EX1 いくら拳を振るっても、クールな夢魔に勝てそうもない
EX1 いくら拳を振るっても、クールな夢魔に勝てそうもない
「じゃんけんをしよう。チーム名はリトルバスターズだ。」
重々しい口調でサキュバスが言うので、夢じゃないかと俺は自分の頬を抓った。痛い。夢じゃない。俺の頬はさらに二方向に伸びる。
「痛い!」
「じゃあ、夢じゃないのね。」
「自分の頬を抓ろよ。」
「いやあ、お肌が傷付いちゃうし。」
「体伸びちゃうし。」
「お前ら・・・」
俺はアルラウネとスライムに呆れたように言った。
「というか、見てたんだな。」
「いいや。銃白金版を制覇した。流石、EXのシナリオも秀逸だったが、なによりrefrainの――」
「これ以上はダメだ。いくらマンティコアでも、全世界の鍵っ子には太刀打ちできない。」
「ジャンケンをしよう。チーム名はリトルバスターズだ。」
「連呼せんでいい。」
サキュバスは不意打ちを狙って、腕を振るう。だが、ジャンケンの攻略法は休載の長い某少年誌の白髪の少年が教えてくれた。
獅子の目でサキュバスの腕の動きを観察し、手が形作ったのを見て、俊足の足で(いや、手だけど)手を出す。
「くそっ。三回勝負だ。」
俺は先ほどの要領で再び勝利する。
「いいや、五回勝負だ。」
「俺は後一回勝てばいいんだな――っと。」
またも勝利。
「いいや、十回だ。」
「潔く負けを認めろよ。」
「俺の負けだ。」
そう言ってサキュバスは悔しくともなんともないように俺たちに背を向けて先を行く。
その時、ぴトンと携帯の着信音が響く。
そう言えば、図鑑の情報を手に入れてなかったのはこの中ではサキュバスだけだったな。
「ほら、急ぐぞ!」
サキュバスは俺たちに重低音を響かせて叫ぶ。
「クールというか、あれは――」
「素直じゃないだけね。」
「だね。」
俺たちはサキュバスの後を追って駆けだす。
色々な要素の入り混じった、恵みの匂い。
海の匂いがした。




