監禁趣味
気の強い人が好きだ。
グループの先頭に立ってみんなを引っ張っていくような、そんな人が好きだ。
もっと言えば、その自信が高じて部下に強く当たっちゃうような人も好きだ。
もちろん、そういう人とサシで飲む酒は決して美味しいものではない。
だが、ベロベロに酔いつぶれた人間を自宅に連れ込んで監禁するのは笑ってしまうくらいに簡単だ。
酔いが覚め、縛られているのに気付いた彼が「早くほどけ」とか「クビにしてやるぞ」とか、気丈に振る舞っているその姿。
そんな彼の喉元にナイフを突きつけて、口角を上げて見せるとき。
彼の顔。
その自信に満ちた強気な顔が、歪んで崩れていくのを見るのが、たまらなく好きだ。
* * *
警察署の一室。スーツ姿の初老の男が苛立った様子で、向かいに座る若い女を睨みつけている。
「あの、私、なにもしてないです」女がぼんやりした声で言う。
「被害届が出てるんだ! もう何年も前から、あんたの転職する先々の会社で! あんたに監禁されたってな!」
男は机をたたいて怒鳴った。
「酔った男性を介抱したら、その本人に被害届を出されるんですか? 男性はいいですね。優遇されてる。私も被害届を出したことはありますけど、誰も受理してくれませんでしたよ」
「……黙れ!」
初老の刑事は乱暴に腕を組んで歯噛みをする。どう考えてもこの女はやってる。無実の女に被害届が五件も出されてたまるか。
だが、証拠がない! 被害にあった男は傷ひとつつけられていないし、この女と飲んだ次の日には必ずタクシーで帰宅している。
あるのは被害者の証言だけ。「縛られてナイフを向けられた」それだけ。何の証拠にもなりゃしない。畜生。
巧妙。実に巧妙。
「くそっ……!」
「事情聴取は任意でしたよね? そろそろ帰らせてもらいます。……あと、前から思ってたんですが」
刑事はしかめ面で女を見送る。取調室を出て、女は振り返った。さも嬉しそうに、薄く笑みを浮かべている。
それは法で裁けない犯罪者の勝気な微笑だった。
「さっきの表情、とても好きです」




