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11.誘拐


 今日は朝からとっても天気がよかった。

 おかあさんはいつもよりニコニコしていたし、おとうさんは、まあ……いつもどおり、かな。

 朝ごはんできたよーって起こしにいったら、もぞもぞと布団から起きだしてきて。

 どこかぼんやりした顔で「おはよ~」っていつもどおりの挨拶してくれた。


 それからは、いつもどおりの朝。

 なんだかご機嫌のおかあさんと、ちょっと眠そうなおとうさん。それに私と。


 コンコン。


「あいてるぞ」

「はい」


 あ、おにいちゃんだ。


「おはようございます」

「毎朝早いな、若いの。……そんなに王都の仕事は暇なのか?」

「暇ってほどじゃないんですが、とりあえず今は貴方のそばに居ろと上役に言われまして……」

「それって、さり気なく厄介払いされてるんじゃないか?」

「う~ん。……そうなんでしょうか」


 うーんって、難しそうな顔をしているおにいちゃんに、おかあさんから渡されたコーヒーを持って行って、渡してあげる。


「はい、おにいちゃん」

「あ、ありがとう。おかあさんのお手伝い?」

「うん」

「偉いね」


 えへへ~、おにいちゃんに、ほめられちゃった。


「……コイツはお前にベタ惚れだな」

「あまり良くない傾向かもしれません」

「そうは思わんがな~」

「いやー、若い子には若い子の方がいいと思いますけどねぇ……」

「そこまで力いっぱい否定しなくてもいいじゃないか。なあ?」

「いや、そんなムチャぶりしなくても……」


 よくわからないけど、おにいちゃんが困ってるみたいなんでうなづいておく。


「ほら」

「無理矢理じゃないですか……」


 そんなこんなで楽しい朝の時間が終わって。


「今日はちょっと遅くなるかもしれん」

「また山に狩りですか?」

「似たようなもんだな。

 ……聞いているかもしれんが、このあいだから、この辺りでオークの被害が出てるらしい」

「オーク?」

「妻が村に買い物にいったときに、村長(むらおさ)から頼まれたらしくてな。

 なんでも家畜の被害とか、放牧している牛に被害が出初めているらしい。

 ……まあ、害獣退治みたいなモンだよ」

「オークの群れを片手間に壊滅させられる人にとっては、クマと大差ないかもしれませんけどね」

「駆除自体は簡単なんだが……。巣を探すのがな」

「人手が必要そうですね。……手伝いましょうか?」

「ハナからお前が手伝うのは織り込み済みだ」


 ちょっと面倒そうなお話。

 これって昨日の夜ご飯のときにおとうさんが、おかあさんに手伝って欲しいって頼んでた話かな。

 だから、おかあさん、今日はご機嫌だったんだね。


「まあ、そういう訳で、今日は大事なお仕事を頼まなくちゃならん」

「えーと、お留守番?」

「そーだ。……できるな?」

「はーい!」


 おかあさんは、今日はおとうさんのお手伝いをするけど、良く分からないけど、そのことはおにいちゃんには秘密って言ってたから、村にお買い物にいくってことになってる。

 お昼過ぎにはおかあさんだけでも夜ご飯の準備で帰ってくるから、それまでお留守番しててね、って。昨日、たのまれたから。


「いってらっしゃーい!」


 おとうさんとおにいちゃんを、おかあさんと二人でいつみたいに見送って。

 二人がいなくなったら、今後はおかあさんがおとうさんみたいな格好の服に着替えて出ていった。


 私は、家の庭からでちゃだめよって言われてたから。

 柵で囲まれたお庭で、お花を摘んだりして遊んでいたの。

 そうしたらね、珍しくお客さんが来たの。

 お庭でお花を摘んで遊んでいると、柵の外から声をかけられた。


「こんにちわ」

「あ、こんにちわー」


 おもわず挨拶しちゃったけど、この綺麗なお姉さん、誰だろう。


「……えーと、お父さんは?」

「お仕事ー、おにいちゃんと一緒に山にいったの」

「そう」


 うーんって少しだけ悩んでる感じ。

 地面を見ていて、ちょっとだけこっちを見て。

 キョロキョロ周りを見渡しながら、お姉さんは聞いてくる。


「……お母さんは?」

「買い物っていってた。お昼までには戻るっていってたよー」

「そう。なら、今日は一人でお留守番なのね。偉いわね」

「えへへ、そーかな」


 なんだか優しそうな人。

 ニッコリ笑った顔がすっごく綺麗で優しそうなの。

 そういえば、この人、どっかで見たことがある気がする……。

 どこで見たんだろう。


「……おねえちゃんは?」

「私は、あなたのお父さんのお友達。忘れちゃった?」

「えーと……」


 誰だっけ?

 ……あ、そういえば。

 こんな綺麗な人が、おとうさんの知り合いにいた気がする。


「もしかして、僧侶さん?」

「ええ、そうよ。よく覚えていてくれたわね」

「えへへ。お姉さん優しかったから」

「そう」


 そんなお姉さんは、懐から一枚の手紙を取り出して。


「じゃあ、コレをお父さんに渡しておいてくれる?」

「あ、はーい」


 それを受け取りに近寄った私の顔に、なぜか手をかざして。


「ごめんね」


 なんだか急に眠くなってきて。

 膝からカクッと力が抜けて。

 私は、地面に倒れてしまっていた。


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