事ですか…?あと、玉ってなんですか?」
「あー、うん。僕じゃないねぇ。まあ、そのうち『アイツ』もコンタクト取ってくるんじゃないかな。
玉はね、拾ったでしょ?大学で。この玉。」
そう言って見せられたのは僕が事故にあった日に食堂で拾ったキラキラしたボールだった。
「!!これ。誰かの落とし物かと思ってました…!」
「違うよーん。君のでしたっ。
これさえ近くにあれば元の身体や僕と君の魂が完全に途切れることがないから。」
…ということは。僕の想像が外れていなければ。
「…えーっと。つまり?」
「君の身体は今、大学近くの花山田地区の病院で眠ってるよ。外傷はちょっとあったけどそれも治ったし、意識がこっちにあるだけで元気って事!!」
やったーーーーー!あ、でも…。
「…お、お金は?入院費!結構かかりますよね?!僕んち、貧乏なんですけど。」
「大丈夫!!うちの会社の方で持つからっ!
元々君を説得する為にお金はつぎ込むつもりだったし!」
ま、マジで?!
「やったーーーーー!!!!社長っ!神様っ!超いい人っ!!!」
「…いい人?!神様?!初めて言われたっ!でも悪い気はしないねっ!あ、『黒の魔導書』と『人化』についての説明書は置いとくから読んでおいてね!」
そう言って神道社長がニンマリしたところで夢は終わった。
◇◇
翌日。
(な、なんだかすっごいリアルな夢だったブー…。)
そんな事を思いながら目を覚まし、何気なく枕元を見ると。
「…!!本当にあるブー!」
僕は昨日夢で神道露樹社長が言っていた、『黒の魔導書』と『スキル『人化』の説明書』を発見したのだった。
ちなみに『黒』の魔導書は記憶を改竄したり、監視したり、いたずらしたり、黒魔法で攻撃したりする方法が書かれていた。
これはやりようによってはとんでもなく有能なのでは!
そして、『人化』のスキルの説明書、というか手紙を見て僕は目を見開いた。
『このスキルを使う事で一日10時間程人間になる事が出来ます。※服も人間サイズになります。
発動方法:手を胸の前で組んで人型になりたい、と念じること。』
え、え?それだけで本当に人間になれるの…?
…でも。人間に戻れるのは嬉しいけど、今更どのタイミングで人間になればいいんだ…。
僕の脳裏にレベッカの顔が浮かぶ。
『ブーちゃん、大好きっ!』と言って僕を抱きしめてくるレベッカ。
人間になった僕を見たら彼女はどう思うのだろうか。
(気持ち悪がられたり、しないブーかね。それに。)
…レベッカがもう僕に『大好き。』と言ってくれないのは寂しい。
自分勝手にもそんなことを思っていると。
コンコン!
「はーいブー!」
「ブー様!朝食の準備が出来ました。レベッカ様がお待ちですよ。」
マリーさんが呼びに来てくれた。
レベッカはニコニコとずっと僕に話しかけてくれていたけれど、何となく僕は目を合わせる事が出来なかった。
◇◇
夕方、侯爵家に帰ってきた僕はホクホク顔だった。
朝食後、早速ギルドに行ったのだが。
なんと、最初に倒した翼の生えた狼のようなモンスターが実は『グリフォン』で結構強くて素材も価値のある魔物だったのである。
換金したら冒険者登録料を差し引いても100万円程(白金貨10枚)のお金になった。特に魔石が高額だった。
そして、その足でヴァレッタの宝石店に行って、レベッカの瞳の色にそっくりな白金貨2枚ほどの高額なエメラルドのピアスを大奮発したのである。
べ、別にハネス王子に張り合ってなんていないからねっ!!
(ブー…。このピアスをつけたレベッカは可愛いブーだろうなぁ。)
僕は早速ピアスに加護の魔法をウキウキと付与するのだった。




