歪んだ王国
今回はちょっと長い話です
神殿を出た俺たちは
わざとこの国の衛兵たちに捕まった
理由はこの国の伝説の武具を王城に取りに行くためだ
普通なら王城に入ることなどできないが
捕まって牢屋に入るなら王城に
堂々と(?)入ることができるためだ
「ほら!入ってろ!!」
衛兵によって俺たちは牢屋に入れられる
「全く!もっと丁重に扱え〜!」
牢屋に入れられたルーブルムは怒っている
すると後ろから声をかけられる
「お前ら・・・新入りか?
女と子供じゃねぇか・・・」
後ろから声をかけてきたのは
ボロボロな服を着ているがどこか気品を感じる男だった
「お前ら・・・何したんだ?」
と男はここに入れられた理由を聞いてくる
「神殿に無断で入ったんだよ」
と答えると
「神殿?・・・封鎖されているのか?」
どうやら男は神殿が封鎖されていることを知らなかったようだ
「ああ・・・そこに入ったら衛兵に捕まってここに来たってわけだ」
俺は牢屋に入れられた経緯を話すと
「・・・・・」
男は仏頂面で何か考えていた
「何かこの人怪しいね?」
ルーブルムが小声で俺に言う
確かに俺もこの男には何かあるのかとも考えたが
ここには別の目的で来たので構ってられない
「ヴィリディ」
俺は何もないところでヴィリディを呼ぶ
すると何もなかった場所からヴィリディが降りてきて
「・・・了解・・・」
牢屋を切り裂く
「脱出成功!」
俺たちは牢屋から出て体を伸ばす
すると同じ牢屋に入れられていた男も一緒に出て
「おいおい・・・こんなことしていいのか?」
と聞く・・・だが
「お前も出てるんだから同罪だろ」
と俺はニヤニヤしながら言う
「・・・フッ・・・・とんだ悪ガキだな・・・お前は」
男はそう言って笑った
そんなやり取りの中ヴィリディが
「・・・これ・・・」
取られた俺たちの装備をくれる
「うっし!いくか!」
俺たちはそのまま牢屋を後にした
牢屋を出た俺たちは王城で
伝説の武具を探しに向かうが
「・・・なんでお前もついてくるんだ?」
例の男も一緒に来ていた
「まぁまぁ同じ牢にいた仲間だろ
それに俺はこの城には詳しいんだ
一緒にいた方が何かと便利だぜ」
と男は言う
それを聞いた俺は
「じゃあ伝説の武具ってどこにあるか知ってるか?」
ここにある伝説の武具の場所を聞く
「伝説の武具・・・確か王の部屋に
隠されている秘密の部屋にあったはずだ・・・
ついてこい」
と男は案内する
俺たちはそれに黙ってついていった
「ここが王の部屋だ」
どうやら目的地に着いたらしい
俺たちは部屋の扉を開けて中を見るが
誰もいなかった
安全確認を終え中に入る
「ここに秘密の部屋があるのか」
俺たちは手分けして部屋を探す
だが手がかりは見つからなかった
「そっちはどうだ?」
俺はウインレチアに聞く
「・・・ダメだな・・・どうやら結界で
隠してあるわけではないらしい」
とウインレチアは答える
「なら人工的に隠してあるってことか・・・」
俺が考え込むと
「・・・・・」
ふと王女を描いたような肖像画を見ている男がいた
「どうしたんだ?」
男に近づき聞いてみると
「いや・・・この人は俺の母親なんだ・・・」
と男は言った
それを聞いた俺たちは驚いた
王女が母親ということはこの男は
この国の王子様ということだ
だがここで疑問が生まれる
「・・・なんで牢屋に捕まっていたんだ?」
なぜ王子であるこいつが牢屋に
入れられていたのかということだ
「・・・・・」
男はしばらく黙っていたが
「・・・俺には弟がいたんだ」
男はゆっくりと話し始めた
「弟は俺よりなんでもできる男だった
剣も政治も・・・な
だが王位を継承されたのは俺だった
それに納得のいかなかった弟は王国を乗っ取り
俺を牢屋に入れ王に成り代わったのだ」
男は牢屋に入れられた経緯を話した
(なるほどな・・・おそらくその乗っ取りに協力したのが
黒の騎士団ってわけか・・・)
俺はこの国と黒の騎士団のつながりがようやくわかった
だがわからないこともあった
(なぜ王国を乗っ取った後も黒の騎士団と協力しているんだ?
王国が手に入ったのならもう彼らに協力なしでも何とかなるはずだ・・・)
と考えているとプレシカが呟く
「しかし・・・実の兄を牢屋に入れるなんて・・・」
男の話を聞いたプレシカは信じられないといった顔をしていた
「それほどまでに弟にとって俺は邪魔だったのだろう・・・
むしろすぐ死刑にしなかったのが不思議なくらいだ・・・」
と男は言う
だが男の言う通り俺はおかしいと思った
本当に殺したいほど憎んでいたのなら
王国を乗っ取った時点で見せしめにしているはずだ
それが牢屋に入れるなどありえない
もしそいつに同情というものがあったなら
そもそも王国の乗っ取りなどしない
(奴の目的はなんだ?)
俺はそいつの目的が気になり
「なぁ?・・・そいつは今どこにいる?」
会って確認することにした
「ここが玉座だ」
男に案内されて王様のいる玉座に来た
「どうするのアルくん?」
ルーブルムがどうやって会うのか聞いてくる
「どうするってそんなもん・・・」
俺は扉に手を当て
「堂々と入るに決まってるだろ」
思いっきり扉を開けた
「「「「えぇぇぇぇぇ?!」」」」
「なっ?!何者だお前ら?!」
いきなり扉を開けられた弟王子は驚いていた
「牢屋にいた罪人だ!!」
俺は堂々と叫んだ
するとルーブルムに
「いやそこは堂々と言っていいものじゃないよ?!」
とツッコまれてしまった
そんなやり取りをしていると
弟王子を取り囲むように衛兵たちが集まってきた
「なるほど・・・お前が黒騎士の言っていた男か・・・
まさか我が兄に手を貸すとわ・・・愚かなことをしたものだな」
弟王子は衛兵たちに手で指示
それを見た衛兵たちは俺たちに襲い掛かってくる
「こいつら・・・こっちにも王子がいるのに無視かよ」
俺が愚痴ると
「多分だけど・・・ここにいるのはあいつの信者なんじゃない?」
とアウレアが言う
「ああ・・・だからか・・・」
俺はアウレアのいったことに納得して武器を構える
「だったら・・・手加減の必要はないな」
俺は悪い笑顔をした後鎧を纏った
「ばっ馬鹿な?!」
弟王子は驚いていた
俺たちは数分で王城にいた衛兵数千人を
たった7人で全て倒したのだ
「こっこんなことが・・・!」
弟王子は膝から崩れ落ちる
俺は弟王子に近づき
「なんで兄貴を殺さなかったんだ?」
兄王子を殺さなかった理由を聞いた
「・・・・・」
弟王子はしばらく黙っていたが
「どうした?」
俺が剣を構えて脅すと
「わかった!話す!だから剣を引いてくれ!!」
すぐに話す気になった
「・・・この城には昔から伝わる伝説の武具があった
だがそれを封印した部屋に入るには王の証を大地の聖獣である
リグヌムから受け取る必要があった
俺は正式に王から王位を継承したわけじゃないから
証など手に入るわけなどなく
かといって兄を殺せばその伝説の武具は手に入らない
だから牢屋に入れておいたのだ
王の証を手に入れるために・・・」
と弟王子は説明した
だがそれで合点がいった
なぜ王国を乗っ取ってもなお黒の騎士団に協力したのか
おそらく聖獣を操った黒の騎士団に頼んで
リグヌムから王の証を手に入れようとしたのだろう
「だが・・・結局俺は王になれなかったのか・・・」
弟王子は絶望した顔をしていた
すると兄王子が弟王子の肩に手を置いた
「そうじゃないさ・・・
おそらく父上はお前に民と一緒になる王になって欲しかったのだ」
と兄王子は言った
「民と一緒・・・?」
弟王子はわからないと言った顔をしていた
そんな弟王子に兄王子は
「お前はこれだけの民から好かれているのだ
だから父上はお前に王として城にいるのではなく
一人の人間として民の力になって欲しかったのだ
それが父上の望んだお前だけがなれる王だったのだ」
と説明した
「父上・・・俺はっ・・・俺はっ!」
それを聞いた弟王子は泣き崩れた
それ抱きとめる兄王子
どうやらこれでこの王国の件はどうにかなったらしい
めでたしめでたし
「いや肝心の伝説の武具については?」
危うく肝心の目的を忘れそうになった俺
「?!」
すると玉座の間に巨大な木が生えてきた
そしてその中からリグヌムが出てきた
「今回の件・・・全部見させてもらったよ〜」
とリグヌムは言う
弟王子は罪を裁かれると思った
すると弟王子とリグヌムの間に兄王子が割り込む
そして膝を地面につけ
「お願いします!どうか弟を許してやってください!!」
リグヌムに土下座して頼み込む
するとリグヌムは
「大丈夫〜僕は君たちを裁くために来たわけじゃなんだよ〜」
と兄王子に言う
「「へ?」」
二人はキョトンとした顔をする
するとリグヌムはあるものを二人に手渡した
「これは?」
それを受け取った兄王子が聞くと
「それは王の証だよ〜」
とリグヌムは答える
「「?!」」
二人は驚いていた
それもそうだ王の証は一つだと思っていたのに
実は二つあったのだ
「まさか王の証が二つあるとはね・・・」
俺が驚愕の事実に驚いていると
「遥かな昔にこの国大いなる災いが訪れた
それによりこの国は疲弊し誰しもがもうおしまいだと思った
だがその時二人の王が立ち上がったのだ」
とリグヌムは説明を始めた
「その二人の王は兄弟で二人で伝説の武具を使い
災いを退けたのだった
そしてその伝説の武具が新たなる災いの種にならぬよう
それを封印してその鍵を二人で持つことになったのだ」
とリグヌムは言った
「二人の王・・・」
リグヌムの説明を聞いた俺は考えた
もしかしてこいつらの父親は伝説を再現しようと
あえてこいつらを仲違いさせたのかと
もしそうならこいつらの父親はそこまで計算して
王位を継承させようとしたのだ
(・・・とんだ食わせ者だな・・・)
「それで伝説の武具ってどこにあるんだ?」
俺はリグヌムにありかを聞くと
「肖像画の後ろにだよ〜
王の証をかざしてごら〜ん
じゃあ僕は帰るね〜」
リグヌムはそう言い残して帰って行った
俺たちは王の部屋に入り肖像画の前に立つ
そして二人の王子が証をかざすと
「?!」
床が割れて階段が出てくる
そして俺たちは出てきた階段を下っていくと
「・・・!あれが・・・」
奥に二振りの左右対称の剣が刺さっていた
二人の王子はそれを引き抜き
俺に差し出す
「どういう意味だ?」
俺が理由を聞くと
「今回の件であなた方にはお世話になった
だが今はお返しできるものが何もない
だからせめて目的であるこの剣を差し上げてたいのです」
と兄王子は言う
「・・・・・」
俺は黙って受け取らずにその場を後にしようとした
「!いいのですか?!」
兄王子は受け取らないのか聞いてくるが
「さっきリグヌムが言っていただろう
そいつは二人で初めて使える物・・・
だったら俺には使えないよ」
そう言って俺たちは城を後にした
城を出て歩いていると
「・・・結局伝説の武具手に入らなかったね〜」
とルーブルムが言う
「確かにな・・・」
俺は同意するが全然悔しくはなかった
すると俺たちの前にまたもリグヌムが出てくる
「君たちには嘘をついちゃったね〜ごめ〜ん」
とリグヌムは謝る
おそらくここでの嘘というのは
伝説の武具のことだろう
「別にいいよ」
と俺が言うと
「その代わりと言ってはなんだけど
僕の知ってる聖獣の居場所を教えてあげる〜」
とリグヌムはお詫びに他の聖獣の居場所を教えてくれると言った
「そいつはね〜西の大地でとっても風の強い場所にいるんだよね〜
確か場所は〜・・・ニドレって場所だよ〜」
そう言ってリグヌムは帰っていく
俺らが次に目指すは西の大地ニドレだ
フルクトゥスは水の聖獣、フレアマは火の聖獣、リグヌムは大地の聖獣となれば・・・!
次回、風が吹く国




