93 洗脳解除
どうなるかなぁ、と少し楽しみにしつつ部屋へ戻る。ついでに周りの女子の洗脳も解いておくか。
どうせ解けって言われるだろうし。
「ただいま」
その言葉に、部屋にいた全員が私を見つめる。その目を1つ1つ見返して洗脳を解いていく。
洗脳は、『イアータを見ると幸せになれる』『イアータに危害を加えない』というもの。それが発動するのは、私が微笑んだとき。
その条件さえ取り除けば、大丈夫。洗脳を解けばその記憶は残らない。……かけられたことすら覚えてないからね。
「……ねぇ、夕食って何時から? アーリア」
「え……あ、18時からよ」
注意深く観察する。……ふぅん、ちょっと違和感ある? さっきまでなにしてたんだろう、みたいな感じ?
他の女子はちゃんと忘れてるみたいだから、アーリアだけだね。
やっぱり、洗脳にかかりづらい。時々いるんだよね、こういう人。すごくかかりやすい人もいるわけだけど。
「あ、リィ」
声をかけると、こっちにやって来る。やや女子が色めき立つけど、それは2人とも無視して。
ついでに私が食堂に入った瞬間に視線を私に固定するの、やめてもらえる? 男子諸君。いや女子もいた。
「……あれか、マーチヘアは」
「可哀想なあだ名が定着しちゃったねぇ。ん、そうそう。あれがマーチヘア」
「解いて、どうだった。大丈夫か」
「大丈夫だったね。ただ、やっぱり違和感はあるみたい。初めて出会うくらい、かかりづらい人だね。普通、違和感もなにもないんだけど」
それが自慢だったんだけどなぁ、ひそかに。
「まぁそりゃ仕方ねぇ。……それより、どうしてこんなに視線に晒されなきゃなんねぇんだ?」
「気づいてないかと思ったよ。ふふ」
そんなの決まってるじゃん、と私は笑う。
「リィと私に見惚れてるから」
「……俺?」
「あー、リィって無自覚なタイプだ。リィも相当目立つ外見って知ってた? 私の75パーセントくらい目立つよ?」
「相当だな」
私が目立ちすぎるから。有名人だって、私の50パーセントくらいだろう。
「で、なんで見られる? 目立つにしてもこんなに見つめる必要はねぇだろ」
「あるよ。女子にとってのイケメンとは目の保養だから! むさ苦しい男を眺めて疲れた目を、イケメンを見て安らがせる……ってこと」
「そんなもん……か?」
「そんなもんだよ。分かった? だからアーリアもリィに惚れたんだよ。見た目で惚れるってまぁああいうタイプらしいといえばらしい」
紅茶を飲みながら、リィは唸る。眉間にしわが寄っているところから察するに、あまり理解できていないらしい。




