【11】ハネス王子の秘密の恋人
次の日の放課後。僕は引き続きヒロインであるミーナが次は何をするのか確認することにした。
(あーあ、こんな事なら楓の家でもうちょっと攻略本読んでおけば良かったブー。)
わかっている攻略対象は2人。筋肉担当のルイとハネス王子だ。
だが、インテリ枠と教師枠、商人か冒険者辺りのイケメン枠が、誰かわかっていない。
「レベッカ。多分ヒロインの攻略対象はあと3〜4人ぐらいいるんだブー。
でも、それが誰か分からないからミーナの行動を見ておいた方がいいぶ。」
「分かったわ。とりあえずミーナさんのいるF組に行きましょ…」
そんな事を話している時だった。
たたたたたたた!!!!
教室の窓から物凄い勢いで廊下をミーナが走っていくのが見えた。
「レベッカっ!」
僕がレベッカの方を振り向くと頷いてくれた。
「ええっ!行きましょう。」
廊下を走るのは危ないので2人で手を繋いで浮遊する。
一度宙に浮いたまま中庭に出て、ミーナがどこに行ったか確かめる。
「れ、レベッカ様?!」
「豚と浮いてる?!」
生徒達は僕達を見て唖然としている。
「…!!!あそこだぶ。」
窓からミーナが見えたのでそこに着地すると、生徒会室の前だった。
廊下の開いている窓から生徒会室の目の前にスタッと着地する。
目の前にいきなり現れた僕達を見てミーナが目を見開きながらも怒っている。
「ちょっと!なんで貴方達も来るのよ!」
「…廊下を走ってて危ないし不審だったから追いかけて来ただけだぶ!」
僕がビシイッ!と蹄を向けてやると、ミーナがため息を吐いた。
「もー、この豚は!なんでいつもいつも邪魔すんのよ…。」
「そもそもネルソン男爵令嬢の行動が不自然なんだぶ!君、何者ぶ?!もしかして転生者か憑依者ぶ?」
「なっ!!」
ミーナが一瞬焦った顔をした瞬間、生徒会室の中からとろける様な甘い声がした。
「ああ…ミー。なんて可愛いんだ。」
「!!?」
これはもしかして王子の声だろうか。レベッカの方を振り向くと、戸惑った顔をしつつも頷いてくれたので、僕は扉を開ける。
何故かミーナは焦った顔をしているが無視である。
(ノックしなかった事を怒られたら、豚だからで通せばいいぶ!)
そう思いながら、トテトテ入っていく。
――部屋の奥にはフワフワの可愛い猫と戯れる銀髪のイケメンの姿があった。
「ははは!!舐めないでくれよっ。ミー!!!君は世界一可愛いよっ。」
そんな事を言いながら蕩けるような笑顔をしていたが、僕達に気づいて固まった。
シーーーーン
「れ、レベッカ?!…豚?!……ん?誰?」
その一言だけで、ハネス王子の潔白は証明されたのである。
隣を見ると、ミーナは顔面蒼白で固まっている。
(…ミーナは一体何がしたかったんだぶ?)
◇◇
「ハネス様のいうミーちゃんって、猫のことだったんですね。」
そう言って、レベッカが微笑む。
「いやー、実は一年生の冬からこっそりここでミーを飼っていたんだ。可愛いだろ?」
2人で並んで談笑している所を見ると、非常に絵になる。そんな2人を見て胸がちょっとだけ傷んだ。
(ブー…王子でイケメンでオマケにいい奴そうだぶー。ブーなんて、豚だぶーし、人間に戻った所で貧乏だブーし…。)
「君が例のレベッカのブーちゃんか。初めまして。ハネス・ムーンヴァレーだ。この国の第二王子でレベッカとは婚約している。」
そう言って、ハネス王子はキラキラの笑顔で僕に微笑んできた。
「ブー…ブーだぶ。レベッカの…ペットだぶ…。」
(…立場が婚約者とペットって時点でなんかもう負けたぶ…。完敗だぶ…。)
ちなみにミーナ・ネルソン男爵令嬢は『知らない人だし…。部外者を入室させるのはちょっと。』と普通にハネス王子に退場させられた上にドアを閉められていた。
「そして、こちらが僕のペットの『ミー』だ。仲良くしてあげてほしい。」
猫のミーちゃんはじーっと僕を見た後フイッとどこかに走り去って行ってしまった。
「あらあら、ご機嫌斜めだったのかしら?」
レベッカがそう言うと、ハネス王子が眉を下げた。
「さっきまでご機嫌だったのにな。
そうだ、明日は君の誕生日だよね?少し気が早いが、後でこれを渡そうと思って用意していたんだ。明日は校外学習だし、渡す機会がないと思って。せっかくだから今渡しておくよ。
今週末の君の誕生日パーティー、父上と母上は会談でいないけれど、僕だけでも行くからね。」
そう言って、ハネス王子はキラキラした宝石が沢山付いたお洒落な髪飾りと高級そうなフルーツが沢山乗ったケーキをレベッカに手渡した。
僕はそれをボーッと見ていた。
「ナマモノだから早めにアイテムボックスに入れてくれると嬉しいよ。」
「まあ、ハネス。ありがとう!大事に使うわね。」
そう言ってレベッカが微笑んだ。
…なんだか居た堪れなくなってきてしまった。
「…ブー…ブーちょっと、散歩行ってくるぶ。馬車が迎えに来る時間にはちゃんと校門前にいるブーから。」
「え?!ちょ、ちょっとブーちゃん?!」
レベッカが席を立とうとするが制止する。
「レベッカはちゃんとハネス王子と交流しとくんだぶ。婚約者は大事にしないと駄目ブーよ。」
そう言って、僕は駆け出した。
普段は食い意地の張ったプライドのない僕だけど、こんな時だけ都合よく『自分が人間だったら良かったのに』と思ってしまうのだった。




