98 あ、訓練は?
目を覚ますと見知らぬ天井。……いやこれ医務室だね。
「イア。大丈夫か」
右側を見ると、リィがいた。顔はいつもの仏頂面だけど、声は確かに心配している。
「う~ん、大丈夫じゃないね。お腹痛いし。穴が開いた感じ」
「実際に開いたけどな。銃弾サイズの」
どのくらいで治るかなぁ。1か月半くらいはかかるかも。
「致命傷じゃなくてよかったな」
「まぁ致命傷なら今ここにいないしね。……ねぇ、訓練は? どっちが勝ったの?」
「あ? まぁ俺たちだ。死亡人数は5人。俺たちの率いた10人の隊の中では、お前だけだバカ」
「これは仕方ないでしょ! 誰があんなの想像できるか。しかも狂っててなんか力強いし」
リィは、はぁ、とため息を1つ。幸せが逃げるよとからかったら、軽く頭を小突かれた。
「ああ、アーリアのことだが」
「うん? どうなった? 除隊くらいはされた?」
「まぁ、近いな」
近いって……。それ以外になにが?
「あいつ、自殺したから」
……じさつ。
「ああ自殺? やっと気づいたの? 頭の中の声を止めるには自分が死ねばいいって」
「事件については一応秘匿されてる。ただ……まぁ、緘口令はあてにならねぇだろうな」
「まぁ、こんなに面白い事件を噂にしない方が驚きだし」
「面白いってお前な……」
ドアがノックされて、2人とも一瞬黙り込む。どうぞ、と言うと思った通りの人間が入ってきた。
「イアータ」
「セナ。訓練は私たちの勝ちだって?」
「ああ。お前の事故を除けば、全員かすり傷と気絶のみだ」
ニヤリと笑ってセナはそう宣言する。私が一番のケガ人なんだね。アーリアは唯一の死人だし。
「ねぇセナ、チームワークはちゃんと学べてた?」
「気づかれてたか、やっぱり。……ま、合格点だね。全員への説明もあったし、なるべく損害を減らそうとしてたし」
「ダメなとこは?」
「指揮官が2人とも奇襲部隊に回ったとこだね。死んだら大打撃だろ? お前らが強いって言っても、戦争じゃなにが起こるか分からないよ。よく学んだはずだ」
む……確かに。
「でもな、セナ。同じところにいねぇと上手く動けねぇだろ」
「それはあんたたちだけだよ。でもま、よくあの短時間で作戦を通して人を選べたね。指揮官の素質はあるんじゃない?」
「人選は単純だよ? 私を見て動揺したかしなかったか。しない人って、強い人が多いしね」
「それにイアに動揺してたら足手まといだろ」
「……便利だね、こういうときに。実戦でも使えるか? 敵相手に攪乱して……」
セナが私を使って作戦を……。ちょっと、私死にそうなの嫌だからね? リィを見ると、少し口角を上げていた。




