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ども。異世界で店オープンしました!  作者: アウズ
第2章:日常からの一変
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8.初めての出会い

やっとの思いで地上?まで降りてきたレノアを待っていたのは、上から見ていただけでは分からなかった、圧倒的な賑わいと場違い感、そして、周囲からの奇異の視線だった。


いくらここの人と容姿は同じでも、服装から(かも)し出される違いに、多くの人が疑問を寄せているみたいだ。


この世界に居る人の服装は、麻で作られた上下に、見た目は縄文時代の靴がそのまま革で作られているという様な靴というのが殆どだった。


他と言えば、稀に、ハンターの様な装備に身を包み、それぞれの武器を背負い、手に持っている。という集団を幾つか目撃した。


(ここはほんとに日本、なのかな・・・?)


それが大きな疑問であり、答え次第では笑えなくなる程の命題だった。

しかし、それを考えるよりも、今は泊まれる宿を探すべきだ。


凄い数の視線を避けながら、街の中を歩く。道の両端には、祭りの様に露店が並び、果物や野菜、陶器や小物なんかも売っている。

店員の人が大きな声で呼び込みをしているのでとても賑やかで明るい雰囲気だ。


その呼び込みの声を聴いて居ると、1つ発見があった。

なんと、言語が日本語だったのだ。

これは凄く助かる事だが、それと同時に様々な疑問が募る事でもあった。


と、色々考えて居ると、宿屋っぽい雰囲気の建物を見つけた。4階建てで、看板が掛けられている。するとその看板には、日本語では無い文字が刻まれていた。さっき聴いたのは日本語だった筈なのに何故なんだろう。

ここに来てからというもの、不可解な事が起こり過ぎて、頭から火が吹きそうだ。


レノアは迷ったが、取り敢えず中に入ってみる事にする。


中に入ると、すぐ目の前に受け付けの様な空間が現れた。一部屋程の広さで、装飾の(たぐ)いは全く無く、質素という表現が合う民宿の様な雰囲気だ。


そしてその受け付けの真ん中には、スキンヘッドでがっしりとした体躯の男の人が腕を組んで仁王立ちしていた。


(なんかオーラが・・・話しかけづらい・・・・・)


その強烈なオーラに気圧されながら、少ししか無い勇気を振り絞る。


「あ、あのー。」


「なんだ、にいちゃん」


男の人は微笑みながら優しく答えてくれた。


(あ、見た目によらず優しいみたいだ。・・・・・・・・なんか、すみません。)


「あ、えっとー、部屋ってまだ空いてますか?」


「おぉ!運がいいなぁ、にいちゃん!ちょうど1つだけ空いてるぜ」


「そ、そうですか。なら僕泊まります!」


「おう、いいぜ。ただ、食事は付かないがそれでもいいか?」


「は、はい!大丈夫です!お願いします!」


「分かった。これが鍵だ。部屋は二階の1番奥の部屋だからな」


「分かりました!あ、すみません。1つお聞きしてもいいいいですか?」


「ああ、なんだ?」


「あのー、ここの通貨って何ですか?」


「どうした、にいちゃん。服が珍しいと思ってたが、他所から来たのか?」


「ま、まぁそんなとこです・・・」


「そーか、いいか?ここの通貨はどこに行っても

『ペルカ』だ」


「ペルカ、ですか・・・」


(やっぱり『円』じゃないみたい・・・。分かっていたけど、少し期待してたんだよなぁ)


「どうした?いきなり暗い顔して」


「あ、いや・・・ちょっと僕、お金が無いんですよ・・・。ペルカは。」


「お金を持ってないだと!?」


「はい・・・・・」


(そりゃそうなるよね。この人にとっては、お金を持ってない客なんて、迷惑どころか追い返す対象なんだから・・・)


「でも、『ペルカは』ってどういう事なんだ?」


「あ、それはですね・・・これなら持ってるって事です」


と言って僕は、財布の中から500円玉を出してみせた。


「こ、これは・・・!?にいちゃん、これを商人に売れば、結構な金になると思うぜ」


「ほ、ほんとうですかっ!?」


「ああ、詳しい事は分からんが、ザッと500ペルカってことだな」


「お、おお・・・・・!」


正直、値打ちがあるのかどうか分からないレノアは、取り敢えず、大きく反応する。


「いい商人を紹介してやるから、そいつに商談を持ちかけてみるといい」


「は、はい!お願いします!」


「って言っても、ここら辺には詳しく無いだろ?どうせ、にいちゃんが泊まれば満室だから今日はもう閉めて、俺が案内してやるよ」


「あ、ありがとうございます!」


「おう、じゃあ、ちょっと待っててくれ」


「はい!」


そう言って、男の人は奥の方へ入っていった。


それにしても、なんて優しい人なんだろうか。やばい、涙が出て来そう・・・。


少し待っていると、さっきの男の人が受け付けの場所から出て来て、案内をしてくれた。お互いまだ名前を言っていないな、という話になり、軽く自己紹介をした。


この人は、カルトス・クローゼ。カルと呼んでくれとのこと。歳は32歳だそうだ。

レノアは、それなら僕もレノでいいです、と言って話を進め、この世界について色々と質問をした。


カルトスの話によると、まずここは、やはり地上では無く、地下らしい。そして、今頭上に見えている星の様な光は、鉱石と微生物が光っているもので、現実的には『空』とは言えないが、ここの人は空と言っているみたいだ。それと、ここにはモンスターと呼ばれる、怪物的存在が居て、それを倒す者も居るらしい。さっき見かけた団体がそれだろう。


他にも聞きたい事があったが、途中でカルトスの言っていた商人の家兼仕事場に着いたので、またの機会にする事にした。


中に入ると、色んな物が至る所に所狭しと置かれている。・・・・・なんだか雑だ。


その商人の名前はギルマ・モーリア。歳はカルと同じく32だそうだ。

しかし、カルとは対照に、細身でひょろりとしている。まさしく商人といった感じだ。


ギルマには、カルトスが話を通してくれた為、早速商談へと入る。


「で、売りたい物とはどんなものなのかな?」


一通り話し終えたところで、ギルマが僕の方へ来て、尋ねてきた。カルトスと同じく優しそうな人であった。


「は、はい。これです」


そう言ってレノアは、500円玉1枚と100円玉3枚を出した。

他にも持っていたが、一度に全部は勿体無い気がした為、今回は試しと言う事にしたのだ。


「ほほう、これは良いですねぇ」


ニヤっと笑うギルマ。『The商人』の顔だった。


「ど、どうでしょうか」


「そうですねぇ・・・・・大きい方は600。小さい方はそれぞれ150ずつで、450。合計1050ペルカはいかがでしょうか」


「はい!それでお願いします!」


「分かりました。それでは少々お待ちください」


ギルマさんはそう言って、奥に入っていった。


「にいちゃん、良かったじゃねえか。1050ペルカなんて、そうそう手に入らねえぞ」


「は、はい・・・」


まだお金の価値が分からないから、曖昧に返すしか出来なかった。


「お待たせしました。1050ペルカです」


「あ、ありがとうございます!」


「いえいえ、またの機会、楽しみにしています」


「はい!また来ます!」


「じゃあな、ギルマ。また来るよ」


「はい、2人ともお気をつけて」


店を出て、カルトスの宿屋へ戻るレノア。

道中で、お金の種類を聞いてみると、金貨が1000、銀貨が100、銅貨が10ペルカだそうだ。ちなみに10000ペルカは金貨が一回り大きくなるらしい。


「ところでカル、代金って一泊いくら?」


「20ペルカだ」


「えっ?20?なら50泊は余裕・・・」


「そうだ。だからなかなか手に入らねえって言ったじゃないか」


「う、うん。

けど、そこまでだとは思わなかったよ」


「そうか。まあいい。他に行くあてが無いなら1ヶ月ぐらいでもここに居ても構わねえぞ?」


「ほ、ほんと!? なら、それで!」


「おう!了解だぜ!じゃあ、契約成立な?」


「うん!」


と、手早く契約を完了させ、改めて鍵を貰い、部屋に入った。


部屋に入ると、玄関にちょっとした段差があった。どうやら、ここで靴を脱ぐという習慣は同じの様だ。


奥に行くと、ベットと机と椅子が簡素に置かれていた。トイレやシャワーの類いは無く、ほんとに寝るためだけの部屋のようだ。


と言っても、トイレは各階に1つ共同のものがあり、シャワーも近くに銭湯的な場所があるらしかった。


本当は、銭湯に行って疲れを取りたいレノアだったが、もうそんな体力は残されていなかったので、寝る事にする。


寝ながらふと窓の外を見ると、星もとい、鉱石&微生物が綺麗に輝いていた。




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