69 上陸
3日後、俺たちはウォシロマ共和国に上陸した。船での生活がいい感じに実践練習になって、学校で名前を間違えることはなさそうだ。
それにしても……なんだか賑やかな国だ。うるせぇ。
「学校はここだね。よし、行こう!」
「元気だな、アリス」
「だって、楽しみでしょ? エド」
……イアのいつものテンションに合わねぇ。調子狂うな。
「やあ、初めまして。担任のロナルド・シューターだ。よろしく」
全員で同時によろしくお願いしますと言うと、笑われた。
「さすがティタンの子どもだ。礼儀正しいな」
今ので礼儀正しいって、お前らどんだけ非常識なんだ?
「うちの学校は寮っていうのは知ってるね? それで、3人部屋だ。まぁ細かいことはクラスメイトに聞いてくれ。君たちは全員、同じクラスだ。じゃ、ついてきてくれ」
適当だな。細かいことは聞けって……有り得ねぇ。
うっわ騒がしい! 教室に入った瞬間の感想はそれだ。もう始業時間だろ? なんでまだ空席がある!? まだ友達のところに行ってるなら分かる、遅刻してるやつは頭おかしいぞ!
「じゃ自己紹介頼む。こいつら転校生……まぁ、向こうの日常会話を教えてくれる教師だ。お隣さんからだ」
お隣さん……ああ、ティタンが。お隣さんもなにも、世界には2つの国しかないのに。昔は多かったらしいけどな。今はもう、海を挟んで向かい合うだけだ。
アリスは元気な笑顔、クライトは大人っぽい笑顔、コーデリアは冷たい顔、ヴァレッドは儚い笑み、キャサリンは無邪気な笑顔、俺は仏頂面で挨拶をする。
全員、とりあえず見た目で心は掴んだようだ。にしても……イアの能力が高すぎる。あんな元気なイア、初めて見たぞ。
案内はクラスのボス的存在が請け負うことになった。そう、標的のエヴァンジェリンたちのグループだ。派手すぎて近寄りがたいかと思えば、案外真面目そうだ。
「ようこそ、言語学校へ! 私はエヴァンジェリン・スミス。ついてきて」
「標準語、上手いね」
「標準……ああ、ティタン語ね。そっちじゃそう言うの? アリス」
「うん。じゃあさ、そっちじゃウォシロマ語のことなんて言うの?」
「共通語ね。方言はあるけどね」
「こっちもだよ~」
エヴァンジェリンの身長はイアより少し高いくらい……167くらいか。イアが165だからな。
金髪に菫色の瞳。美人だが……イアを見続けたせいでもはやなんとも思わない。イアの方が綺麗じゃねぇか。
「ここが図書室ね。蔵書は多いのよ! 当然、ティタン語の本もあるわ」
「物語もある?」
「ええ、あるわよコーデリア」
コーデリアは冷たい瞳をわずかに和らげる。これで話しかけやすくするつもりか。ああ、本好きならその話題でいいからな。なるほど。
「体育館。広いでしょ? ここで集会もするわ」
まぁ、俺たち学校に行ったことねぇから、ティタンじゃどうとか分からねぇけどな。孤児院の小学生だって、年齢で言ってただけだし。
2階には席があって、集会のときは生徒がそこに座るのだそうだ。
「……これで大体見たわね。後は寮ね。あなたたちは全員、同じ部屋だったかしら?」
「女子と男子に分かれてね! なんか、面倒な規則とかある?」
「それはまた、寮に戻ってから言うわ。さぁ、ランチでも行きましょ? 今日はもう、うちのクラスは授業がないの」
なんて適当なんだ! ……うちの国の学校では、10時にティータイムがあるんだが……なかったな。やっぱり文化が違うのか。
――ちなみに、カフェテリアの紅茶はくそまずかった。




