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ただ純粋な、  作者: 横山裕奈
チェス編 第四章
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59 蔵書整理

 ああ、始まった。いつも憂鬱だ。記憶の定着でもしたいのか、いつも私は休養日に夢を見る。幸せなことも見るけど、どうも血生臭い思い出の方が多いらしい。

 しかも、面倒なことに起こっていないことまで見せる。たぶん、確率的に今後起こりそうなことを予測して見せているんだろう。

 鬱陶しい。嫌だ。見たくない。今回は特に、見たくない。


『ノーラ』

『うわぁ喋った! 分かるかい? イアータ。ノーラだよ』


『リィ、この人がノーラ。ノーラ、リィも一緒に暮らしていいでしょう?』

『ああ、いいよ。名前は?』

『リークス・ソール』


『……誰?』

『イアータ・クローバー。あなたは?』

『リサ・オーテス』


『イア!』

『あー、これで私も人殺しかぁ。あーあ……』

『大丈夫か?』


『うっわ……腐ってる』

『死体を放置なんかするもんじゃねぇな』


『血の海ってこのことだね~』

『あいつらは連れてこなくてよかったな。リサなんか気絶するぞ、これ』

『さすがに私も初めてだよ? 内臓ぶちまけられた死体なんて』


『きゃぁああああ!』

『リサ、外に出てて。……さて、売れそうなものあるかな』

『なんの儀式だ、こりゃ』

『5人分のいいとこだけ繋ぎ合わせたかったんじゃない? でもまず、裁縫の勉強すべきだね』

『ああ、下手くそだな。でも人間を縫い合わせる技術なんか誰も教えてくれねぇけどな』


『早く行きな2人とも! 死んじまう!』

 悲鳴が聞こえる。色褪せず、鮮明に。獣の咆哮のような、喉が張り裂けそうな、濁った悲鳴。

 焼け爛れた顔が見える。焦げた臭いがする。血の匂いならまだ、構わない。もう慣れてしまって、空気と大して変わらないから。でも焦げた臭いは違う。臭かった。なにかに例える暇もないくらい。大事な家族だったのに、ただ怖い、臭い、逃げたいと思った。


『有り得ないわよね、イアって』

『僕も同感。家族が死んだのにさ』

『あたしもー!』

『おいナタリー、大声で言うな。イアは休養日だけど、リィは起きてるんだぞ』

『俺だって、同じ気持ちだけどな。演技で平気なフリしてたのに、あいつ本気にするんだぞ?』


『ホントあいつ、いい加減にしてほしいよ』

 夢だ。夢だ。……少なくとも、私は知らない。知らなかったら、それはなかったのと同じ。だから、大丈夫。

 夢だから。夢だと思えばいい。


 ……私から、これ以上奪わないで。お願いだから……。

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