第6話:隔離病棟の亡霊(1/4)――「再調整の聖域」
1. 敗者の行方
黒瀬リアとの死闘から数時間。勝利の余韻はなく、学園内には不気味な静寂が漂っていた。敗北したリア、風間、九条の3名は、直ちに「医療班」を自称する黒服の集団によって連れ去られ、一般生徒の接触が禁じられた。
「あいつらは『再調整』に行かされた。システムの正解から外れた個体は、中枢にある**『特異点隔離病棟』**でデータを書き換えられる」
神代は地下の廃材置き場で、レイジの灰色の右腕に抑制剤を打ち込みながら告げた。
「書き換えられるって……別の人間になっちまうってことか?」
「ああ。敗北の記憶を消し、よりシステムに従順な『部品』として再定義される。……手遅れになる前に、あいつらを奪い返すぞ」
2. 深部への潜入
レイジと神代、そして情報支援を担当するロジの3人は、学園のメインサーバー直下に位置する地下施設への侵入を試みる。
ロジが旧世代の物理回線をジャックし、監視カメラに「静止画のループ」を流し込む。
「今のうちに! 第3ダクトから深層階へ。そこから先は、ナノマシンの密度が濃すぎて僕のハッキングも届かない!」
3. 亡霊の守護者
隔離病棟の入り口、白磁の壁に囲まれた通路で、彼らの前に一人の男が立ちはだかる。
白衣を纏い、感情の欠落した瞳をした男。かつて十傑の一員でありながら、過度な再調整によって個を失った「亡霊」、序列外・零。
「……九十九黎士。君の右腕のデータは、既に検体として登録されている。ここで君を解体し、オラクル・ゼロの肥やしとするのが、現在の最適解だ」
零が手をかざすと、通路の壁面から無数の「医療用ナノメス」が形成される。それは九条の幻覚でも、リアの熱でもない。物理的な物質を自在に再構築する、最もシンプルで回避困難な権限攻撃だった。
4. 灰色の共鳴
レイジの右腕が、抑制剤を突き破って激しく脈動する。
「あいつらを『部品』なんて呼ばせねえ。……俺が壊したのは、あいつらのプライドだ。あんたらのシステムじゃねえ!」
レイジの灰色の霧が、迫り来るナノメスの群れを「未定義の塵」へと変えていく。しかし、零の背後の扉からは、さらに禍々しい演算圧が漏れ出していた。




