72 任務遂行
「あ、スプーンがない」
「混ぜるだけ? なら私の使う?」
「ありがとう、アリス」
私は自分のコーヒーを混ぜたスプーンを渡す。エヴァンジェリンの隣には、スケープゴートが座っている。
知ってるよ、あなたはいつも、エヴァのコーヒーに砂糖を入れてあげる。袋に入っているもので、毒を入れるのは簡単だよね?
私は微笑んでコーヒーを飲む。毒入りのコーヒーを。毒が付いていたのは、私のティースプーン。だから私も、毒を飲むことになる。
でも大丈夫。毒に耐性があるから。どこかのギャンブラーにやられたからね、致死性の毒。だから、多少は大丈夫。
まぁ、一般人が飲めば死ぬやつだけどね? おやすみ、エヴァ。ご冥福を。
「きゃあああ!」
スケープゴートの悲鳴が上がる。それに合わせて、私もエヴァの肩を掴んで揺する。
「え、エヴァ!?」
「誰か! エヴァが倒れたの! 助けて!」
「どうしたんだ、アリス」
エドに駆け寄る。
「エド! アリスが倒れた! 救急車、病院……お願いエヴァを助けて!」
顔面蒼白、悲痛な叫び。これほど効果的なものはない。対してスケープゴートは、狂ったように笑っていた。
洗脳、得意なんだ。目を合わせて、呼吸を合わせる。慣れちゃって、もうそれでできる。まぁでも、短時間でそんなに複雑なことはできないから、とりあえずただ笑わせた。
カフェテリアは蜂の巣をつついたような大騒ぎになり、先生が来るわ救急車が来るわ警察が来るわ……あー大変。あ、こっちじゃポリスだっけ?
取り調べで、厳しく調べられたのは私とスケープゴート。私は涙を押し殺して気丈に振る舞い、スケープゴートは放心状態。
ごめんね、私たちのために死んで?
取り調べが終わって1時間。スケープゴートの自室から、悲鳴が聞こえた。そこには遺書と、天井から釣り下がる死体。
遺書には、「綺麗でみんなに好かれるエヴァが憎かった」とだけ書いてあった。警察は一応死体を持って引き上げ、私はエヴァに会わせてと警察に縋り、周囲の涙を誘う。
さぁ後は、疑われない程度にこの学校で過ごそう。




