戦闘技大会2
昨夜の嵐とはうってかわり、メザロニアは晴天の朝を迎えた。
昨夜は戦闘技大会に関する質問攻めを遅くまで受けていたので寝不足であった。部屋が湿気に覆われ寝心地も悪い。ふと目を開けるとアイの白い顔がサティの目の前に現れた。
「おはよう。それで昨日の続きなんだけど。」
「おわあああ!何で俺の部屋にいるんだよ!」
「サティが『続きは明日』と言った」
アイは悪びれる様子もなく真顔で答える。
「今日学校でルールブックもらって来てやるから。」
「そうか。よろしく頼む」
そう言ってアイは部屋を出ていった。
もしかして、アイは一晩中ベッドの横で自分が起きるのを待っていたのだろうかと想像した。普通の人間ではないとはいえ、曲がりにも女性の姿をしたアイに寝顔を覗かれていたと言うのは、非常に複雑な気分だった。
サティは朝食を済ませ、洗い物をしていると、ピアーデが居ないことに気が付いた。いつもなら鬱陶しいくらいに絡んで来るのだか、今日は朝から姿が見えない。
「なぁ、アイ。ピアーデを見なかったか?」
アイはソファーで何やら読書をしている。よく見れば家庭料理の本である。
「見ていない。だけど、近くにはいるみたい」
アイは料理本から目をそらさない。
「そうか。また何かに擬態してるのか?」
ピアーデは自在に姿を変化させられる。何の為に隠れているのか、考えても無駄のような気がした。
学校に行く時間だ。サティはカバンに手をかける。すると、どういう訳かカバンが岩のように重いのである。
サティはため息とともにカバンを開けた。
「ピアーデ。そこで何をしている。」
「え?あ?その…。あれ~?」
カバンの中で赤い瞳がキョロキョロしていた。いつの間にかピアーデがカバンの中に潜り込んでいたのだ。明らかに狼狽している。
「ばれないとでも思ったのか?また学校に行こうとしただろ。」
怒りに満ちたサティにおののき、ピアーデはするするとカバンから出できた。
「だってさ~。僕も学校行きたいんだよ~。お願いだよ~。サティく~ん。僕を学校に連れていってよ~」
ピアーデがふわふわと浮き上がり、サティの周りをぐるぐると飛び回った。
「駄目だ。お前の存在がばれたら大変なことになる。あの得体の知れないゴーレムの群れについてだってほとんど分かっていない。地下室に入れれば何か分かるんだろうけどな」
あの無数のゴーレムたちと戦った後、祖父が残した書庫の鍵を手に入れた。
それは2ヶ月ほど前の事だ。