第九話 援軍
セン・ハザート 主人公
スピング・キャルズ センと同じ訓練兵 怪力
ラファエル・ゾール 同じく訓練兵で、話す前に間がある
キエス・クリスティーン 同じく訓練兵 俺達のリーダー
テネッセ・c・コンタクト 訓練兵 赤髪の亜人
窓が割れる。機体が揺れる。訓練兵たちは、ただ襲撃を、恐怖のまなざしで見つめるほかなかった。
状況を説明しよう。俺たちは、2か月の無人島生活を終えて、ヘリで基地に帰る予定だった。しかし、突如、三機のヘリのうち、先頭を飛んでいたヘリが攻撃を受けたのだ。幸いにも墜落はしなかったが、当然ながら被害は大きかった。そして、俺達が乗っているヘリが2番目だったので、衝撃を受けた。無線で聞こえた情報によると、近海に、国籍不明の艦隊がいて、その中の1隻が撃ったミサイルだそうだ。当然ながら、輸送ヘリ三機でかなうような敵(攻撃してきたんだからそう呼ばせてもらう)でないため、現在逃走中というわけだ。
「…クソッ、どうしてこうなる。」
おお、ラファエルって怒るんだ。怒ってるように見えないっていうか、表情が変わらない。
というか、やっぱすげーな軍人って。こんなときでも冷静だ。というか、すごい殺気だ。なんか、蛇に睨まれた蛙みたいに、ちっとも動けない。
ガクン
「うおっと」
戦艦の弾の衝撃波か。被弾してないのに、ここまでヘリが揺れるなんて…、酔いそうだ、うえぇ。
「発砲許可を!」
『許可は出ている。あんまり敵を挑発するなよ!』
「了解!発砲許可取得!総員、飛んでくる弾を撃ち落とせ!」
「お、俺たちかよ…」
ああ、何かあの時を思い出すなァ。あのときはあの二人が居たから良かったけど、今度はそうもいかない。そうこうしていると、何発ものミサイルが飛んできた。しかし、それらを魔法が使える連中が破壊していく。鼓膜を振動させる爆音は、戦闘は、甘ったるい気持では死ぬぞと警告しているように感じた。
撃ち落とすミサイルは、だんだん少なくなり、最後には飛んでこなくなった。同時に、『魔法使い』も限界を迎えていた。魔法を使えない俺たちは機銃を使っていたが、俺が言うのもなんか変だけど、みんな下手である。俺がやっても扱いは連帯用の機銃よりも、重くて狙いにくかった。
ーーーラファエルーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
センと同じヘリに乗っているのだが、ミサイル撃墜に魔法を使いすぎた。そして、動けなくなってしまった。魔法使いは、ほとんど座り込んで、肩で息をしていた。その時だった。一時的に止んでいた攻撃が、さっきよりも強力になって、三機のヘリを飲み込もうとしていた。その時だった。
「タイムアンカー!」
誰かが魔法を唱えたようだ。
タイムアンカー 時間を一時的に止める魔法。しかし、時間を止めるのは、魔法の中でもかなりの難易度なものである。魔法のランクは、E級、D級、C級、B級、A級、S級があり、さらに分けるときりがない。(S級が、かなりの上位)その中でも、A級とS級の間くらいの難易度間のだ。
誰だ、訓練兵で上級魔法をつかう馬鹿は。
ーーーセンーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
「タイムアンカー!」
誰かがヘリのエンジン音よりも大きな声で叫んだ。……ん?みんな固まった?試しに近くにいた男性を叩いてみた。やっぱり反応がない。あ、ミサイルは?!あわてて見ると、ミサイルも止まっていた。
「何が起きたんだ?」
しばらくすると、みんなが動き出し、ミサイルがすべて爆発した。その音は、一時的に俺達の聴覚を無にするほどだった。その後、音が聞こえるくらいに回復した時には、三機のヘリの周りには戦闘ヘリが飛んでいた。ヘリの装甲には、俺達の国であるアクラエル連邦の国旗と、ELESTRO軍の軍旗が描かれている。そこで俺は心の底から思った。これが、戦闘の緊張感か、と。
参加人数 500人(うちテキリカ島に行ったのは90人)
負傷者 230人
死亡者 70人
合格者 200人
合格者には、士官学校の入学届けが贈られる。
掲示板に張り出された紙には、上に書かれていることに加え、書かれていた。
「強い者しか生き残れない、というわけか」
「ああ、俺達は生き残ったんだな」
死傷者リストには知っている名前が無かったからか、実感がわかない。当然ながら、この場所以外でも大勢亡くなったりしたのだろう。
書かれていたとうり、俺達のところに士官学校の届けが来たので、あれこれ書いて提出した。
そして、俺は、軍事士官学校に入学したのだった。