戦闘技大会3
無数の小型ゴーレムを撃退したのち、サティたちは家に戻っていた。祖父が残した鍵を使って地下室へ入るためだ。
サティの家を取り囲んでいた騎士団はどういう訳か撤退しており、難なく家に入る事ができた。家のなかは荒らされており、普段隠されている地下に続く階段があらわになっていた。
サティは鍵を握りしめ階段の方へ向かう。そこで急に膝をついてしゃがみ込んだ。エーテルを使いすぎた反動で体が言うことをきかない。
外は日が落ち暗くなっていた。
「少し休んだらどうだ?地下室は逃げやしないだろう?」
アイがソファーへと促す。
「そうだぞサティ君。僕の残りのエーテルで回復してあげるから、そこに横になりなよ」
サティはピアーデの言うままに、無言でソファーに横たわった。軽く目を閉じるとそのまま眠りに落ちて行った。
どのくらい眠っていたのかわからないほど深く眠っていた。アイの話では数分だったと言う。
僅かに眠っているあいだにミランダとミリアが見舞いに来ていたらしいが、要らない誤解をして帰ってしまったようだ。その後、ミランダとは数日話をしてもらえなかった。反面ミリアには質問責めに合い苦労して誤解を解いた。
眠りから覚めたサティは鍵を握りしめ、地下室へと階段を降りた。ランプの光が狭い階段を照らす。後ろからピアーデとアイが順に降りてきた。誰も一言も発しない。
一番下まで降りきる。目の前には重そうな鉄の扉がサティたちの前にはだかった。
「よっ。久しぶり~」
急にピアーデが扉に向かって話かけた。サティは怪訝な表情をピアーデに向けるが、今はそれどころではなく、やっと扉を開く事ができるのだ。
サティは握りしめた鍵をゆっくりと鍵穴に差し込んだ。深く息を吸い込むと鍵に力を込めた。
ガチッと金属の音がする。しかし、鍵は回らなかった。少し力を強めるがびくともしなかった。
「バカな?この鍵は違うと言うのか?」
何度もガチガチと鍵を回そうとするが、鍵は穴に刺さったまま動かなかった。
「あのね~サティ君。鍵にエーテルを流し込まないと開かないんだって。」
ピアーデの顔がランプの光に照らされている。
「エーテルを?そうか。よし」
サティは指先に意識を集中させた。指先が淡い光を放つ。そのまま鍵をゆっくり右へ回す。しかし、鍵は全く動かなかった。
「駄目じゃないか!鍵が開かない」
「サティ君。手にエーテルを集中させるんじゃなくて鍵にエーテルを流すんだよ。」
その後、何度も何度も鍵にエーテルを流そうとしたが、光るのは指先までで鍵にエーテルを流すことは出来なかった。
「サティ君。あの戦いを思い出して。君は僕の剣にちゃんとエーテルを流し込んでいたよ。」
「そんなこと言ったってなぁ。」
結局、2ヶ月たった今でも鍵を開けることは出来ていない。自分の体以外にエーテルを流す方法を身に付けなければ扉は開かないということらしい。