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0008話 笑わないご令嬢の婚約者に釣り合わないと破談の申し込みをしたら……

SE指示などはあくまで目安です。

文字数(空白・改行含む):1781字

文字数(空白・改行含まない):1708字

[私(わたくし) 読み]

「ご機嫌よう。『話がある』とのことでしたが、如何なさいましたか?」

「『ここでは話しにくいこと』? ……分かりました。部屋の用意をいたします」

[SE/扉の閉じる音]

「ここでよろしいですね?」

「それで、そのお話とは?」

「婚約を解消、ですか」

「因みに理由を伺ってもよろしいでしょうか?」

「『釣り合わない』? 要領を得ませんね。それは一体、どういうことでしょう?」

「……はぁ、そういうことですか」

「納得した訳ではありませんので、まずそこは悪しからず」

「1つ、『この婚約には意味が無い』というのは違います。お(いえ)にとって意味のあるものです」

「2つ、私はあなたを嫌ってなどおりません。言外の意図を汲み取られては困ります。私の言葉はそれ以上でもそれ以下でもありませんので」

「3つ、確かにお家の意向に多少の不満はありますが、あなたに不満はありません」

「あなたは多少自信の無さが目につきますが、あなたはあなたの思う以上に能力と魅力のあるお方です」

「前に申しました通り、背筋を伸ばし、胸を張って堂々としてくださいませ」

「……私の笑顔が少ない、ということに関しましてはこちらも善処いたします」

「こればかりはあなたの不安を煽る点になってしまっていたと反省します。申し訳ございません」

「それで、話したかった内容とは、これ以外にはございませんか?」

「あなたの能力と魅力、ですか」

「端的に申し上げますと、それは私に足りないものを持っているということです」

「私は見ての通り、言葉少なで表情も硬く、相手を委縮させたり誤解を生むことも少なくありません」

「最近は多少の改善はできたかと自負しておりましたが、あなたから破断の申し込みを受けたということは、結実していないということ」

「私はこれからもコミュニケーション能力について精進していかなければならないと思いますが、あなたは私よりも表情豊かで相手を委縮させることもない」

「一朝一夕で得ることのできない能力を個々人別のものを持っているということは、重要だと存じております」

「家庭にしても経営にしても、組織団体である限りは」

「『表現が堅い』? 失礼いたしました。ですが、分かっていただけましたか?」

「それなら良かったです。これで、問題はありませんか?」

「婚約者としての魅力、ですか。私の表情が硬いこともあり、あまり伝わっていないかもと思っておりましたが、まさか本当にそのようだとは……」

[主音声/小声]

「……これでもあなたの前では感情が表に出ているのかと思いましたが」

[主音声/普通]

[主音声/咳払い]

「いえ、なんでも」

「これを答える前に、私からの質問もしてもよろしいでしょうか?」

「ありがとうございます」

[主音声/咳払い]

「あなたは私の表情が硬いことにかこつけて、あなたの言わせたいことを言わせようとしているのではありませんか?」

「分かっていなさそうな表情ですね。いえ、分かりました。それなら大丈夫です」

「あなたの婚約者としての魅力、それは先ほども申し上げましたが、表情豊かで相手を委縮させないことです」

「これは"運営される家庭"に要される能力とは別に、私個人の……個人的な感情によるものです」

「あなたの私の家族をお目に入れたことはあるでしょう?」

「私と同じく……表情の硬く、威圧感のある人ばかり。それは私の実家、親の所帯だけの話ではなく、親戚についても同じ」

「血族なら堅苦しい程度で済みのでまだしも、姻族であるなら政治的駆け引きも含んだ会話も勿論、差し引くことはできません」

「あまり表立って口にできませんが、その方々との会話は肩が凝るというもの」

「その分あなたは、私も緊張せずにいられますので、そこがあなたの『人としての魅力』というものであると考えております」

「しかし私の肩肘が和らいだところで自身の表情筋がもとより硬く、仏頂面であなたに接してしまっていたということも分かりました」

「気を付けて参りますので、自然と威圧感を出さずに接することができるようになるまでご容赦いただければと存じます」

「それでは、改めて婚約解消の話はなかったことにしてもよろしいですね?」

「はい。ではどうぞ、これからもよしなに」

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