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0005話 政略結婚で結婚した清楚な若妻に後ろめたく話しかけられなかったが、打ち解けるため話し掛けても反応が良くなかったため離婚を提案してみると……?

文字数(空白・改行含む):2196字

文字数(空白・改行含まない):2128字

[私(わたくし) 読み]

「え、リコン?」

「リコンって、離別の『リ』に、婚姻の『コン』の、離婚ですか?」

「あの……私に何か、不満などがあったのでしょうか……?」

「逆に私があなたに、ですか? ありませんが……。もしあるとするなら、今、離婚を提案されたことでしょうか……」

「それ以外……うーん、スキンシップが少なめなところ、というのも無くは無いでしょうけど、それは私も似たようなものだと思いましたので」

「ありませんよ、それ以外の不満は。その……言ってしまえばあなたは私の好み、と言える人ですので」

「『何故』? 何故とは、何がでしょう?」

「確かに私とあなたは年齢差が大きく、巷で言う『歳の差婚』と呼ばれる結婚であることに違いはありませんが、そこに私の不満はありませんよ?」

「家の格? 収入? そこは別に問題は無いと私は思っておりますが……」

「私自身、家の重要な政略を担っている訳ではありません。……いざというときは頼まれるかも知れませんが」

「あなたの収入も、一般家庭を運営する上で問題は無いと思っておりますよ?」

「私自身の収入もありますし、この先、子を身籠ることがあってもあなたの収入だけで不自由になるとも思えません」

「何か大きな不幸があっても、常識的な範囲なら私の実家で補填は可能だと思ってます」

「あなたは……多数の起業を行なって銀行からの負債を抱えるようなお人でもありませんし、身を亡ぼすような博を打つことも無いと思っております」

「健康上も問題は無く、倫理観、金銭感覚も問題は見られないと思っておりますが……どこが不安としてあるのでしょうか?」

「『話し掛けてもリアクションが薄い』……ですか」

「これについては私の落ち度です。誠に申し訳ございません。これはその……あなたが私の好みですので、少し、緊張してしまいまして」

「ですが、そうですね。これにはあなたの落ち度についても話しておくべきかも知れませんね」

「確かに私もあなたと話し合ったり、触れ合ったりするのを躊躇ってしまいました」

「が、それはあなたが……清淑で奥ゆかしい方なので、それに合わせないといけないのかと存じまして。そういう対応になってしまった次第です」

「あなたの年齢を考えれば私は小娘も同然。そんな小娘が静かなあなたに対して姦しく騒ぎ立てても、ただはしたないだけだと思いました」

「『清楚な君に政略結婚した年上がはしゃいでいると思われたくなかった』? 確かにそうかも知れませんが……」

「そもそも、私はあなたが思う程、清楚ではありませんよ? この結婚自体、仕組むように頼んだのは私ですし……」

「え?『聞いてない』? お父様もそそっかしいところがありますので、この事情をお聞かせなかったのかと思います。はぁ、お父様ったら」

「それはそれとして、あなたも20代の体力の黄金期は過ぎ、こちらがはしたなく誘ってもあなたの心に負担を与えるだけ」

「女性のその……性欲が高まるのは私の年齢を考えれば(むし)ろここから」

「私は私の欲をあなたに掛ける内に、エスカレートしてしまうのかと不安を想いました」

「詰まるところ、私は……あなたを愛しています」

「あなたが私に不満があるのでしたら、離婚もやむを得ないと思いますが、私のことを想うのでしたら、その提案は取り下げていただきたく存じます」

「はぁぁぁ……何事かと思い、寿命の縮まる思いです」

「これからは、もっと心を通わせる必要がありますね」

「私があなたを知った経緯……それは、その……」

「あなたは憶えておられないかも知れませんが、私が小学校に入る前、あなたに出会っていたんです」

「私のお父様の開いた社交会場で、お父様の友人とその子息として呼ばれたあなたのお父様と、あなたが来た時です」

「やはり、憶えてはおられませんでしたか」

「そこで社交会場では初めてで緊張していた私に対して、気軽に話しかけてくださったのがあなたでした」

「その時に見たあなたはとても格好良いお兄さん、という感じでした」

「『今は見る影もない』? そんなことないです。いつまでも私にとってあなたは格好良い年上の殿方です」

「好きになった理由は……はしたないとお思いになるでしょうが、その時に一目惚れしてしまったんです」

「私はその一目惚れをずっと引きずってしまっておりました」

「時折、じぃやに頼んであなたのいる学校から下校する時間帯に車からあなたを目で追っていたこともあります」

「あなたのご友人と遊びながら帰る姿を見ながらそのご友人に嫉みの感情を向け、話している同級生の女性に妬みの感情を向けたりしました」

「時には女性というだけで、下校支援の壮年くらいの女性にすらヤキモキしておりました」

「私も、あなたが私に対して向けていた感情を知りたいです。だからこれから、話し合い、触れ合って行きたく存じます」

「……そろそろ時間も良い時間に、更けてきましたね」

「これからは少なくない夫婦にとって、愛を深める時間帯だと思っています。あなたの明日のご予定は問題無いでしょうか?」

「はい。『そういうこと』です」

「今後、歳を重ねるにつれて私の劣情はきっと……もっと大きくなってしまうかも知れませんよ?」

「問題無いのでしたら、あなたの愛欲で不埒な私を認めていただきたく……存じます」

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