0012話 妻の遺した気弱義娘は最近スキンシップが増えてきて……
SE指示などはあくまで目安です。
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[SE/ドア開閉音]
「あっパパ……おかえりなさい。ご飯……出来てる、から……」
「うん、できたところ。冷めてないから、一緒に、食べない……?」
「じゃあ、机に持っていくから、その間に着替えとか……準備しておいて」
「私は大丈夫、だから……うん、また後で」
[SE/着替え]
「準備出来た? 手も洗った? そう……じゃあ、いただきます」
[継続SE/食事/ON]
「そういえばパパ、もうすぐママの三回忌だからその……法要の準備とか、しないとかなって」
「一応私なりに情報とか調べたりしてまとめておいたから、それ、また見ておいてね」
「私もママのことが好きだったから……何かしておきたくて」
「それに、こういったことをしていたら、ママのことを忘れずにいられるんじゃないかなって思って、だから」
「……こういう時にいう話でもなかったかな。ごめんなさい」
「私ももっと……明るい話題で美味しくご飯を食べて欲しいから……」
「『私の料理はいつ食べても美味しい』? あ、ありがとう……」
[継続SE/食事/OFF]
「モグモグ……モグ……。ご馳走さまでした」
「お風呂……パパは先に入ってて」
「私は洗い物してから入るから」
「ん? 気にしないよ? だってパパ、ちゃんと掛け湯してから入るでしょ? じゃあ、問題無いでしょ?」
「それに洗い物……この時間に帰って来たってことは、残業もしたんでしょ?」
「私も少しでも力になりたい、から……」
「うん、行ってらっしゃい。パパがお風呂から上がるまでにこっちが終わってたら、私もすぐに入るから」
[SE/風呂の流す音]
「上がったんだ。お皿洗いも丁度終わったから、私も入っちゃうね」
[SE/時間経過]
[SE/風呂の流す音]
「ふぅ……上がった、よ……」
「パパは今日、持ち帰りのお仕事って、無い? そう、なんだ……」
「私? うん、もう寝る……けど……」
「その、今日"も"一緒に、寝て良い?」
「うん。やっぱり今でも寂しいし、パパが一緒に寝てくれると……嬉しい」
「ありがと……。うん、お布団の用意はしておくから、パパはパパの明日の準備をしておいて、ね……」
[SE/時間経過]
[SE/布擦れ]
「寝る前に少し、お話して良い……?」
「それは……パパのこと、なんだけど」
「パパって、ママと結婚したのが、初めての結婚だったんだよね?」
「ママは……2回目だったけど」
「パパはその……また結婚したりとかって、考えてない……の?」
「『私が独り立ちするまでは考えるつもりもない』……?」
「そう、なんだ……」
「『何で?』って……パパと私は、血が……繋がってない、から……」
「私も、パパと家族だって思ってるけど、血の繋がりも大切だって考える人も多いし」
「私は"絶対大切"とまでは思ってないけど、それでもある程度は大事なことって思ってるから……」
「『なんでこんなことを話したのか?』……それは、その……」
「えぇと……聞いても、引かないで欲しいんだけど……大丈夫?」
「言う前に、パパ、向こうの方を向いて。少し、緊張する、から……」
「すぅー……ふぅ……」
「私、パパのことが好き、なの……」
「勿論、家族としても好きだけど、男の人として」
「振りむかないで。私、きっと、情けない顔、しちゃってるから……」
「今でも十分、パパは私のパパになってくれてるって思ってるけど、それでも……」
「昔から、パパのことが好きだったの」
「ママとパパが結婚したとき、正直、嫉妬してた」
「暫くして慣れて、この気持ちを心の奥底にしまってた」
「こんな思いを明かして、また家族がバラバラになるのが嫌だったから」
「それで……ママが死んじゃって、また暫くして、自分の思いを思い出したの」
「2人暮らしで、接することも増えたから、かも……」
「でも『パパは家族として接してくれてるのに、私がこんなんじゃダメだ』って、この思いを封じ込めようとしてた」
「でも、ダメだった」
「封じ込めようとしても、パパは2人暮らしで私に親身になってくれて」
「忘れよう、忘れよう、って思うたびに、パパのことが好きになっちゃってた」
「……パパ、もし私が独り立ちできるときに、パパが私のこと、女の人として好きになってくれていたら、そのときはその……」
「私と結婚、して……くれますか?」
「私、見た目はママそっくりだし、体つきも……まだ生きてたママほどじゃないけど……成長、してきた」
「分かってる。私はママじゃない。ママみたいに明るい性格も、してない……」
「けど、好きになってもらえるなら……それでも良い。いつかは"私"を好きになってもらえるように頑張る、から……」
「だからそのときまで、待っててくれる?」
「うん、ありがとう」
「……パパ、おやすみなさい。愛してる」




