騒動?
エドワードに再び平穏な日常が戻った。のだが、彼は彼なりに学院と掛け合って飛び級の上に飛び級を勝ち取り、いきなり三年に成り済ました。
(もっとも学院の多くの生徒は、折角の勉学の機会を放棄することを嫌って飛び級の優遇処置より、報償を選択していた)
こうしてエドワードは旅行の条件を満たしたというわけで、
「では、行って参ります!」
と、唐突に旅行を宣言した。
当然両親は反対するものの、
「父上、約束ですよね」
と、エドワードは押し切るつもりだ。
約束した以上は、と、父親は、
「わしとしては納得もするし許可も出そう。しかしな、お母さんを説得してからでなければ許可は出せないぞ」
と、逃げの一手を打った。
それでも一歩前進したエドワードは、最後の関門と母親と対峙した、が、思い通りに行かない。とにかく、母親はどこまで行っても納得しない。そのうち食卓に着けばすぐに言い合いが始まった。
数日が過ぎても、母親のマリアは妥協する気配すらない。それで仕方なく、
「それならアンソニーと行く、で、良いよね?」
と、妥協点を提示しだした。
が、マリアは血相を変え、
「それは駄目です」と言ってからきつすぎたと気が付き、
「いえ、アンソニー先生が駄目って分けではないのよ。それより、そうだ、ラーラを連れて行きなさい。それなら良いわ」
「どうしてラーラ? それも思いついたように?」
「だってあなたたちって姉弟でしょ。助け合うにも調度良いわ」
「僕は嫌だ!!!」
と大声を出して家を出て行ってしまった、が、しかし、自分で言っておきながらだが、彼自身ラーラと一緒というのが嫌だというわけでもなかった。
これは単なる反抗期なのだろう。
しかしながら、家を出て行った事は事実としてあり、そのことでとんでもないことになった。そう、エドワードがあてどもなく歩いて行くと、そこにフランソワーズ・ガブリエル・ザ・サウスドラゴン帝女と出会ったのだ。
出会ったと言うより、彼女がこの時を待っていたのだった。
「こんばんわ! そして行きますわよ!」
エドワードが何か言いかけたが、それよりも早く侍女達十数名が一度に襲いかかり、凄まじい力で彼を拘束すると、飛龍に乗せどこかに飛び去ってしまった。
着いた先は赤龍帝の帝都であり、玉座の間に連行されていた。
やっと自由になったエドワード、
「どうして僕をこんなところに?」
それに答えたのは顔見知りの侍女だった。彼女は、
「あの国が無くなっても良いの?」
と、淡々に告げ、そしてウインクして去って行った。
エドワードはその場所にへたり込んだままでいると、なにやら騒がしくなってきた。
二足歩行なのだが、明らかに人間とは違った雰囲気をしている生物たちが、ゾロゾロと入ってきて、仕舞いには玉座の間が半分ほど埋まった。
そして何者かが大声で、
「帝女陛下の御成!!! 一同のもの平伏せよ!!!」
エドワードはどうせあいつだろうと、その場に座ったままでいると、何者かに無理矢理頭を押さえつけられ平伏している姿勢をとらされた。
そこに奥の扉が開き、これ以上無い程着飾った、頭に特大な冠を被った帝女が現れた。
そして先ほどのものが、
「一同、ご挨拶!!」
と、厳かな声を張り上げた。
場内は割れんばかりの拍手喝采が鳴り響き、エドワードも諦めが付いたようだ。
それから幾つもの段階があり、幾つもの儀式をした後、帝の御成となった。
また、それからも幾つもの段階に幾つもの儀式があり、その上になんたらかんたらと、回りくどいことがあった後、漸く本日の議題が発案された。
そしてそこからも長い時間をかけ、あれやこれやとした後、帝女が人間界でしたことをこれまたてんこ盛りにおだて上げた。そして結論を帝女が、
「これにて骸骨軍が盗賊だと判明した。このわらわが骸骨化した竜族を粉砕したのじゃ」
その後はてんこ盛りに帝女を褒めちぎり最高潮に達したとき、第一宰相が、
「これにて竜族事件は解決した。そこで皆のものに聞きたい。此度の働きに応じた赤龍帝国として帝女陛下に献上するものとは何にしたら相応しいと思うか?」
と、恭しくも何度も平伏しながらの物言いだった。
その後、皆はあれやこれやというのだが、結局は帝女に聞こうと相成って、彼女が、
「わらわは」と区切ってから、「そこの者の罪を帳消しにしてたもう」
そこで再び帝女を賞賛する嵐が吹き荒れ、やっと終わりにぼろきれでも扱うようにエドワードを立たせ、三度平伏させてから、(力が強いので彼は嫌でも平伏した)会場の外に放り出された。
これで終わったと思ったエドワードは急いで逃げようとしたが、侍女達に取り押さえられ、別室に連行されていった。
で、待たされた後、漸く帝女がやってきて、
「これであなたの身分が回復したのよ!」
と、恩着せがましく言い出した。
が、エドワードもここで言い合いしても始まらないと、(これはラーラとのやりとりで学んだことだ)素直に応じた。
大人しいエドワードに拍子抜けした彼女は、
「どこか具合が悪いの?」
と、心配そうに聞き出した。
もちろんそれを受けてエドワードはすかさず、
「家人が心配しているから帰りたいのだが?」
と、素直に頼み込んでみた。
帝女は快く、
「良いわよ。でもね、私も付いていくからね」
「え? どこに?」
「ランクル共和国の首都に決まっているでしょ。さあ、冒険の始まりよ!」
「それをどうして?」
「私の諜報活動を侮ってもらっては困るわね」
「それって諜報じゃ無くって、盗み聞きというんじゃ……」
それでも帝女は構わずに、
「さぁ、行きましょう!」
こうしてラーラのお小言を聞き、帝女の侍女に小突かれ、アンソニーの馬の手綱を引きながら首都を目指すエドワードの姿があった。




