12.初登校!
今日は、養成学校に行く日だ。
ゲーマーの僕に言わせれば、ハンター用の学校があるってだけでも夢の様なのに、あまつさえそこに通い、自分がハンターになるなんて、もう死んでも良いくらいだ。
いや、まだ学校に行って無いし、厳密にはハンターにもなって無いから、死ぬのは嫌だ。
(どうか死ぬなら死ぬで今日じゃありませんように・・・!)
「・・・何やってるの?」
宿屋の床に正座して祈っている僕を見て、アリスが若干引きつつ尋ねる。
側にはカルも居たが、また何かやってるな、と、慣れた様子だった。
「え、いや、何って、見ての通り、死な無いようにお祈りを・・・」
「見ただけで分からないわよ!というか、何初日から不吉な事考えてるのよ!?」
「だって、今日は絶対に学校行きたいんだもん!」
「じゃあせめて、『学校に行けますように』ぐらいにしたら?」
「た、確かに・・じゃあ、改めてもう一回」
「ああもう!そんなの良いから、もう行くよ!」
もう一度お祈りをやり直そうとする僕を見てアリスは、半分呆れ、半分怒った様子で外に出て行った。
「あ、うん・・ってえぇっ!待ってよ〜!」
しかもダッシュで・・・・・。
「はぁはぁ、うぅ〜」
「普段運動して無いでしょ、それ」
「あはははは・・・・・」
現在地は、宿屋から200m程離れた、商店街ぼど真ん中だ。
アリスは冗談半分で走って宿屋を出ると、すぐに付いてくる気配があったので、案外やるじゃん、と思い走っていた。すると、その直後気配が消えた。何者かに襲われたのかと心配して戻って来たアリスは、その姿を見て呆れていた。
一方僕は膝に手をつき、俯いてはぁはぁと息を切らしていた・・・。
「さぁ行くよ!学校までの道のりは長いんだから、早くしないと遅れちゃう!」
「う、うん。分かったけど、も、もう少し。もう少しだけ待って・・・」
「・・・し、仕方ないわねぇ」
どうやら、アリスもカルと同じくお人好しの様だった。蛙の子は蛙だ。
ようやく学校に着いた僕らは、取り敢えず校長先生に挨拶をしに行った。
校長と聞くと、優しそうなと言うか、やんわりと言うか、みたいな人を想像してたけど、実際はイカついマッチョだった。
話を聞くと、今でも現役のハンターで、校長は依頼の一環だそうだ。何と適当な校長の決まり方なんだろうか・・・。
その後、校長への挨拶を終えた僕たちは、この学校唯一の教室に行った。
この養成学校は、通う人数が少ないので規模が小さく、校舎は平屋で、グラウンドもあるが、一周200mかどうかと言う程だった。
『ざわざわざわ・・・』
教室に入ると、容赦無い視線が突き刺さった。
ここはいつでも誰でも来て良い場所だが、ハンター志望の人などほとんど居ないので、教室に居るメンバーは毎日変動はするが、その顔ぶれは変わらないらしい。
そのため、新しい顔である僕を見るなり、どの生徒もひそひそと会話を始める。ある者はこちらを見て笑い、ある者はそれを可哀想だと止め、またある者は知らんぷりをしている。
・・・心に傷が付く対応だ。
ここに来てから、優しい人にしか会っていなかったので、余計にこの雰囲気に慣れなかった。
「みんな、彼はレノア。私達の新しい仲間よ!ほら、レノも何か言って」
僕の背中を叩き、無理やり一歩前に出させるアリス。
・・・結構痛い。
「え、えっと・・初めまして、僕はレノアと言います。ま、まだこの街に慣れていないので、何か迷惑をかけてしまうかも知れませんが、ど、どうぞよろしくお願いします」
『パチパチパチ』
一応拍手をする生徒達。本来ならば歓迎の拍手なのだろうが、今回は違った。ただの義理だった。
何故なら、レノアが余りにもひ弱に見えたからだった。ハンターという仕事は、基本的に力仕事が多い。危険なモンスターを倒し、それを持ち帰える。その途中には野営もするし、体力が必要だ。勿論、魔法師としてチームに加わり活躍する人も居るが、レノアにはその才能が見えなかった。
そして何より、モンスターに臆する事無く戦いに挑む勇気が微塵も感じられなかったのだ。
そのため彼等は、レノアがすぐにこの学校を去るだろうと思っていた。しかし、仲間は仲間だという事で拍手をしたのだった。
ただ、その様に思っていたのは全員では無く、数人の生徒は普通に歓迎してくれた。
「よろしくレノア!あたしはシーナ・テレン」
まず声を掛けてくれたのは、シーナだった。
明るい性格でみんなにも慕われている、クラスの人気者だった。
背はアリスと同じくぐらいだが、口調や少し癖のある躑躅色の髪を肩まで下ろしている格好から、ギャルといった風格だった。ギャルと言ってもただの比喩で、それっぽいというだけだった。言わばギャル風だ。
「私はシルフィ・テロリアです!よろしくですレノア!」
次に声を掛けてくれたのは、シルフィだった。
この子はアリス達と違い、背が低く童顔だったので、年齢を聞いてみると、14歳と言っていた。やはり歳下だった。しかし、彼女には、アリス達が持っていないものを持っていた。てくてくと歩き、ぴょんと小ジャンプしてお辞儀するその動作1つ1つの度に、大きな双丘が揺れた。
そしてその度に男子は熱い視線で、女子は嫉妬の視線でこちらを、いや彼女を見ていた。当の本人は気付いていない様子だったが。
女子だけでは無く、男子の中にも声を掛けてくれた生徒はいた。
「よっ!俺はエーデン・サージェント!よろしく!」
そう言って屈託の無い笑顔と共に手を差し出してくれたのは、エーデンだった。
シーナのピンクっぽい色とは違う、真っ赤な髪を短く切っている。爽やかショートと言うのが適しているだろうか。背も僕より高く、全体的に男前だ。性格も明るく社交的で、笑顔の似合う、爽やかイケメンだった。
「俺はルカ・ウォレス・グレイ!よろしくね、レノア君!」
声を掛けくれた最後の1人はルカだった。
レノアより少し低くい背は彼のコンプレックスらしく、ぐらいになりのだと言う。ただ、レノアから言わせて貰えば、彼の透き通る様な銀髪には、背の低さなど関係無しに万人が惹きつけられると思う。その髪は彼の優しい性格故なのだろうかと思う程であった。
ただ、その言葉使いが一人称の『俺』と合わず、ちょっとした違和感があった。
1人1人に返事を返し、残りはアリスに説明を受けていると、先生が入って来た。
みんなが一斉に座りだしたのでそれに倣う。どうやら、チャイムの類いは無いらしい。
「はい。それでは今日の授業は終わり!気を付けて帰れよ!」
「「「は〜い」」」「「「うーっす」」」
男女それぞれ違う返事をして教室を去る。
宿に帰ろうとしたら、アリスは次の休みまでは寮で暮らすと言った。そんなの僕には関係無いと思っていたが、そんな事は無かった。宿までの道を知らないのだ。だからアリスが居なければ、帰る事が出来ない。
「レノ!俺の部屋に来るか?ルカも一緒だぞ?」
どうしようかと悩んでいると、が誘ってくれた。優しいやつだ。
「ほんと!?ありがと!」
「おう!こっちの部屋だぜ」
アリスと別れ、エーデンについて行く。
寮は学校の敷地外にあり、男女の寮も別だった。食堂やお風呂の設備は無く、殆どが生徒に丸投げだった。寮と言っても、寝るためだけの様だった。
寮も平屋建てで、何室かに区切られていた。その中の1つに入る。
「おかえりーってあれ?どうしたの?レノアまで一緒に」
「泊まる部屋が無くて困ってたから俺が連れて来たんだ」
「そうなんだね。じゃあレノアもおかえり!」
「た、ただいま・・・」
2人の心にの広さに敬服する。
「じゃ、レノはここで寝ろよ」
「う、うん。ありがと」
「どした?疲れたのか?」
ちょっとした事でも気付いてくれるエーデン。
「うん。ちょっと眠いかも・・・」
「じゃあもう寝る?」
「そうだな、俺ももう疲れたぜ」
「じゃあ灯消すね」
ルカがろうそくの火を消すと同時に、部屋が暗闇に包まれる。
今日はずっと教室で授業を受けていた。てっきりハンターの学校だから戦闘訓練をするのかと思っていたが、そればかりでは無いらしい。
ただ、今日は本当に疲れた。
隣では寝息が聞こえる。もう寝たみたいだ。
「・・・おやすみ」
1人そう言って眠るレノアだった・・・。
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