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ども。異世界で店オープンしました!  作者: アウズ
第3章:異世界での生活
10/34

10.実験開始。

今日は大事な実験の日だ。


昨日も言ったけど、この世界の1日が何時間単位で1日になっているのかが分からない。24時間で1日ならいいけど、もっと時間が増えてたり、減ってたりしていたら、ここでの生活が苦しくなってしまう。


そこで僕は、ケータイのストップウォッチ機能を使って、この世界の1日の時間を計る事にした。それが今日のこの実験だ。


レノアは先ほどからずっと、時計と睨めっこをしているた。彼の体感時間では10分ぐらいだと思われる。


もうそろそろ針が動いてくれなければ、流石に集中力が切れる頃だ。

今の時刻は、2-9時。つまり、8時42分ぐらいだ。

この世界の時計の不便な所は、最短でも18分間は針が動かない事だった。まさに今、レノアもそれに悩まされている。


朝に起きて時計を見ると、中途半端な時間だったので、一旦下に下りて朝食を済ませて、また戻ってきた。

ちなみに、今日の朝食もあの女の子の店だった。


(け、決してあの子に会うためじゃないよ!?た、単純にあの店の料理が美味しかっただけで.・・・。

あ、でも、あの子はもちろん可愛いけどね!)


そんな事はさておき、買ってそのまま外で食べて帰って来ると、丁度2-9時だったから、3-0時からストップウォッチをスタートさせる事にした、という話だ。

でも.....


(遅い!針が全然動かない!)


もうずっと時計を見ているが本当に全く動かなかった。まるで、時が止まったかの様な錯覚に陥る。運悪く、2-9時になったばかりに帰って来たのだろう。


(でも、もう10分は過ぎたはず。もう少しの辛抱だ!)


そして、待つ事数分.....


『カチッ!』


(今だっ!)


結局、あれから2分程かかったため、集中力が切れて、危うく見逃すところだったが、何とかほぼ同時に開始する事が出来た。


「おっと」


緊張に糸が切れ、少し目眩がした。

まあ無理もない、と自分でも思う。


取り敢えず、これで実験は開始した。後は、明日に結果を確認すればいいだけだ。






残りの時間はこの町の散策にあてた。


カルによると、この町は王都に近い事もあり、この世界でも大きい方なのだと言う。

ざっくり言うと、3㎞×3㎞の正方形に近いという事だった。確かに大きい。


町が大きいのは、それだけ繁栄してるって事だからいいと思うが、一つ困る事が、この世界には自動車や電車といった類いの乗り物が無いという事だった。自転車さえも無いらしい・・・。

という事は、移動手段が自然と歩きになる。


体力が無いレノアにとっては地獄だった。馬車もあるらしいが、お金がかかるという事を考慮すると、あまり頻繁に使う事は出来ない。


という事で結局、今日は1日中歩いて散策という事になった。

でも、今では歩きにして良かったと思っている。

それぞれの店の接客の声や小さな路地で追いかけっこをしている子供たち、辺りを漂う美味しそうな匂いを馬車に乗っていたら、すぐに通り過ぎてしまっていたのだから。




「そこのにいちゃん!どうだい、少し寄ってみねーか?今なら新鮮だぞ?」


「あら、ぼくぅ~。これ似合うんじゃなぁ~い?」


「す、すみません。これどうですか?」


たまに店の前を歩いていると声をかけられ、誘われた。

断るのが苦手なレノアは、声をかけられる度に立ち止まっていた。カルトスと大差無いお人好しである。


どの店もそれぞれの個性に溢れ、見ているだけでも楽しかった。この体験も、馬車に乗っていたら得られなかっただろう。






『グゥ〜』


歩いていると、お腹が鳴った。

そう言えば、まだ昼は食べてなかった事に気付き、辺りに飲食店が無いか探してみると、少し先に煙が見えたので、そこに向かう。


そこには、美味しそうな焼肉が売られていた。屋台形式で。


(よし、あれにしよう)


今日の昼食は焼肉(仮)に決定。


買ってみると、肉だけでは無く、お米も一緒にどうか、と聞かれた。

ここに来てから全然食べていなので、お米も頼む。


(それにしても安いなぁ)


これだけ買っても10ペルカに届かない。

まあ、ここの人にとっては高いのかもしれないが、レノアにはまだペルカの価値が分からないので、答えが出ない。


お金の価値についてカルにまた聞こうか、と考えていると、焼肉&お米を手渡された。あの女の子の店よりも断然早い。良く見ると、調理している人が5人いたので、早くなるのも頷けた。

ここに居たら、他の人の邪魔になるので、店の前から離れる。


歩きながら食べようかと思ったレノアだが、周りには、立ちながら食べる人は居るものの、歩きながら食べている人は居なかった。という事で、マナー良く、座って食べる。

昨日の様なベンチが無かったため、道の脇にそのまま座った。


手に持ったホカホカの料理を眺める。

見た目から匂いまで本当に美味しそうだった。


『ゴクリ・・・』


美味しそうな料理を前に溢れ出す唾を飲み込み、代わりに焼肉とお米を一緒にして口に入れる。


(おいしい!)


ジューシーでスパイシーな肉に、ほんのりと甘い野菜。そして、みずみずしくて甘いお米。それぞれがミックスされ、肉の旨味と野菜・米の甘さをより一層引き立てている。


(ここの料理、全部美味しいなぁ)


それは、今まで運が良かっただけなのか、この世界にゲテモノ料理が無いからなのかは分からないが、不味い物を食べるよりは断然良かった。






食べ終わってまた歩き始めたレノアは、ある場所に向かっていた。

それは、この世界に来た時に通った洞窟だ。


レノアだって馬鹿では無かった。元来た道を帰れば、またあの路地に戻れるかもしれない事ぐらいは考える。


という事で、町はずれまで歩き、洞窟の入り口があった場所へ来て見ると・・・そこには無慈悲な現実があった。


「・・・・・ない・・・・なんで?」


ここにあった筈の入り口は、またしても壁と同化し、消えていた。

入り口は、町から少し離れた崖の途中にぽっかりと口を開けていたのだが、今ではその面影すら無かった。あの長い階段さえも・・・。


もう神様のイタズラだとしか思えなかった。

こんな事が出来るのは神ぐらいだ。人には到底真似(まね)出来ない、神業だ。



この状況でも、僕は数分経てば落ち着きを取り戻せた。もうなんか慣れたのだ、この超展開に。

そして、冷静になった僕は、取り敢えず帰り方が分かるまでは、この世界に住む事にした。

もともと、ここに来たついでにちょっと旅行気分でも味わおうとしてたから、それが長引くと思えばいい。

ただ、ゲームが出来ないのが残念だけど、この世界もそれなりに楽しいし、新しい事だらけで飽きない。それに、学校に行かなくてもいいし。



という事で、僕こと神崎レノアは、この世界に住む事にしました!









帰りの道中、この2日間お風呂に全く入っていない事を思い出し、銭湯に行く事にした。


カルから教えてもらった道を辿って行くと、和風の建物が見えて来た。

黒い瓦の屋根には煙突があり、白い煙が出て来ている。


多分ここで合っているだろうと踏んだレノアは恐る恐る中へ入る。外には看板が掛けられていたが、文字が読めなければ意味が無い。


横開きの扉を開けた先に待っていたのは、綺麗な女の人だった。獣耳付きの。

着物に身を包み、笑っているその姿は、可愛いと言うより、美しいという言葉の方が合っていた。

そして、1番目を惹くのが、やはり獣耳。彼女の耳は狐のそれだった。そのお蔭で彼女の妖艶さが増している様に見える。



「ようこそおいでくだはりました。靴は脱いで、そちらの下駄箱に入れてくれはります?」


「は、はい・・・」

(おお〜!方言がここにもあるんだ!何というか、この人には似合ってるな)


「おおきに。ほな、ごゆっくり」


お金を払い、暖簾(のれん)をくぐる。どうやら、あの人はあの場の担当らしい。


そしてその奥であるこのスペースは待合室兼くつろぎ場となっていた。

まだ夕方より少し早いので人が少ない。


早速入ろうとするが、ここで問題発生。

恐らく脱衣所だと思われる部屋に続く道が2つ並んであった。

日本なら、大体『男』が青で『女』が赤だが、目の前にある暖簾は同じ色だった。文字は書いているが、やはりレノアには読めない。


レノアは思い切って、運にかけてみる。ここに来てから、レノアは妙に決断力が付いていた。


そっと開け、中を覗くと・・・


そこには、下着姿の女の子の人が居た・・・。


(す、すみません!)


心の中で土下座しながら謝り、すぐさま隣へ入る。


(まさかとは思っていたけど、ほんとになるなんて・・・。まるでどこかのラノベの主人公みたいじゃん)


相手には気付かれ無かったものの、こんな展開が本当に起こるものなんだと知ったレノアだった。







その後は特に問題も無く宿に帰った。

久しぶりのお風呂は気持ち良くて、1日歩いた疲れも取れた。ごはんは帰る途中で済ませたので、もうする事は無かった。


ベットに横になると、いくらお風呂に入ったとはいえ、1日歩いた疲れはまだ残っているらしく、体が急に重くなる。


(もうこのまま寝よう)


今日は、閉じた瞼にあの下着姿の女の子が刻まれていた・・・・・。









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