プロローグ:逸脱者・また繰り返す者
一応ストックは7万文字ぐらいあるのでしばらくは毎日投稿です。
プロローグ:逸脱者・また繰り返す者
やかましいくらいに光り輝く街のはずれ、人通りの無い橋にいた。夜闇に染まる川。水の流れる音だけが聞こえた。この場所だけは明るくなかった。薄暗い公園へと続く大きな橋で、点々と遠感覚で並ぶ街灯のみが周囲を照らしていた。……何か明確な目的があって来たわけではない。ただ漠然とした何かがそこにある気がした。それは間違いではなかったのかもしれない。こんな場所に来たことなど、あるはずもなかったのにデジャヴを感じた。
……何かを待ち続けて吐く息が白く染まるなか、冷えていく指先をポケットにしまった。橋の手すりに背をもたれると、酷く冷えた金属の感触がした。
――――ずっと、生きてきて違和感を抱えていた。気付けば記憶も曖昧で、大切な家族のことも忘れていた。日常に戻れても、頭のなかで声が蠢いている。その答えがここにある気がしてならなかった。全てとは言わない。ただ雪の一片程度でも答えがある。そんな確信があった。
しばらくすると灰雲から粉雪が降り始めた。……少しだけ寒いかもしれない。そう思った。そしてもう少だけなにかを待っていようと、ぼんやりと空を眺め続けることにした。