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ただ純粋な、  作者: 横山裕奈
兵士編 第四章
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248 毒

 屋上のベンチで、私はくすくすと笑う。ポケットを探ると、すぐに目当てのものに指が触れた。毒だ。

 私でも死ねる、特製のもの。少し時間はかかるけど、確実に死ねるものにした。

「今から逝くね、リィ」


 効くまで、確か5分くらい。

 私はのんびりとリィのことを思い出すことにした。時間は少ないけど、記憶ならたっぷりある。特にリィとの思い出なんて、どれくらいあるんだろう?

 何年一緒にいたんだか。


 紅茶の味が悪いとしばらく反応が薄い。読書の邪魔をすると、露骨に不機嫌になる。愛想もないし、笑顔は滅多に浮かべない。言葉の選び方は下手くそで、同い年なのに私のこと子ども扱いで。

 でも。


 仲間想いで。言うべきことは言えて。誰に対しても平等で。常に冷静で。言いたいことを汲み取ってくれて。

 ――ただ、側にいてくれて。

 私のこと、普通の人間だって言ってくれて。心配してくれて。信用してくれて。


 そんな人、リィ以外にはいなかった。いなかったよ。ずっと生きてて、リィ以外は私のことをちゃんと見てくれなかった。

 いつだって核の部分からは目を逸らされた。狂ってるところ、見てくれなかった。リィはそれも見てくれて、その上で側にいてくれた。

 まぁ、逆もそうだけど。


 あ。指先、冷たい。足、感覚ない。

 空は、とても綺麗に見える。こんなに青色って綺麗だったかな。死ぬ間際、だからかな。

 走馬灯は見えない。見ても仕方ないか。どうせ休養日に似たようなもの、見せられてるし。


 ――ま、なにも悔いることはないかな。

 わたしは、わたしとして……いき、て……いられ……た……か、ら……。

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