0010話 いつも奢ってくれるダウナークール?な年上の女友達に申し訳なく、たまにはこちらから奢ろうとすると彼女は青ざめて……
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[主音声/電話越し]
「やあ、私だ」
「なんだい? 君の携帯の表示に名前が出るから良いだろう? 電話越しの声でも私と判別できるだろうし、それでも」
「次からはそうするよ。で、本題に入らせてもらっても良いかな?」
「ありがとう。今日もなんだけど、夜、行けるかな?」
「そう、いつもみたいに呑みだよ。予定が空いていないならまた別の日でも良いと思っているが……」
「そうか、それじゃいつもの店で、いつもの時間で、入った方が勝手に頼んでても良いって感じで」
「じゃあまた」
[主音声/普通]
[継続SE/ジャズ/ON]
「おまたせ。君も今来たところ? ああ、まだ頼んではなかったんだ。私はそうだな……いつもので良いかな」
「君は……考えは決まった? 君もいつものかい? じゃ、頼もうか」
[継続SE/ジャズ/フェードアウト]
[継続SE/ジャズ/フェードイン]
「お腹もそれなりに一杯になったし、酔いも結構回ってきたからそろそろお開きにするかい?」
「ああ、じゃあ今回も私がお会計を……って、どうした?」
「え、今回は君が出すって? ちょ、ちょっと待ってくれよ。あくまで私が年上なんだ、ここは私に出させてくれよ」
「『毎回出してもらうのは悪い』? そうは言ってもこっちは年上なんだし……」
「私たちの関係? そりゃ、年齢は違っても友人だってことは繰り返し……うーん」
「わ、割り勘! 今回は割り勘で! それならどうだろうか!?」
「ああ! ではそうしよう!」
[SE/店舗扉開閉]
[継続SE/ジャズ/OFF]
「え? 顔色が悪い? それは……君があんなことを言うから」
「確かに友人として考えたら普通のことを言っているとは思うけど……」
「これは私の問題だけど、聞いてくれるか? ……ありがとう」
「お察しの通り、私はこの半生であまり人と関わることは少なくて」
「理系を選んだこともあって、女の友達も少なく、合うとしても頻度は少ない」
「だからといって男の友人も、君程会うような人もいないんだよ」
「まあ、社会人になってから友人と呼べるほどの交友を持っているのは君くらい、ということなんだ」
「それで、今までまともに人と関わることの無かった私は、数少ない友人である君との交友を保つために、奢らないと気が済まないというか……」
「不安になってしまうんだ。これは本当に私の悪いところだとは思っているけど、『年上だから』を理由にしてしまえたからね、今までは」
「でも……、そうだね。君の純粋な友人としての気持ちに水を差すようなことをしてしまっているのは確かだ」
「改めて、申し訳ない」
「それと、だな。君を無理に交友を持とうとしたのは他にも……理由があるんだ」
「それはその……好きなんだ、君のことが」
「ああ、恋愛感情で、君のことが好きだよ」
「また君の友人としての感情に水を差してしまったというか……、すまない」
「『謝る必要は無い』……? それって……もしかして、君も?」
「ああっ! そういうことなら改めて、これからもよろしく頼む」
「そ、そのっ、先も言ったが……男の人との付き合いというものも、慣れてなくて……」
「年上としてリードすることも拙いものになるだろうが、大目に見て欲しい……ダメか?」
「ああ、ありがとう」
[主音声/フェードアウト]
「『これからは彼氏として奢られた分含めて奢る』? あ、ありがたいが、もう少し最初はこう……手心を加えて対応してもらえると……その……」