59 蔵書整理
ああ、始まった。いつも憂鬱だ。記憶の定着でもしたいのか、いつも私は休養日に夢を見る。幸せなことも見るけど、どうも血生臭い思い出の方が多いらしい。
しかも、面倒なことに起こっていないことまで見せる。たぶん、確率的に今後起こりそうなことを予測して見せているんだろう。
鬱陶しい。嫌だ。見たくない。今回は特に、見たくない。
『ノーラ』
『うわぁ喋った! 分かるかい? イアータ。ノーラだよ』
『リィ、この人がノーラ。ノーラ、リィも一緒に暮らしていいでしょう?』
『ああ、いいよ。名前は?』
『リークス・ソール』
『……誰?』
『イアータ・クローバー。あなたは?』
『リサ・オーテス』
『イア!』
『あー、これで私も人殺しかぁ。あーあ……』
『大丈夫か?』
『うっわ……腐ってる』
『死体を放置なんかするもんじゃねぇな』
『血の海ってこのことだね~』
『あいつらは連れてこなくてよかったな。リサなんか気絶するぞ、これ』
『さすがに私も初めてだよ? 内臓ぶちまけられた死体なんて』
『きゃぁああああ!』
『リサ、外に出てて。……さて、売れそうなものあるかな』
『なんの儀式だ、こりゃ』
『5人分のいいとこだけ繋ぎ合わせたかったんじゃない? でもまず、裁縫の勉強すべきだね』
『ああ、下手くそだな。でも人間を縫い合わせる技術なんか誰も教えてくれねぇけどな』
『早く行きな2人とも! 死んじまう!』
悲鳴が聞こえる。色褪せず、鮮明に。獣の咆哮のような、喉が張り裂けそうな、濁った悲鳴。
焼け爛れた顔が見える。焦げた臭いがする。血の匂いならまだ、構わない。もう慣れてしまって、空気と大して変わらないから。でも焦げた臭いは違う。臭かった。なにかに例える暇もないくらい。大事な家族だったのに、ただ怖い、臭い、逃げたいと思った。
『有り得ないわよね、イアって』
『僕も同感。家族が死んだのにさ』
『あたしもー!』
『おいナタリー、大声で言うな。イアは休養日だけど、リィは起きてるんだぞ』
『俺だって、同じ気持ちだけどな。演技で平気なフリしてたのに、あいつ本気にするんだぞ?』
『ホントあいつ、いい加減にしてほしいよ』
夢だ。夢だ。……少なくとも、私は知らない。知らなかったら、それはなかったのと同じ。だから、大丈夫。
夢だから。夢だと思えばいい。
……私から、これ以上奪わないで。お願いだから……。




