戦闘技大会 プロローグ
ゴーレムキングダム続編です
薄暗い部屋。部屋と言うには広々としている。広間と言うほうが適当だろう。その広間の中央に大きなベッドが鎮座している。鎧を着た男がベッドの横で直立して動かない。ベッドの上には裸の男が寝そべっていた。一枚の布を巻いただけで無防備な様子である。美しい金色の長い髪がベッドの上に波打っていた。
金髪の男は2、3度寝返りをうつと気だるそうに体を起こした。
ボリボリと頭をかきむしると、傍らの鎧の男に声をかけた。
「お前、誰?」
鎧の男はゆっくりと頭を下げた。
「おはようございます。陛下。私は近衛兵のバスティアンと申します。陛下の身の回りのお世話をさせていただいております。」
バスティアンは落ち着いた様子で、自身が陛下と呼ぶ男の前にひれ伏した。
「あっそ。俺はどんくらい寝てた?」
「788年の12月と聞いておりますので、3年と半年ほどになります。」
「ふーん。まっ、いいや。城の若い女を数人寄越して。そいつらを抱いたらまた寝るわ」
「ははっ!直ちにご用意致します!」
鎧の男はガシャガシャと音をたてながら部屋を出ていった。
「3年半か…ルミシアの新作。出てるかな…後であいつに買ってこさせよっと」
金髪の男はベッドに横たわると手を頭の後ろで組み、天井を眺めた。王国の首都圏で人気の小説家ルミシアの小説を男はこよなく愛していた。
しばらくして、部屋の扉をノックする音が聞こえた。
「入れ」
金髪の男が短く言葉を発すると3人の若い女が入って来た。3人ともきらびやかな衣装に身を包み、男の前にひれ伏した。
「良く来たね子猫ちゃんたち。さぁ、こっちへおいで。」
男に促されて3人はベッドに寄り添った。
女の一人が衣装の肩に指を滑らせ、あっという間に上半身をあらわにした。
「あぁ。なんて美しいんだ。」
男は女性の胸元を見て感嘆している。
「あー、でもね。まだちょっと君たちとお話がしたいんだ。3年も眠っていたからね。」
「大王様、どんなお話をご所望ですか?」
「そうだな。今世間ではどんなことが話題になっているかな?」
「それでしたら大王様、もうすぐ戦闘技大会が始まりますよ。今年は新しい武器が追加されたんですよ。確か、南の領土で使われていた…」
「双棍ですわ。大王様!」
上半身をあらわにした女の話を遮って活発そうな女が得意気に話かけた。
「双棍?どんな武器かな?」
「従来の棍の半分以下の長さの棒に持ち柄がついているんです。変幻自在な攻撃ができ、防御にも優れているんですのよ」
「それは面白そうだ。よし、戦闘技大会を見てから寝ることにしよう。おい!バスティアン!服を持ってきてくれ!」
この年、王国全土で戦闘技大会の予選会が行われることになる。しかし、それは王国を震撼させるほどの大事件へと発展する序幕となるのであった。