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ただ純粋な、  作者: 横山裕奈
チェス編 第三章
24/262

23 久しぶり

 王宮への殴り込みから6か月。解決した依頼はその間に2件。貴族って大変なんだねー。やりたくないや。まぁなれないけど。

ああそうそう、経済の混乱の方は、操り人形諸君に手を回して収めさせてもらった。だって私が困るのが、一番嫌でしょ? 王さまには方法は秘密。

「イア。久しぶりに依頼だぞ」

「マジで? わぁ3か月ぶり? 遅かったなー。貯金がなくなるとこだった」

 0歳~5歳チビが1人増えて1か月。それとついでに、私が拾われた日から15年と2週間。いやー、15年か。長いねー。


「で、今回は……。セリゾ・チェンバレン? なんか重要人物をサクサク殺してるけど、大丈夫?」

「問題ない。人が1人いなくても、国は回る。たとえ私が死んでも、他の者が上手くやる。そんなものだ」

 ふふ、と笑顔で応える。達観してるね。もう43……いや、最近44になったんだっけ? 王さま。

「ねぇイア」

 ナタリーの声だ。なにを聞かれるのかは分かってるから、さきに答える。


「セリゾ・チェンバレンは、王さまの家令ハウススチュワード。家令っていうのは、その家で働く人(使用人)の中で一番偉い人のこと。それで、王家……王さまの家では、かなり偉い人なんだよ。国の中でもね。だからこそ、セリゾ・チェンバレンは王さまを信じて、従うように教えられる」

 だって、もしセリゾが裏切ったら王さまは簡単に死ぬからね。

「セリゾ・チェンバレンの名は、親から子へと代々受け継がれる。今代のセリゾのファーストネームはギアルギンだ」


 王さまは淡々としていて、別に罪悪感は感じていなさそうだ。まぁ手を下すのは私たちだしね。

「それで? どうして殺すの?」

「知らなくていいこともあるとは、思わないのか」

「じゃあ直接聞こうかな。……だって男でしょ?」

 ちょっと話して頼み込めば、教えてくれる。残念ながら自惚れじゃなく、事実だ。

「イア。お前まだ懲りてねぇのか……?」

「ぎゃっ。ねぇそれ半年前の話だよ!?」


 さすがに時の力は偉大だね。案外すんなり落ち着いた。謝り倒したけど。

「お前がその気になったら、王位すら奪われそうだ」

「面倒だからいらない。それで、なんで?」


 ふぅと息を吐いて、王さまは話し始める。

「……幼い頃から、セリゾは毎日王家の偉大さを語られる。1日も欠かさず、な。そしてセリゾは、王に仕えることに誇りを見出し、立派な人間に育つ」

「今までに、立派じゃなかったセリゾは?」

「いない。物語を聞いた者の中にはな」

「あー、そういうこと」


 納得できた。つまり、今代のセリゾは、

「偽物だね? 本物は、死んじゃったの?」

「ああ。そうだ。そして、よく似た少年を養子にしたらしい。私すら、知らなかった」

「なんで分かったの?」

「先代のセリゾが数日前、死んだ。そのときに『ああ、ギアルギン。来てくれたのか……』と言った。妻を問いただして、事情が明らかになった」

「問いただすはよくないよ、聞いたくらいにしとかなきゃ」

 セリゾ・チェンバレンか。どうしようかな。

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