219 休日キタ――!
「リィ、遊びに行こう!」
「……はぁ?」
苦虫を噛み潰したような顔でそう言われても、私は表情を崩さず話しかけ続ける。
「いいからさー、行こうよー」
「なんだよ、いきなり。服はこの前買ってやったろ」
いつもの風景だとばかりに、リビングにいるレイジとカノンはなんの注意も払わない。
……そういえば、あの2人ってどんな関係なんだろう? あの2人はあの2人で、独特の空気感があるんだよね。
「で、なんでまた」
「これ見て」
「あぁ?」
目の前に差し出したのは雑誌。カフェなんかを中心に扱っているものだ。
「……ああ、ここ行きたいのか」
「せーかいっ」
最近オープンしたカフェ、『リリー』に行きたい。
「見てよこれ、絶対美味しいって」
「パンケーキくらいカノンに作ってもらえ。シェーラもいるだろ」
カノンはお菓子を作るのが上手い。それは知ってるし、シェーラももちろんお菓子くらい作れる。
「いや、こういう添加物たっぷりなのも美味しいじゃん? カノンとシェーラのはもちろん相当美味しいんだけど、身体にいいでしょ!」
「意味分かんねぇよ! なにをどうしたいんだ、なにを!」
「ほら、あの明らかに添加物まみれのお菓子が恋しくなる瞬間あるでしょ。それそれ」
「分かったような……分かんねぇような……」
「まぁなんでもいいから一緒に行こうよ!」
リィがいないと注文すらまともにできないんだって! 人見知りなんだからさ、私。
「あーもう、分かった。行けばいいんだろ、行けば」
「そうそう! ほら、支度して! 行くよー」
「落ち着けバカ。だからバカなんだ、バーカ」
「そこまでバカと言われる筋合いはない!」
「いや、お前バカだぞ」
なぜか昔から、リィは私をバカだと認定している。他人には「バカ」とは言わない。愚かとか頭悪い、ならあるけどね。




