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ただ純粋な、  作者: 横山裕奈
チェス編 第一章
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6 ノーラの採点

 派手にやっちまったねぇ、とノーラはもう一度呟いた。さっき上に上がったはずなのに、こっそり見ていたらしい。

 相変わらず、気配が読めないなぁ。


「ふぅん、全部で27人。無駄な弾も使わなかったし、ナイフも2本で済んでるね」

「13人は私で、14人はリィだよ」

 もう分かってるだろうなと思いつつ、一応言っておく。


「100点だ、2人とも。上達したね」

「え、嘘100? どしたのノーラ、なんか変なもの食べた?」

「道端のものは食うなよ、ノーラ」

「……あんたら、張り倒されたいのかい?」

 声が低くなるノーラに、少し焦って言いわけをする。


「いやだって、100点って初めてだし。ねぇリィ?」

「そりゃまぁ、驚いた」

「本当に、100点なんだよ。もう、1人で……いや、2人で生きていける」

 その言い方に少し引っかかって、聞いてみる。

「6人では?」

 ノーラは、明らかに言葉に詰まった。


「あいつらが、弱いってわけじゃ……ない。ただ……強くも、ないんだ。イアのように見た目すらも戦いに生かせるわけじゃない。リィのように情報処理や空間把握が得意なわけじゃない」

「だけど、リサはハッキングができる。パーシーは機械の扱いが得意だし、ラーフは気配を消してどこにでも移動できる。ナタリーの身体能力は、私やリィを超えてる」

 強くないなんてこと、ない。そう思って、言い返した。でも、ノーラの返答は早かった。

「ハッキングができても、あの子は戦闘能力がない。機械が使えても、あの子は視野狭窄に陥りがちだ。気配を消せても、不意打ちが成功しなかったとき、弱い。身体能力があっても、単純な動きしかできない。……それじゃ、意味がないんだよ」


 確かに。不覚にも、納得した。思い当たることはいくつもある。

「だから、リィ、イア。……殺し屋は、しないでくれ」

「なんで?」

 なんで知ってるの、とは聞かない。ノーラなんだから知っててもおかしくない。そうじゃなくて。

「なんで、そんなこと言うの?」

「分かるからだ。あんたら2人ならともかく、6人じゃ無理だ」

 まだやっぱり私は子どもで、すぐに頭に血が上る。


「なんでそんなこと分かるの!?」

 ノーラの動きは止まる。私は、後悔した。

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