第5話:紅蓮の女王(1/4)――「絶対温度の宣戦布告」
1. 侵食される右腕
風間との死闘を終えたレイジの右腕は、真空を「捕食」した代償として、黒い痣が肩口まで這い上がっていた。
「レイジ、その腕……ナノマシンの崩壊信号が止まってねえ。これ以上使えば、お前の存在自体が情報の塵になるぞ」
神代が、酒を飲まずにレイジの腕を診る。彼の目は、かつて自分が救えなかった「何か」を重ねていた。
「わかってるよ。だが、あいつ(リア)の熱は、ここ(地下)まで届いてやがる。逃げりゃ、Fクラスごと焼き払われるだけだ」
2. 中央演習場:公開処刑の舞台
翌日。特区の中心に位置する「コロシアム」には、全セクターの市民へ向けた中継カメラが並んでいた。
観客席を埋め尽くすのは、上層の優等生たち。彼らにとって、Fランクが2位の黒瀬リアに挑むのは、ライオンに挑む鼠の末路を鑑賞する娯楽に過ぎない。
「あら、逃げずに来たのね。その勇気だけは『正解』に近いわ」
リアは演習場の中央で、深紅のドレスのような演算服を纏い、炎の揺らぎの中で微笑んでいた。
3. 第IV階梯・熱核演算:『プロミネンス・レギオン』
審判の合図と同時に、リアは一切の予備動作なく指を鳴らした。
瞬間、演習場の大気中にあるナノマシンが臨界点を突破。レイジの周囲に、直径数メートルの「火柱」が数十本同時に噴出した。
「熱い……なんてレベルじゃねえ……!」
レイジは黒い霧を展開して防御を試みるが、リアの演算は「火を放つ」のではない。空間そのものに**「ここは太陽の表面である」という強力な物理定義を上書き**しているのだ。霧が熱を相殺する速度よりも、世界が焼き切れる速度の方が速い。
4. 女王の審判
「無駄よ。私の熱は『意志』そのもの。システムが私を『太陽』だと認めている限り、あなたは分子一つ残らず気化する運命なの」
リアが両手を広げると、炎は龍の形を成し、空を覆い尽くした。




