第1話:神を殺す右腕(4/4)――「福音の宣戦」
1. 天の亀裂
ヒカリが膝をついた直後、セクター24の擬似天空が、ノイズと共にどす黒く反転した。
上層の富裕層エリアにのみ許された「黄金の黄昏」が剥がれ落ち、剥き出しの鉄骨と、無数の演算回路が蠢く真実の空が露わになる。
「……何が起きているの? システムが……応答しない」
ヒカリのデバイスが赤く点滅し、警告音を発する。全セクターのナノマシンが、一斉に**「外部権限」**によって書き換えられていた。
2. 導師の降臨
空の割れ目から、巨大な黄金の幾何学模様が浮かび上がる。それは巨大なサーバー・コアが物理的に具現化したかのような、圧倒的な威圧感。
その中心に立つ男、クロムの声が、市民の脳内デバイスに直接「強制パケット」として叩き込まれた。
『親愛なる演算生命体よ。本日、世界は「正解」の最終段階へと移行する。
不確かな感情、無駄な試行錯誤、そして――九十九黎士という名の「バグ」。
それらすべてをデリートし、我々は完全なる「静寂の理」へ至るのだ』
「クロム……! まだそんなことを抜かしてやがるのか!」
神代が、震える拳で空を睨みつける。その横でレイジは、右腕の痣がかつてないほど激しく熱を帯びるのを感じていた。
3. 始まりの崩壊
クロムが指を鳴らした瞬間、セクター24を支える巨大な支柱の一本が、**「存在定義の消去」**によって文字通り砂のように崩れ去った。
地響きと共に街が傾ぎ、上層から「情報の塵」が雪のように降り注ぐ。
「ヒカリ、お前は学校へ戻れ。ここはもう、お遊びの『実習場』じゃねえ」
レイジは、茫然自失のヒカリの背中を無造作に押し、神代の方を向いた。
「先生。あんたが隠してる過去も、あの黄金の野郎の正体も、後でたっぷり聞かせてもらうぜ。……まずは、あのスカした空を殴り飛ばしてからだ」
4. 運命のロールアウト
崩壊する街を背景に、レイジは右腕を天に掲げる。
彼の頭上には、システムが算出した「絶望の数式」が並んでいたが、レイジが拳を握り込んだ瞬間、その数式は黒い霧によって塗りつぶされた。




