10 初仕事 1 作戦会議in男子部屋
「イア」
3階の男子部屋で作戦会議をすることになった。女子部屋には入れたくないらしい。……扱いひどいな。
とりあえず情報を集めるところからだろう、と俺はイアに話しかける。
「なに? リィ」
「標的の情報を」
ちょっと待ってね、と言って、イアは目を閉じる。『図書館』に入ったようだ。
全員が静かになる。このときにイアの邪魔をすると、恐ろしく恐ろしく怒られる。
今イアは、脳内にある『図書館』にいる。その中にはイアの人生すべての記憶が入っているらしい。イアは、すべてを覚えている。本人はよく、「私は、忘れることができない」と言っている。
ぱちりと目が開く。ただ、その瞳に感情はない。そして抑揚のない声で話し始める。『本』を読んでいるからだ。
「女好き。使用人の入れ替わりが激しい。怒りっぽい」
そして、瞬きをする。もう一度目を開いたときには、もういつもの微笑みだ。
「少ないな」
「これだけしか人間としての要素がないってこと。つまり、薄っぺらいクズ。……使用人の入れ替わりが激しいなら、覚えてなさそうだね」
「問題は警備か。リサ、調べてくれ」
「ええもうやってるわハッキングでしょう簡単よそうね警備の大手といえばプロティクトかしらね大抵の会社はネット上に契約書を残してるから全部分かるわそれに日々の業務内容もあるはずよああもう入れるわなんて簡単なセキュリティかしら面白くないわね」
……だいぶ本気らしい。リサは、ハッキングをし始めるとこうなる。まぁ、できてるから別に……いいんじゃ、ないか? 少し怖いが。
「護衛はSランク、常に5人以上ね。日によっては8人」
「Sランクってどのくらい? リィとイアで言ったら?」
ラーフが聞く。俺たちが比較対象かよ。
「う~ん……。ちょっとさすがに分からないわ。……あ、Aランクのことなら乗ってるわよ。『全員をAランクにしたら、誰が主導権を握るかでぎすぎすした。1人だけ上のランクで雇った方が面倒がなくていい』……らしいわ」
「まぁでも、Sって言ってるくらいなんだ。なめるわけにはいかないね」
「そうね……。ラーフの言う通りね。……大丈夫そう? リィ、イア」
「ま、潜入になるのは確かだね。あとは、どうやって殺すか」
「イア。お前なら、標的の動きを操作できるか」
「バカにしてる? ……できるに決まってる」
「そうか。じゃあ、お前が潜入しろ。他に誰か連れてくか?」
「そうだね。美人メイドって感じで行くし……ラーフかな」
なるほど。俺は納得したが、肝心のラーフが必死の形相で否定した。
「ちょ、ちょっと! 僕、男なんだけど!? まさか女装……」
決死の抵抗は、イアの微笑みに潰された。微笑みは、ラーフを絶望させるには十分すぎるほどだった。
そして耳元で囁いた言葉は、ラーフの顔から色を奪うのに効果的すぎた。
「大丈夫だよ、ラーフ。かわいくしてあげる」




