第4話:音速の境界線(2/4)――「不可視の断頭台」
1. 振動する死神
風間ハルトの放つ『音速の境界』は、レイジの右腕が「触れる」前にその対象を分子レベルで粉砕する。
「物理的に接触して『消去』するのが君の力なら、触れさせなければいい。空気の振動に質量はない。君の拳が届く前に、その腕は細切れになる」
風間が音叉を微振させると、レイジの周囲に無数の**「高周波の刃」**が展開された。一歩動けば皮膚が裂け、留まれば真空で肺が潰れる。詰みの盤面。
2. ロジのバックアップ
「レイジ、右足15センチ後ろに『音の死角』がある! そこだけは干渉波が打ち消し合ってる!」
ロジが旧式端末のホログラムを操作し、風間の演算パケットの「干渉縞」を逆算して叫ぶ。
レイジはロジのナビゲートに従い、紙一重で不可視の刃を回避する。だが、風間の演算速度はFクラスのハッキングを上回っていた。
「……無駄だ。計算資源の差を理解したまえ」
風間が音叉を強く弾く。共鳴した大気が**『超音波砲』**と化し、レイジの全身を全方位から叩いた。
3. 右腕の変質:情報の「捕食」
衝撃で壁に叩きつけられたレイジ。だが、その右腕の黒い痣が、これまでにない反応を示す。
これまでは「触れたものを消す」だけだった痣が、風間の放った高周波エネルギーを**「吸い込み」**始めたのだ。
「……熱い。なんだ、これ……腕の中に『数式』が流れ込んでくる……!」
それは、オラクル・ゼロが切り捨てた「ゴミ箱」の真の機能。意味をなさなくなったデータの残骸を食らい、自らの糧とする**「情報の捕食」**。風間の洗練された演算であればあるほど、右腕にとっては極上の「燃料」となった。
4. 第二覚醒:『黒の共鳴』
レイジが右腕を突き出す。
「触れねえなら、こっちから繋いでやるよ。……あんたの『綺麗な音』、俺のノイズでグチャグチャにしてやる!」
右腕から噴き出した黒い霧が、風間の『音速の境界』と同じ周波数で激しく振動を始めた。
「無銘」の力が、敵の属性をコピーし、反転させる。
真空の処刑場に、物理法則を逆行させる漆黒の振動波が逆流した。




