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ただ純粋な、  作者: 横山裕奈
チェス編 第一章
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7 蟷螂の話

 それは、とあたしは口を開く。声は少ししわがれている。


「それはあたしが、殺し屋をしてたからさ」


 リィとイアが押し黙る。……まぁ、いきなり言われても困るか。

「いきなりで悪かったね。嘘みたいだけど、」

「いや、ノーラ。俺たちが黙ったのは、だ。……イア」

 説明しづらかったのか、面倒だったのか。リィはイアにすべて押し付けた。


「私たちが黙ったのはね。ノーラがそれを話すとは思わなかったから」


 それって、つまり……。

「知ってたのかい?」

「うん。まぁ、身のこなしとか見てたら分かった」

 ああ、この子たちの観察眼をなめてたらしい。


「……蟷螂カマキリの話をしてあげよう」

「カマキリ?」

 2人の声が重なる。

「ああそうさ。15年前に終わった、殺し屋。あたしがリーダーをしてた。全部で4人の殺し屋だ。あたしは強かった。そして、仲間は強くなかった。弱くはないさ、ただあたしにはついてこれなかった」

 血の匂いでむせ返るような真っ赤な玄関ホールで、あたしは昔を語った。


「あたしも、仲間も、限界は感じてた。でも、無理に続けた。そして15年前……仲間がへまをした。へまをさせちまうくらい、あたしは無理を強いたんだ。仲間が自分についてこれるって、信じようとしてた。でも、ダメだったよ。2人は死んで、1人は捕まった。あたしは武器をその場に捨てて、逃げた。

 ある男が、言ったんだ。『やっぱり俺じゃ、足を引っ張った』ってね。あいつらも限界は知ってたのに、無理についてきた」


「ねぇ、ノーラ。その人って……ノーラの、好きな人?」

 大事な人とかではなく、好きな人というところに年齢が出る。少し微笑ましく思いつつ、それにうなずく。

「ああ、そうさ。あたしの恋人だった。子どもが好きでね。それに影響されて、孤児院を始めたってわけだ」

 懐かしい。今でも、思い出せる。まぁ、やっぱり薄れちまってるが。

 孤児院を始めて、最初に拾ったのがイアだ。すぐそこに捨てられていた。そして7年後にリィを連れて帰ってきた。その4年後に、4人も増えた。


「……だから、釣り合わない人間は排除しろと?」

 リィの言葉は、核心を突いている。恐ろしく冷たい言い方ではあるが。

「あたしは、仲間を手放せなかった。ただの優柔不断を、優しさと取り違えたんだ。そうしちゃいけない」


「俺は、嫌だぜ」

「僕も、お断りだね」

「私がいなくちゃ、的確に動けないわよね?」

「あたしだって置いてかれるの嫌だよ!」

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