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リリアベルの呪い  作者: いと
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1話



ここは、愛の国、リリアベル王国。



国名の由来は、はるか昔、この国を治めていたという女神リリアベル・ローズクォーツの名からきている。



現在の国王が住む城の前に、大きな広場がある。

広場の中央には、女神リリアベルの石像と、記念碑が建てられている。

それほどに女神リリアベルは、人々に愛され、敬われ、信仰されている。



女神リリアベルが信仰される理由の1つが、魔法である。彼女はこの国の者全員に、代々続くとある魔法をかけた。



その魔法は1人だと効果を発揮しない。



魔法により、この国の者は左腕に紋様を携えて生まれるようになった。

親とは異なる紋様である。



その紋様は、多種多様であるが、国の中に1人だけ同じ紋様を持つ者がいる。



その者と出会った時、魔法が発動し、運命の番となる。



どんなに容姿が好みでなくても、どんなに嫌味な性格でも、既に別に恋人がいる者でも、その者に会えば、お互いに忽ちその者の虜になるのだ。お互いがお互いを1番に考え、浮気などは生涯一度もすることはない。この魔法を、人々は「リリアベルの祝福」と呼び、大切にしている。



そして、その運命の相手をアードゥと呼ぶ。

人々は、アードゥと結ばれることが1番の幸せであると誰しもが考えている。そのため、幼い頃から自分と同じ紋様の相手を探し求めるのだ。



アードゥを探し求める人々によって、いつしか毎週金曜日の午後8時〜11時は「リリアベルデー」と謳い、「アードゥパーティー」と呼ばれるパーティーが国内の彼方此方で開かれるようになった。所謂、婚活パーティーのようなものである。パーティーには、18歳から参加できる。



今夜も、そのアードゥパーティーが開かれようとしていた。



「ニナ、いい加減パーティー行きなさいよ。もう26でしょう。」



母が身支度を整えながら言う。



「私はばったり出会っちゃう人だから、大丈夫ですぅ〜。」



「もういいじゃん、行こ。お姉ちゃんいつもこうだし。私、絶対お姉ちゃんより早くアードゥ見つけるんだから!」



「気をつけてね〜。」



「もうっ。」



ニナは、妹と妹をパーティー会場へ送る両親を適当に見送る。



このアードゥパーティーに興味を示さない女性は、ニナ・クンツァイト。現在26歳。クンツァイト家の長女である。コーラルピンクで、肩ほどまでの長さであり、癖のない真っ直ぐな髪。前髪は長いので左右に分け、片方を耳にかけている。目は切長気味。瞳は紅く、父譲りだ。歳の離れた妹のマリアナは、例に漏れずアードゥ探しに心血を注ぐ18歳である。姉と同じコーラルピンクで、腰までの長さがあり、ふわふわの髪。前髪もふわっとしており可愛らしい。目はぱっちり二重。瞳は淡い緑で、母譲りだ。ちなみに、父は桜色の髪で、母は赤みのある茶髪である。



ニナは、アードゥパーティーに全く興味を示さない。その時点で異例なのだが、特に異例なのが、魔法を「リリアベルの祝福」ではなく、「リリアベルの呪い」だと思っていることだ。しかしこんなことは、もちろん家族にも言えない。




「何が愛よ。何が運命よ。自由に愛せない人生なんて、ごめんだわ。」



ニナは恋愛が嫌いなわけではない。

ゴソゴソと机の引き出しからゲームを取り出す。

ベッドにごろんと転がり、足を組む。

そしてスイッチを入れ、ニヤニヤとプレイし始めた。

ゲームの内容は、乙女ゲームである。



「やっと、この子オトせるな。」



––俺、やっと気付いた。お前のこと、好きだ。どうしようもなく。



画面越しに顔を赤らめ告白する爽やかイケメン。



「ぐべぁっ…きゃああああっ!!」



ニナはベッドの上でごろごろと転がる。



ニナの部屋には、鍵のついた棚がある。その棚の中は少女漫画や乙女ゲームで溢れている。


この国では、少女漫画や乙女ゲームの流通は少ない。漫画やゲームの中の人物は、100%アードゥではないので、興味が湧かないのである。「アードゥに出逢うまで」や「アードゥに出逢えたらやりたい100のコト」等の内容のものは多少売れるが、アードゥに関係ない内容のものは、売れ行きがすこぶる悪い。



ニナは、アードゥに縛られない自由な恋愛がしたいと思っている。だからもちろんアードゥに関係ない内容の漫画やゲームを集めている。とは言うものの、国内にそんなものはほとんど無いので、わざわざ海外から取り寄せているのだ。



「はぁ。良かったな…。シナリオ良すぎ。乙女心くすぐりまくり。そんでやっぱこのゲーム、みんなかっこよすぎる。…このゲーム作った国の言葉だと、顔面が神って言うんだっけ。わかる。めちゃくちゃ良い言葉。使お。」



ニナは眠るまでゲームの余韻に浸っていた。


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