204 キリスとウィル
『それじゃ、さっき言った通り暴れてくれよ。血塗れになりながら、相手を自分たち以上に血に染めながら』
「了解」
俺はそう返して、ウィルに向き直る。
「行こうぜ、ウィル」
「そうだね。派手に暴れたらいいんでしょ?」
ウィルの穏やかさは、本物だ。でもウィルは、その穏やかさを崩さずに人を殺せる。呼吸するように、バイオレットで相手を殺す。
昔から知ってる。俺とウィルの付き合いは存外長い。家がそもそも近かったのもある。最初、養成学校に行く年齢になったとき、すぐ辞めさせられるだろうと思っていた。
ところがどうして、こいつは主席で卒業してそのまま軍に入った。
先生からもお墨付きをもらったくらいだ。
『お前はまさしく、天性の軍人だ。異質なもので、だからこそ優秀な』
「来たよ~」
「おーおー、かなりいやがるな」
斧で首を刎ねる。処刑人のようだと、誰かに言われた。誰かは覚えていない。
直後、襲いかかってきた敵を肩に斧を振り下ろす。血が噴き出して、俺にも、近くにいたそいつの味方にもかかる。
明らかに怯えた顔になったそいつの脳天をかち割って、さらに血を出させる。
ああ、もう血塗れだ。
近くでウィルが戦っている。少し大ぶりなナイフで、的確に相手の急所を突いていく。急所を突けば、大量の血が出る。
そして敵たちが怯む。怯めば動きが鈍る。――ああ、そこはまだ射程内だ。
ナイフが伸びて、普通の剣と同じくらいの長さになる。逃げだそうとした敵兵を背後から斬って、再び元の大きさに戻る。
2本のナイフは舞うように動き回り、敵を殺していく。
異質で、なにが悪い。俺だって、ジジュンで誰かを殺しても心なんて痛まない。
戦場だからとか、そんな理由じゃない。ゆったりと思い返しても、ただ死んだなと思うだけだ。
異質さは優秀さだ。俺は、無能でいたくはない。




