戦闘技大会4
嵐のあとは暑い季節がやってくる。透き通った空の青と積み上がった雲が清々しい。通学の途中、メザロニアの時計搭を通りすぎると、見覚えのある栗色の髪の女の子が前をとぼとぼと歩いていた。その姿には無気力とは言わないが、何か憂いを帯びた空気を纏っていた。その少女はサティのクラスメイトのミランダだった。サティとアイが不純な交際をしていると勘違いしてから、ろくに口を利いていない。サティは弁明の機会を伺っていたが、アイが人間ではないなどと、言ったところで信じる訳もなく、それ以前に証明する機会すら得られない。話かけても無反応であり、まさにとりつく島もない状態だった。
今日も無駄だろうと思っていたが、後ろから声をかけていた。
「ミランダ、おはよう」
ミランダはサティに気が付いたようだったが、無言のまま足を早めた。サティも同じ速度で後ろを歩く。今日も駄目だったかと思っていながら、気まずい空気のまま学校へと向かった。
「あの、さ、別にサティが誰と付き合おうと勝手だし。私は、ただのクラスメイトで、」
意外なことに、沈黙を破ったのはミランダのほうだった。久しぶりに聞いたミランダの声はサティに向けて話すと言うよりは独り言のようであった。
「なぁ、かなり誤解があると思うんだ。ちゃんと話さないか?」
言葉をつまらせたミランダにすかさず横に並んだサティは話し合いの場をもうけるよう提案した。