第5話:紅蓮の女王(3/4)――「太陽の心臓、暴走」
1. ゼロ・ロジックの衝撃
神代から託された『絶対零度の論理』が、レイジの右腕を通じてリアの熱圏を物理的に凍結させる。白銀の霜が紅蓮の炎を侵食し、演習場に奇妙な静寂が訪れた。
「……私の『正解』が、凍りついている……?」
リアの瞳に、初めて狼狽の色が浮かぶ。彼女にとって炎は自己そのもの。それが否定されることは、存在理由の消失に等しかった。
2. リミッター解除:超臨界点
屈辱がリアの演算を狂わせる。彼女は守勢に回るどころか、脳内デバイスの全リミッターを強制解除した。
「不純物が……。私を、ただの火種だと思わないで!」
リアの背後に、九つの巨大な光輪が展開される。
第V階梯・極点演算:『十陽巡礼』。
それは演習場内の全ナノマシンを「燃料」として使い果たし、局所的な核融合反応を維持する暴挙。リアの体温は数万度を超え、彼女の周囲の空間は熱歪みで原型を留めない。
3. 太陽の心臓
「ダメだ、レイジ! リアの意識がシステムに取り込まれてる!」
ロジの叫びが響く。高すぎる出力にリアの精神が耐えきれず、彼女自身がオラクル・システムの一部――**「熱源供給プラグ」**へと変質し始めていた。
今のリアは、自らの意志で戦っているのではない。暴走するエネルギーを排出するための「排気口」と化していた。このままでは演習場はおろか、セクター全体がプラズマの爆発に巻き込まれる。
4. 命の温度
「正解、正解って……。そんなに熱くなりすぎて、自分の心まで焼いちまってんじゃねえか!」
レイジは白銀と黒が混ざり合う右腕を限界まで引き絞る。
ゼロ・ロジックによる冷却と、右腕本来の「捕食」。二つの相反する力がレイジの体内で衝突し、激痛が走る。だが、彼は止まらない。
レイジは、白く光る「太陽の心臓」のド真ん中へ向かって、拳を突き出した。




