17 仕事終わり
「じゃあ初仕事の成功を祝して、」
「かんぱーい!」
ジュースだけどな。
「おいナタリー、それ俺の仕事!!」
「一回言いたかったんだ~」
なんだかんだナタリーに弱いパーシーは、それ以上なにも言わなかった。見てて飽きねぇな、お前ら。
「ねぇねぇパーシー、トーナストってなに?」
「お前……知らずに着てたのかよ……! えっとな、ナタリー。トーナストっていうのは、トーナって石から作られたもののことだ。剣も、銃も、殴られたり蹴られたりしても、痛みはない。少し押されたくらいの衝撃に変わる」
「みんながそれ着ればいいのに」
「トーナはほとんど採れないんだ。それに、加工にも手間がかかる。あとはな、そんなに完璧じゃないんだ。ものすごく切れ味がいい剣や、弾の飛ぶのが速い銃なんかには負ける。それに、天井が落ちてきた、とかものすごい重さには耐えられないんだ」
「へぇ~。分かんないけど分かったよ、パーシー!」
……ご愁傷さま、パーシー。
「ラーフ、本当にかわいかったわね」
「リサ……僕のこと殺す気? 恥ずかしさで」
「あたしもそう思うよ~!」
「ナタリーまで……」
頭を抱えるラーフを見て、イアはニヤニヤしている。もう2人とも化粧は落として、いつもの顔だ。
ああ、まだ言ってなかった。少し離れたところにいるイアに、話しかける。
「おかえり、イア」
イアはにっこりと笑う。素の笑顔だ。なにも、取り繕ってない。
「ただいま、リィ」
もうすっかり夜で、リビングには俺しかいない。なんとなく本を開いたら、予想以上に面白くて止まらなくなった。明日寝不足かもな……。
キィ、とドアが開いて、イアが入ってくる。風呂上がりだろう、白い肌に若干赤みが差している。
「リィ、疲れた」
俺の左側に座って、そう言う。それだけしか言わないっていうのは、今までの経験で知ってる。
いつも通り、俺の肩に頭をもたせかけて、眠り始める。疲れたときの、いつもの行動だ。まぁ今回は初仕事だったし、変装はよくするとはいえ潜入は初めてだったしな。
眠ってるからもう聞こえないだろうなと思いつつ、ごく小さく呟く。
「お疲れ、イア」
それと、帰ってきてくれてよかった。それは言わずに、また本に視線を落とす。




