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20/22

18 いくら人は孤独でも、人は一人では生きられない。

18 いくら人は孤独でも、人は一人では生きられない。


 夜は明けた。船はまだ見えない。全ては船が見えてからの勝負である。

「サキュバス。準備は万全か。」

 今回の要は唯一空を飛べるサキュバスだった。

「なるべく期待には沿う。」

 相変わらず感情の読み取れない話し方だった。サキュバスには船へと向かってもらって、安全な所に誘導してもらわなければならない。

「マーメイド。一人でモービィ・ディックをなんとかできるのか?」

「俺を誰だと思ってる。もう一世紀以上もあのバケモンとやりあってきたんだぜ。」

 マーメイドは俺に三叉を見せ、血色のいい笑顔を投げかける。

「信用してるぜ。師匠。」

「俺の弟子はまだ早えよ。」

 俺とマーメイドは腕の脛をぶつけ合う。そして、マーメイドと別れる。

「そして、スキュラ班か。」

 スキュラ担当が、俺とハレイシャ、アルラウネにスライムだった。

「なんとかして食い止めるぞ。」

「倒しちゃってもいいんじゃない?」

 スライムは子憎たらしい余裕っぷりで答える。

「防戦一方だったあんたが何言ってるのよ。」

 アルラウネはスライムを小突く。

「ちょっとおねえさんと遊んでただけだよ。でも、今度こそ決着をつける。」

「マーメイドは一人で大丈夫なのか?」

 ハレイシャは心配そうに俺に聞いた。

「あいつも無茶はしないさ。むしろ、スキュラの妨害がないから安心して戦えるって、うずうずしてやがる。」

「そうか。今はあの肉だるまを信じるしかない。」

「筋肉だるまと言わねえと怒るぞ。」

 だが、当の本人は朝日に向かって雄叫びやら、ボディビルのポージングやらを決めている。

「ちょっとは緊張してるのかしらね。」

 アルラウネは微笑ましそうに言った。

「マーメイドが緊張な。似合わねえけど。」

 むしろ、武者震いに近いのだろう。よく原始民族が狩りの前に自分を奮い立たせるやつだ。

「俺たちもなんかやるか!」

「ええ~、めんどい。」

 みんなあまりやる気が出ないようだった。

「どうしてやるの?」

「こういうのが流行っていくんだよ。ほら、ラブライブとかでやってたろ?」

「こんなところでやっても少しも流行らないと思うけど。」

「さあ、あなたのジュエルマイクを手に取って!」

「下ネタじゃねえか。」

「東方不敗は――」

「もろパクリじゃねえか。」

「作者の十八番を全て出したところで――」

 俺、サキュバス、ハレイシャ、アルラウネ、スライムは手を重ねる。

「いっくよおおおおおお!」

「うおおおおおおおお!」

 海らしく、男どもとメスゴリラ一匹の叫び声が海岸に響いた。

「さあてっと。俺も行きますかね。」

 そう言ってサキュバスは明けた海を飛んでいく。波風は驚くほど静かで、嵐の前の静けさでないことを祈るばかりだった。

 朝日の元から、黒い点のような影がこちらに向かってきているのが見えた。

「マーメイド。よろしく頼むぜ。」

「あいよ!」

 マーメイドは俺たちのいる方と反対側、つまり、セイレーンの洞穴のあった方へと泳いでいく。そこで大暴れしてもらう。

「俺たちはスキュラが現れるのを待つだけだな。」

 なるべくマーメイドに近い場所で待機する。つまりは砂浜だ。もしもモービィ・ディックやスキュラが岩山の方に来たのなら、マーメイドの方に誘導しなければならない。

「マンティコア。大丈夫?」

「何がだ?」

 訪ねてきたアルラウネに俺は尋ねる。

「そのベルトよ。」

「ああ。問題はない。」

 体に異常はなかった。暴走とか、飲み込まれるとか言われると確かに怖いので、最後の一撃に残しておかないといけない。

 海面が不自然に盛り上がる。そこから、白い巨体が現れた。俺たちにも因縁となった相手、白鯨である。

「モービィ・ディックの本体は見つけられるか?」

「どうも白鯨の頭に乗っているみたいだね。」

「ならいい。」

俺たちはまだ、白鯨の実力を知らない。スキュラ以上に分かりはしないのだ。だから、スキュラとモービィ・ディック、二人を相手しなくてもいいと分かって胸をなでおろす。

「さあて、次はスキュラねえさんなわけだが・・・」

「モービィ・ディック!」

 スキュラは森から駆けてくる。そして、俺たちのことなど勘定に入っていないかのように海に飛び込もうとする。

「アルラウネ!ハレイシャ!」

「あいよ!」

 アルラウネは蔦を飛ばし、ハレイシャは弓を射ってスキュラを止めようとする。俺とスライムは今のうちにスキュラのもとに駆けだす。

「お前ら――」

 この前と違い、スキュラは余裕のない顔をしていた。

「さあ、おねえさん。僕と決着をつけようか。」

 スライムは腕を伸ばし、スキュラに攻撃をかける。スキュラは巧みに攻撃をかわし、スライムに回し蹴りを加える。

「僕に攻撃は効かないって知ってるでしょ?」

 スライムは上半身と下半身を分離させる。そして、スキュラの攻撃が通り抜けた後、もとの形状に戻っていく。

「とおりゃっ!」

 俺はスキュラを殴りつける。股を大きく開いて、砂地でも踏ん張れるようにする。パンチの威力は落ちるが、足場をしっかりと安定させていた方が次の攻撃にもつなげやすく、スキュラの攻撃もかわしやすい。

 俺の攻撃はスキュラの華奢な体に当たる。だが、マンティコアの力を使っていない俺の攻撃は通ってはいない。

「あったまくるわね、あんたたち。」

 スキュラは不敵に笑い、距離をとる。そこをすかさずスライムは狙うが、スキュラには当たらない。

「どうして僕の攻撃はおねえさんに当たらないんだろう。」

「それは恐らくだが、アイツがお前の動きを読んでいるんだ。」

「その通り。頭いいね、あんちゃん。そのこの弱点というか性質的に、鞭の腕がここまで来るのに時間があるの。それと、何回も戦ってるから、空気の流れとか呼吸を読むだけでなんとなくどこを狙ってるのか分かるし。」

「恐るべき野性の勘だな。」

 だが、それもスライムは予想していた。だから、アタッカーは俺なのだ。スライムは俺の補助に過ぎない。十秒しか本気を出せない俺は完全な一撃でスキュラを討ち果たさないといけないのだ。

「吼えよ、我が五匹の猛犬!唸れ、我が五本の足!」

 そう言った瞬間、スキュラの下半身から五匹の犬が、砂浜から五本の巨大な触手が現れる。

「おねえさん、これを売ってたんじゃねえよな。」

「あら?それは聞いちゃいけないと思うな。」

 スキュラの声は緊張感のないものだった。それは余裕から来ているモノなのか。

「ハレイシャ!アルラウネ!」

 俺の叫び声とともに、二人は触手に向かって攻撃する。そして、俺の手にはハレイシャから送られてきた、天使の剣がある。

「犬は俺たちでやるぞ。」

「本体の方も忘れずにね。」

俺とスライムは砂浜を縦横無尽に駆け回る犬を退治する。足場の悪い砂浜では、四足歩行の犬の方が有利だった。素早い犬を切る。くううん、と甲高い声を上げながら倒れて行く犬を見るのは心苦しかった。だが、こいつらはヒュドラの蛇のようなスキュラの一部なのだろう。

「ちっ。」

 犬は用心深いのか一斉に襲ってこようとはしない。だから、倒す順番さえ間違えなければ勝機はつかめる。

「くそっ。犬は無制限かよ。」

 犬は一匹殺すごとにもう一匹増えていく。触手の方も同様だった。

「じゃっじゃーん!」

 スキュラはスライムの方へと攻撃を仕掛ける。犬は全て俺の方に向かってくる。

「いやあ、おねえさんに好かれるなんて幸せだなあ。」

「私にはそんな趣味はないの。」

 スキュラとスライムは激しい肉弾戦を始める。

「これだけ風が吹いてると、酸素は使えないでしょ?だから、いつも襲ってくるときは森だったんだ。」

「海の生き物にはなかなか効果的なんだけどな。でも、もうあなたの能力は見切ったわ。案外スライムってのも大したことないのね。」

「僕はスライムの中でも最弱だからね。」

 犬は俺に噛みつかんと襲ってくる。砂を一つかみして、目をくらまそうとするが、犬には効果がない。俺を囲む五匹の犬はフィニッシュをかけようとする。一匹が俺の背中に飛びつく。他の二匹は両足に。次の一匹は俺の右手、つまり、剣を持っている手を封じてきた。そして、最後に俺の喉笛を――

 一陣の風。それは目にも止まらぬ速さで犬を切り刻んだ。マンティコアの力をもってしてもとらえきれないほどの速さに違いない。

「急げ!マンティコア!長期戦は我々の不利だ!」

「ガッテン!」

 剣を手にしたハレイシャはもう片手に斧を持ち、触手と犬の両方を相手にした。アルラウネが蔦で触手の動きを止め、ハレイシャが斧で太い触手をぶった切る。それと同時に、剣で犬を捉える。

 俺はスキュラに向かって行く。スキュラは俺の接近に気が付いているが、スライムの相手でそれどころではないらしい。俺はベルトを起動させ、マンティコアを呼び覚ます。それはできるという確証はなかった。でも、出来ないはずはないという根拠のない自信だけはあった。

 マンティコアの力を腕にだけ開放する。足に力を行き渡らせれば、砂に足を取られるだろう。それはマーメイドとの修行で体験済みだった。だから、解放した右手で、スキュラをぶっとばす。女の子の顔を狙うのは男としてダメだと思うので、スキュラが十字にかまえた腕に渾身の一撃を叩きこむ。

 スキュラは冗談のように軽く森の木々をなぎ倒しながら飛んでいった。マンティコアの力はさらに強力になっているようだった。俺は寒気を覚える。筋力の上ではスライムと互角なのではないだろうか。

「これで少しは動けないだろ。」

 どれだけ早くても三十分は動けないと俺は予測する。スキュラが森の中に吹き飛ばされた影響か、犬と触手は消え去っていた。

「後は、マーメイドがモービィ・ディックを倒すだけ――」

 安心しきっていた俺は、海の様子を見て唖然とする。みなもそうだった。

 反対側の岩山を目指すはずの船はモービィ・ディックのいる方の岩山に向かって進路をとっていたからだ。

「どういうことなんだ、サキュバス!」

 だが、サキュバスには届かないだろう。

「方向を間違えるはずがない。白鯨が暴れているのはよく分かるはずだ。」

「何かしらのイレギュラーが起きたようだな。」

「どうすれば――」

「迷っている時間の方が惜しい。早くモービィ・ディックを片付けるぞ。」

 俺たちはモービィ・ディックとマーメイドが死闘を繰り広げている岩山に向かった。


 俺たちが向こうの岩山についたときにはすでに戦いは終わっていた。

「嘘、だろ?」

 俺たちを退屈そうな目で見ていたモービィ・ディックは俺たちの目の前にマーメイドの亡骸を投げつける。

「おい、モービィ・ディック!」

 俺は声をかけるが返事はない。

「どうして負けたんだ。」

「弱いからに決まってますわ。」

 俺はモービィ・ディックを睨む。

「レディに向かってその態度は如何かと思いますけど?」

「・・・・・・」

 俺はゆっくりと立ち上がる。

「待ちなさい、マンティコア。あんたはこれ以上力を出せないでしょう?」

「でもな、許せねえだろ。」

 俺はアルラウネの制止を聞かず、立ち向かおうとする。

「待て。このまま立ち向かっても勝ち目はない。一度ひいて体制を――」

「船が危ないだろうが。」

「あら。あんな船を気にしているの?それでは心残り。なら、すっきりして殺してあげますわ。」

「待て!」

 俺はモービィ・ディックを狙って白鯨に飛び移ろうとする。だが、明らかに距離が遠い。これではどうしようもない。俺が戸惑っているうちに白鯨は向きを船の方に向ける。船はもう近くまで来ていた。

 白鯨は巨大な水流を船に浴びせる。船は無残にもバラバラになった。

「う、うああああああああああ!」

 大切なものを失って、俺の心はバラバラになる。体の中から爆発し続ける何かが沸き起こってきて、体を支配する。

「なんで?一日一回しか使えないはずなのに。」

 俺の腰のベルトは起動していた。マンティコアの力が発動する。

「てめえら、囮になれ。」

「何言ってるのよ。」

「時間がねえんだ。ハレイシャ。俺をモービィ・ディックのところまで投げ飛ばせ。」

「私はゴリラでは――」

「早くしろ!」

 俺は明らかに冷静さを欠いていたというのに理性の方はいつも以上に働いていた。これもマンティコアの力なのだろうか。

 ハレイシャは何も言わず俺を投げつける。俺はロケットのようにモービィ・ディックのところまで一直線に飛んでいった。

「なんですって!?」

 俺はモービィ・ディックを貫こうとして、モービィ・ディックの前に現れた壁に阻まれる。

「どうして・・・」

 それは俺も同感であった。モービィ・ディックの盾になったのはスキュラだった。

「お前たちは敵じゃあなかったのかよ。」

 俺の腕はスキュラの体を貫いていた。肉に挟まれた腕が熱い。腕から血が流れてきて、俺の体を汚す。

「なんであなたが――」

「だって、友達でしょう?」

 そこで俺はマーメイドの話を思い出した。マーメイドはモービィ・ディックとの戦いをいつもスキュラに邪魔されていたと言っていた。それがモービィ・ディックを守るためだとしたら――

「う、うああああ。」

 俺はスキュラから腕を抜き取る。

「お前たちが悪いんだ。マーメイドも船も壊すから。だから、だからこうなるんだ。」

「ちゃんと前を見なさい!」

 聞き覚えのある声がする。いつの間にかセイレーンが沖に上って来ていた。

「船を見なさい。」

 俺はゆっくりと海の方を見る。船を見ると、そこには氷のオブジェが出来上がっていた。白鯨の放った水流が氷になっていたのだ。

「残念ながら、最悪なことながら、あの筋肉も生きているのよ。」

 俺はマーメイドの方を見た。マーメイドはゆっくりと起き上がるところだった。

「モービィ・ディック。あなた、とんでもないことをしてくれたわね。このスキュラがどうしてマーメイドとあなたが戦うことを避けていたと思う?」

 突如として空が暗闇に包まれる。強い風が吹き、雷鳴がとどろき始める。強い雨が俺の体の汚れを落とす。

「目覚めてしまうのね。あのバカが。」

「一体何を言ってるんだ。」

 俺はセイレーンに問いただす。そんな時、大地に響き渡る笑い声が俺の耳に入って来た。

「ふははははは!」

 その声を発しているのはマーメイドだった。

「おい、どうなっちまったんだよ。マーメイド。」

 まるで地上に降り立った神のように宙に浮いているマーメイドに俺は声をかける。

「マーメイドだと?私はネプチューン。海の神だ。」

「やめろって。そういうの、痛いだろ?」

冗談であることを望んでいる俺の気持ちを裏切るようにネプチューンは冷酷な瞳で俺を睨んでいた。

「なあ、俺はどうすればいいんだ。アイツは一体何者なんだよ。」

「全ての元凶、かしら。」

 ごろごろと雷鳴が轟く中、セイレーンは冷静だった。

「もう何年も前になるのだけれど、この浜辺にある怪物が来てね、その怪物は海の神が封印されていた槍を引き抜いちゃったのよ。」

「まさか、それが――」

「そう。マーメイドの持ってたトライデント。海の神ネプチューンは色々とぬかったせいで簡単には槍を持った宿主を支配できないでいたの。海の神が宿主を乗っ取るチャンスは宿主が弱った時だけ。宿主を弱らせるには誰かと戦って消耗させるほかにはなかった。だから、わざわざモービィ・ディックとマーメイドを戦わせる理由を作った。」

「まさか、海の異変というのは――」

「そう。あのバカのせいなのよ。」

 鬱陶しそうにセイレーンは言った。

「はっはっは。そう言ってくれるなよ、ハニー。やっと会えたんだから。」

「そういうのがキモイっての。昔ふったのを忘れたの?」

「ノー。そのくらいで諦める私ではないのです。」

「図々しさだけはマーメイド譲りだな。」

「むしろ筋肉のせいで悪化してるんじゃない?」

 アルラウネは気持ちの悪いものを見るような目で言うが、お前も大概な気がしてならない。

「とまれかくまれ、よかったじゃないか。あいつを倒せば全て丸く収まるのだろう?」

「サキュバス?」

 いつの間にかサキュバスが帰ってきていた。

「ただいま帰ったぜ。」

「船はどうした。」

「凍って進めないから、お姫様がこっちに向かってるさ。」

「?」

 色々聞きたいことがたくさんあるが、今は最後の敵に集中しなければならない。とりあえず無事であるということだけで満足だった。

「許さないわ。どいつもこいつも。私の大切なともだちを傷付けて。」

「モービィ・ディック?」

 モービィ・ディックはスキュラを抱きかかえたまま、白鯨を動かす。そして、俺たちもろともハイドロポンプで吹き飛ばそうとした。

 飛沫が顔にかかる。だが、今はそんなことはどうでもよくて、目の前に必殺の水しぶきが迫っているのだ。

「我を誰だと思っている。海の神、ネプチューンだぞ。」

 ネプチューンはトライデントを軽く振った。それだけで水流ははじき返される。

「きゃっ。」

「モービィ・ディック!」

 恐ろしき水流を受けてもモービィ・ディックは無事だった。だが、それなりのダメージは受けたようで、白鯨は重い唸り声を上げる。

「弱点は何かないのかよ。」

「あのトライデントをマーメイドから離すしかないわ……!」

 セイレーンがそう言った瞬間、ネプチューンは宙に浮き、三つの水流の渦巻きを発生させる。そして、それを俺たちのいる岩場に叩きつけた。

「?」

 無駄だと思い防御態勢を取っていた俺たちは、何も攻撃のないことに驚いた。

「女の子はエレガントに、ですわ。」

 エレガントとは程遠い、歯を必死で食いしばった顔でモービィ・ディックは水の竜巻を押しとどめているようだった。

「今のうちになんとかしてくださらない?」

「じゃっじゃーん!スキュラさんも全快なのだ!」

「無事だったのか!」

 スキュラはまだ腹が痛むのか、手で腹部を押さえていたが、傷はすでに塞がっていた。

「マンティコア。今はみんなで力を合わせる時みたいね。ただ、誰かが指示しないとアイツは倒せないわ。今一番役立たずなあんたがやらなくてどうするの?」

「言い方というものがあると思うぞ。アルラウネ。」

 言い方はともかくとして、力を合わせなければどうしようもないのだった。なら、やってやる。

「まずはあの筋肉だるまを地上に引きずり下ろす。アルラウネ、サキュバス、セイレーン。頼むぞ。」

 三人はそっと頷いた。俺の考えていること、各自がすべきことが分かっているようだった。

 セイレーンはなるべくネプチューンに近づき、俺たちに遠ざかって、自慢の美声を浴びせた。

「うぐぐぐぐ……」

 流石の海の王も、海の歌姫の暴力的な美声には打ち勝てないようだった。

「今だ。アルラウネ!」

 アルラウネは蔦をネプチューンの足に絡ませる。だが、それだけではネプチューンを宙から引きはがすことはできない。

 天から黒い衣装の悪魔がネプチューンの下に降り立つ。そして、背後からドロップキックを浴びせる。サキュバスという化け物の本質をガン無視した攻撃であった。

 ネプチューンは地面に墜落した。

「スキュラ、ハレイシャ、スライム。頼んだぞ。スキュラはネプチューンを数で陽動しろ。ハレイシャはスライムを守りながら道を切り開け。最後はスライム。任せた。」

「「「ガッテン。」」」

 スキュラは六頭の犬を創り出し、ネプチューンを襲う。

「おのれ……」

 ネプチューンはトライデントを天高くつき上げる。すると、ネプチューンの周囲に雷が落ちる。だが、ハレイシャとスライムはネプチューンのもとに突き進んでいく。スライムに直撃する雷をハレイシャは剣で弾き飛ばす。どういう原理で弾き飛ばせるのか分からないし、ハレイシャ本人も分かっていないだろう。

「うぐ…」

「ようやくボクの出番がやってきたよね。」

 スライムはネプチューンに顔を近づけて不敵に笑った。

 そして、ネプチューンに拳を叩きつける。

「スラスラスラスラスラスラスラスラスラスラ――スラッ!」

 ネプチューンは空を舞った。その手からトライデントは離れ、ぽちゃんと海へ落ちていった。一方の肉体であったマーメイドは遥か遠く、森の方へと飛ばされていった。



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