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ただ純粋な、  作者: 横山裕奈
チェス編 第三章
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38 リークスの夢

 夢か。だって、小さい頃のイアがいる。そして俺の頬を、涙が伝っている。ああ……孤児院に来た日の。

『聞いてて。絶対に、気に入るから』

 そう言って、イアは突然歌い始めたんだよな。古い、古い歌を。


 『少年は願う 少女は願う

 このまま互いの存在を

 腕に 抱き留めていたい

 煌めく想いは 壁の中


 隣村から 紅塗りの輿

 少女を迎えに 迫り来る

 ああ 永久とわに明日など 来ねばいい


 少年は願う 少女は願う

 このまま互いの存在を

 腕に 抱き留めて

 このまま2人で一緒に

 夕闇に溶けてしまいたい


 少年は苦しむ 少女は嘆く

 夕闇は夜闇へ変わり

 天の端には 輝く朝日

 ああ 紅の輿が やって来る』


『悲劇的な歌だな』

『でも、綺麗な曲だよね? 黄昏の感じが、現れててさ』

 イアが歌ったから、そう感じた。夕闇の、恐ろしくも美しい色。不自然なまでの静けさ。見慣れた風景を違うものに変える雰囲気。そんなの、意識したことなんてない。でも、イアの歌でそう思った。


 思うことがある。あの日、イアがいなかったら……。俺は一体、どうなっていただろう? 今のように、少しは人間らしくなっていたのか。たぶん、なっていなかったと思う。

 イアがいるからこそ、今の俺がいる。イアがいなければ、生きてすらいないかもしれない。死ぬのは、少し残念だ。


 でも……。一緒に死ねるなら、それでもいいか。

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