4.最後の日常
某月某日、今日も今日とて家にいた。
レノアは1日の殆どの時間を家で過ごしている。
レノアの年齢は16歳なので、不登校かと思われるかも知れないが、1日家に居るのは休日ぐらいで、平日にはきちんと学校に通っている。
(でも、まあ、結局のところ、一緒に遊ぶ友達が居ないってことなんだけどね・・・。)
それはともかく、レノアは徒歩3分程の近所にある高校に通っている。志望理由は、近いから。これだけだった。家の自室が1番好きで、なおかつ、落ち着く場所でもあるレノアにとっては、早く家に帰ることが出来るというのは、偏差値や進学率などを差し置いて、最も優先される条件だった。
しかし、そんな事を根も葉もなく面接官に言えるはずも無く、色々な言葉を取り繕って面接に挑んだ。ただ、面接の時の返答には決して嘘は付いていなかった。レノアは嘘が嫌いだった。自分が付くことも誰かにされる事も、誰かがされている事も。
そういう訳でレノアは、嘘を付かない範囲で返答したのだった。
しかし、それに関しては確信が無かった。レノアの面接の時の記憶がとても曖昧だったのだ。
テンパり過ぎたのか、記憶が殆ど無く、あるのは、控え室で読書をしていた時に、日本政府の役人らしき方達がこの学校に赴いていたという事だけだった。
結果、受かったので良かったが、何故役人が学校赴いていたかは謎に包まれたままだ。
そんなレノアは今、家にいる。そして彼の目線の先には、パソコンの画面とその中に映っている、バーチャルの世界で剣を振るう冒険者の姿があった。
そう、神崎レノアはいわゆるゲーマーだ。
それも、自他共に認める、生粋の。
まだ上には上がいるものだが、取り敢えず、普通の人よりはゲームに勤しんでいるつもりでいた。
そして、最近ハマっているのが、
この「ギガンティア・ファンタジー」。
このゲームに出会ったのは、1週間程の前の話で、久し振りに家族の買い物に付き合うついでにゲームショップに立ち寄った時だった。
フラフラと色々なゲームが並べられた商品棚を見ていると、あるゲームのパッケージを見た刹那に、天から神々しい一筋の光が降りてきてそのゲームを照らしている様に見えた。
そのゲームこそが「ギガンティア・ファンタジー」だったという事だ。
実際、このゲームはレノアの好みと全てが合致していた。キャラクターデザインやBGM、技の名前さえも。ここまで合っているのなら、あの光は本物だったと思っている。
この出会いがあってからというもの、ゲームを買うとなればあのショップに行っている。明日も1ヶ月振りに行くつもりだ。
(次はどんなゲームに出会えるかなぁ〜)
と、思っていると、顔に出ていたのか、家族から凄い不思議そうな目で見られたけど、あまり気にしていない。だって、また何かが起こる気がするから。明日が楽しみで仕方無いから。
こうして、今日という1日が過ぎ、また明日がやってくる。