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野草料理が得意な貧困大学生、悪役令嬢のペットの豚に憑依する。  作者: 間宮芽衣(旧ブー横丁)
憑依&異世界生活編@ノーリッジ侯爵家

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【9】スライム大量発生と謎の叫び声〜桑の実大収穫!


「お二人の魔法は何属性なんですぶーか?」

これから一緒に戦う事になるので、一応戦闘前に確認させてもらう。


 すると、ウェッジさんが水属性で、ナターシャさんが風属性だった。


 それを聞いて僕は思案する。


(丁度準備してきたものが使えそうブーな。良かった。)

 

 暫くテクテク歩いて行くと、ウェッジさんは少し動揺した声で


「下がれ…!」と言った。


「?どうかしましたブーか?」


覗き込んで見ると、なんと川辺に恐らくスライムだと思われるぐにゅぐにゅしたものが100匹以上大量発生していた。


「すまない、本当はブーちゃんに1匹くらいまずはトドメを刺させてやりたいと思っていたんだが…。


 この個体数は流石に無理だ…!100匹越えるとベテランでもキツイかもしれない…。それに、色を見ると、恐らく通常のスライム以外の個体も混ざっている…。


 申し訳ないが一回戻ろう。」


そう言ってウェッジさんがションボリしている。


 レベッカに『ブーちゃん行くわよ。』と、蹄を引っ張られたので待ったをかける。


「ウェッジさん、質問ですぶ。スライムって上に登る習性ってありますブ?」


「いや、ないが。それがどうかしたか?」


ウェッジさんは困惑顔である。


「…よかったぶ!それなら大丈夫ですぶ。


 レベッカ。スライムが登ってこれない高さまで土を囲うように盛り上げてもらうことって出来るぶ?


 内側に空気が籠るようにしてもらえると助かるぶっ。」


僕がそう言うと、レベッカは困惑しつつ、


「ええ、出来る…けれど。」と言ったのでお願いした。


 レベッカが目を閉じて大地に向かって両手を向けると、地面が少しだけ小刻みに揺れる。


 カタカタカタカタ…


 次の瞬間。


 ゴオオオオオオオオオ!


 レベッカが両手を天に向けると、地面がスライムを取り囲むように2メートル程の高さになった。


「おおー!!!!レベッカ!!凄いブー!!」


「ふぅー…。ブーちゃん、これでいい?」


レベッカが少しだけ汗ばんでそう言ったので頷く。


「ぶ、ありがとうぶ!ウェッジさん、ブーを土の盛り上がった所に乗せてブー!」


 そう言うと、『ほらよっ』と言いながらヒョイとウェッジさんが僕を乗せてくれた。


 ペコリと頭を下げると『…可愛いな!おい!』と何故か悶えている。


「…ブーちゃん何をする気ー…?」


ナターシャさんが眉を下げて心配そうに見ている。


「大丈夫だぶーよっ!大したことはしないぶ。」


そう言いながら僕はカバンから小麦粉を取り出して、スライムの隙間に何個かに分けて置いた。


 そして、スライム同士の隙間に火のついた蝋燭をそっと置く。


「みんな下がってぶ。ナターシャさん、ブーが何箇所か置いた粉に空気を混ぜて一気に舞い上がらせるような感じで風を吹かせてくださいぶー!!


 みんな、前に出ないようにしてくださいブーね!!」


そう言うと、ナターシャさんが頷き、風を起こす。



 ――バンッ!!!


ドカアアアアン!!!!!!!


 大きな炎がスライムを包み、爆ぜた。



「キュイイイイイイイイイイイイイイーーーーーーーーーー!!!!!!!」


 スライム達が突然のことに驚き、逃げようとするものの無惨に燃えて断末魔をあげる。


「ぶ、ブーちゃん?何をしたの?」


レベッカ、ウェッジさん、ナターシャさんが唖然としている。


「粉塵爆発を起こさせたんだぶ!


 よく炒った水分の少ない小麦と空気をよく混ぜて粒子を拡散させると炭化して二酸化炭素が大量に発生するんだぶーよー。


 そこに火を投入すると、爆発するんだぶ。


 上手くいって良かったブー。」


火は轟々と燃えて、スライム以外の周りにいたモンスターも巻き込み、叫び声やうめき声で地獄のような光景になっている。


(あ、ちょっと見た目、グロいブーな…。なんか、3人ともちょっと引いてるし。


 でもブーの見立てでは恐らくダンジョン全体が一つの生き物だブーから()()()()()()()()()と思うブーけど。)


 ちなみにいい感じで土壁がバリケードになってくれていて僕達は安全である。


「ブ?!なんだか、美味しいものを食べた時みたいに爽快な気分だぶー!!!」

 

 そう言ってピョンピョン跳ねていたら急に本当に浮遊出来るような気がしたので試しに『浮遊魔法』を発動してみた。


 ふわっ。


(おおー、ちゃんと飛べたぶ!…ということは、少なくとも浮遊魔法が使えるレベル27以上にはなったってことだぶーな。)


 ちなみに空気抵抗がある動きだと飛びにくいので、ヒラヒラと体を伸ばして飛ぶと快適だ。


すると、放心していたレベッカが、ハッとした顔をして叫んだ。


「凄い!!ブーちゃんが飛んだわっ。」


「ブー!!!気持ちいいぶ!ちょっとだけ空中散歩してくるぶ。みんなはダンジョンを出てすぐの、近くのレストランでご飯でも食べててブー!!ブーも散歩が終わったら行くぶっ。


 飛べるからモンスターに会っても逃げれるんだぶ。」


そう言うと、ウェッジさんが『お、おう。わかった。』と返してくれたので一旦別行動になった。


「ブーちゃん!気をつけてね!」

手を振るレベッカに一旦別れを告げる。


「ブー!大丈夫だぶ。」


周りを飛んでいると、近くの木に桑の実が沢山実っていた。


(…そうだぶ!!レベッカがもうすぐ誕生日って言ってたブーから、これで美味しい桑の実タルトを作ってあげるんだぶっ!!!)


僕は川の周りが地獄絵図になっているのを尻目に、桑の実をたっぷりと採集しまくった。


 桑の実は小麦粉が入っていた袋をよく払ってからぎっしりと入れた。勿体無いから有効活用しなくちゃね。


 思ってたより袋に小麦粉が残っていたけどテキトーに地面に落としてしまった。すると、下の方で


 バン!!!!


と音がした。


「ぶ?!なんだぶ?!」


 僕は知らなかった。


 …たまたまテキトーに払った小麦粉が密閉状態のゴブリンの巣の近くに舞い落ち。


 そこにさっきの爆発の火の粉が飛んで巣の中で新たに粉塵爆発が起きてしまったことを。




「「グギャギャギャギャギャギャ!!!!!!!」」


(…?なんか、今変な声が聞こえたブーな。まあいいブーか。)


 そう思いながら僕は気合を入れてせっせと桑の実を採集するのだった。


「ブー!疲れたブー。ちょっと座って休憩だぶ。あ、この岩、椅子にするのに丁度良さそうだぶ!よいしょ。」


一休みする為に運んだ大きな岩でゴブリンの巣穴の出入り口を完全に塞いでいたことを。


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