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ただ純粋な、  作者: 横山裕奈
チェス編 第四章
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87 伝言を伝える

 ティタンへ帰った俺たちには、1つするべきことがあった。

「リサ……入るよ」

 イアとナタリー、リサで使う予定だった部屋の扉をノックする。リサは、どんな反応をするだろう。

「ええ、いいわよ。おかえり」


「……ただいま」

「ねぇ……他のみんなは?」

 イアが口を開いて、もう一度閉じた。たったそれだけの動作でも、十分に伝わって。

「嘘でしょ? ねぇ、どこにいるの? ――ラーフは?」

「……伝言。あるんだ、リサ」


 深呼吸をすると、イアの声と動きはラーフに変わる。

「ごめん。でも、ずっと側にいる」

 瞬きをすれば、イアに戻っていた。リサはぼんやりとイアを見て、そして、笑い声を漏らした。

「ああ、そう……。みんな……いないのね? そして、あんたたちだけが生き残った!」


 笑い声はすぐに狂った声になる。

「やっぱりあんたが残るのね、イア! 神様って不公平ね。あんたには与えすぎるほどすべてを与えたのに、私からはすべてを奪っていくんだもの!」

 涙が流れる。でも、笑い声はそのままだ。


「ねぇイア。ラーフに言われたから、あんたを憎みはしないわ。でもね、とても悔しいの。私は私でいいって認めてくれた人は死んで、私に劣等感を抱かせたあんたが生き残ったことが!」

 イアは表情に一切の動揺もなく、すべて受け止めて聞いていた。

「あははははッ! あんたたちは2人で生きていけばいいのよ! 私は、昔から1人だった。そして、これからもね! こんなことなら、2人になんてならなきゃよかったわ」


 不意に真顔になって、リサは呟いた。

「……前よりずっと、世界が色褪せて見えるわ」

 世界が色褪せる、という言葉には覚えがあった。色褪せて、最後には黒一色になる。……イアに助けてもらわなかったら、俺は今のリサと同じ状況だったはずだ。

「さようなら、リィ、イア。悪いけどイア、違う場所で寝てくれる?」

 イアがうなずいたのを見て、リサは扉を閉める。

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