表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
18/46

17 竜鱗①

 武具店の帰りに、服を買った。

 俺は白い服を一揃い。

 ルディアには、丈夫な戦闘用の服と普段着を。

 同じ色がいいと言い出したので、全部白だ。


 服は手に持ち、鎧はルディアも着けてる。

 鎧を持ち歩くのは骨だからな。


 白い鎧を着て並ぶと、通行人から注目を浴びた。

 ルディアが美少女だからかと最初は思った。

 だが、聞き耳を立ててみると、


 ――ちっ、イチャつきやがって。


 というような声が多かった。


(べつにイチャついてないんだが)


 気にしてみると、ルディアは俺への距離が近い。

 はたから見るとそんな風に見えるのかもな。


(だとしたら俺はロリコンだと思われてんのか?)


 ……深く考えないことにした。


 宿は光の拝剣殿に近い方に取った。

 家を買ってもいいが、やめておく。

 サリーの警告してた件がある。

 居所は定期的に変えたいところだ。

 俺たちには守るべき秘密もあるからな。


「おいひいれふ」


 宿の食卓で、デザートを頬張りルディアが言う。


「食うか喋るかどっちかにしろ、ルディア」


 金はあるので、宿はまずまずの場所を取った。

 新人には不相応だが、高級すぎるほどでもない。

 変なのに絡まれないで済む程度の格の宿だ。


 料理はそこまで期待してなかった。

 だが、食ってみると存外おいしい。

 ルディアはさっきからはしゃぎっぱなしだ。

 人間の料理には馴染みがないからな。


「ぷはっ……し、失礼しました。

 あまりに美味しかったもので……」


「気にするな。気に入ったようでよかったよ」


 慣れない場所では不安だろう。

 食事だけでも楽しみがあるのはいいことだ。


「お服も買ってもらいました。

 人間の街は楽しいです」


 ルディアの屈託のない言葉に、周囲を見る。

 俺たちの話を聞いてる奴はいなそうだ。


「だが、危険もあるからな。

 一人でうろつくのはしばらくは禁止だ」


「そんなぁ……」


「今日のチンピラみたいなのにからまれたら困る」


 ルディアは人間のルールがわかってない。

 騙されるだけじゃない。

 知らずに罪を犯してしまうおそれもあった。


「なぁに、すぐに慣れるさ。

 どいつもそんなに難しく考えて生きちゃいない。

 セブンスソードは流れ者が多い街だ。

 多少変なことをしても見逃してもらえるさ。

 多少ならな」


 他の国や閉鎖的な都市ではこうはいかない。

 異物は嫌でも目立つだろう。

 だからルディアをここに連れてきた。


「早く一人で出歩けるようになりたいです」


「そうだな。

 ま、ルディアも魔剣士になったんだ。

 この街では若くても魔剣士は大人扱いだ。

 そのうち大手を振って歩けるさ」


「だといいのですが……っ、くぅっ!?」


 がたんと音を立てて、ルディアが胸を押さえた。


「どうした!?」


「ぐ、いえ、なんでも……」


「ないわけがあるか!

 ひょっとして、『母親』の言ってたアレか?」


「そ、うです」


「わかった。部屋に行こう」


 俺はテーブルを回り、ルディアを抱え上げる。

 何事かと周囲の客がこっちを見た。


「ひゃっ、自分で、歩けます……」


「黙ってろ。

 バーテンダー、すまないが連れの具合が悪い。

 領収書はあとで清算できるか?」


 近くにいたバーテンダーに声をかける。


「も、もちろんです。

 何かご用意しましょうか?」


「ひとまずはいい。

 必要があれば頼むから」


「かしこまりました。お大事に」


「ありがとう」


 ルディアを抱えたまま、ルディアの部屋に入る。

 一応、俺とは別の部屋だ。

 手を出すつもりはさらさらないが、一応な。


 俺はルディアをベッドの上に下ろした。

 ルディアの鎧を外してやる。


「くぅ……っ」


 ルディアが苦しげに麻の服の胸元を押さえた。


「見せてみろ」


 言うと、ルディアは襟を押し下げた。


 ルディアの膨らみかけた胸の間に、異物がある。


「竜鱗……」


 それは白銀色の鱗だった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ