第三話 作戦開始
地球では2015年、主人公の住む星では3045年。これだけの年の差があるにもかかわらず、いまだに地球と同じような感じなのは、ある理由があるからだ。それは、1番激化した戦争があったから。人々は黒組(次世代的軍事化派)と白組(軍廃棄派)とで分かれ、殺し、殺され、殺しあった。しかし何年たっても戦争は終わらなかった。ある日、ある魔術師は、そんな人々がこれ以上死ぬのを防ぐために壁を作った。そして、壊しても壊しても傷一つつかないように、また壊れてもすぐに直るように魔法をかけた。それは、世界を一周するようにそびえ立ち、強制的に戦争に終止符を打った。その戦争の間は、記録がまったくと言っていいほど残っていなかった。人々は、その記録のない1000年を『死神が血と生贄
を欲した期間。』と呼んだ。
俺達が侵入したのは、PCと中くらいの段ボールと戦闘用具が置いてある、狭い物置だった。幸いにも、人影は一切なく、もちろん気ずかれた様子は無かった。
「…ここが会議室とかじゃなくてよかったよー。」
ホッと息をつく糸目のニヤけた軍人は、レイス・ヴァーナード。語尾を伸ばすのが癖のようだ。
「俺は、高いところだけは好きになれん…。」
文句をブツブツ愚痴っている軍人は、ジェイ・ブラウド。高所恐怖症のようだ。顔と体がごついが、優しいときもある。
「飛び込んでハチの巣にされなくてよかった。」
同じくホッと息をつく青年は、主人公であるセン・ハザ―ト。普通の無職、いわゆるニートだった人間である。
「ん、パソコンがあるよー。点けてみるー?」
「注意しろよ。カメラがあって筒抜けなのは厄介だからな。」
「りょーかい。」「了解っす。」
PCのキーを押すとヴンと音が鳴り、、暗い画面にDANTORDYAと表示された。そして、メニュー画面が出る。
・コード♯ジ-450719 詳細
・コード♯ジ-450719 時間割
・『T’cll』ウイルス 資料と実験報告
・『T’cll』ウイルス 取り扱い説明書
「何だこれ。」
そう言って、1番上の・・『T’cll』ウイルス 資料と実験報告の部分をクリックした。カーソルの斜め上で、読み込み中だということを知らせる小さな五角形が、しばらくクルクルと回る。そしてファイルが開いた。
それは、衝撃的なものだった。
片手が黒い煙の者、片目が口から額まである者、身長が高く、触手のような手が8本生えている者など。
「う…。何だ…これ…。」
端っこに書いてある文は、こう書かれていた。
実験報告1 体力の無い種類は、内側から肉体を破壊します。
実験報告2 体力のある種類は、体に何かしらの反応が見られます。
実験報告3 人間で実験したところ、握力が9.8倍、移動速度が8.1倍、脳破壊率20%増加など。さまざまな反応が出ました。
「怖いねー、こりゃ。」
レイスさんがそう呟いた、その時だった。
「静かにしろ。足音が近ずいてくる。」
俺たちは、物陰に隠れた。そして、息をひそめる。
ガチャ
ドアのあく音がした。俺は、生まれたての小鹿のようにカタカタと震えていた。
まずいまずいまずいまずいまずいまずいまずい!落ち着け落ち着け…。そしてこっちくんな。
しかし、足音は、ドンドン近ずいてくる。
気がつくと、顔に何か付いていた。触ってみると、それは血だった。ハッと前を向くと、敵兵だと思われる男が倒れていて、背中にナイフが刺さっていた。
「よし、セン。こいつの防弾チョッキを着ろ。それとヘルメットもな。」
「了解。隊長。」
…武装中…
「よし、行くぞ。レイス、自分の判断で撃ってよし。セン、発砲しろというまで撃つな。これより作戦を開始する。」
「行ってきまーす。」
そうしてレイスさんは一人で、俺は、ジェイさんと共に行動することになった。