第3話:虚飾の魔術師(1/4)――「鏡面の学園」
1. 隔離された教室:Fクラス
鬼塚を退けたレイジが案内されたのは、華やかなメイン校舎から地下深くへと続く、窓のない防空壕跡――通称**「Fクラス」**。
そこは、ナノマシン濃度が極端に低く、演算が物理的に制限された「落ちこぼれの墓場」だった。
「よう、新顔。鬼塚をハメたってのはお前か?」
薄暗い教室で声をかけてきたのは、ボロボロの演算服を着た数名の生徒たち。彼らはシステムから「予測不能な不純物」としてパージされた、かつての優等生や、最初から適合率が低すぎた者たちだ。
「ハメたんじゃねえ。……ただ、気に入らねえから殴っただけだ」
レイジの言葉に、教室に乾いた笑いが響く。ここでは「熱量」こそが最も無価値なデータとして扱われていた。
2. 第9位の「招待状」
その時、教室の空間がバグったように激しく明滅する。
壁、机、そしてクラスメイトたちの顔がデジタル・ノイズと共に崩れ、一瞬で豪華絢爛なチェスボードが広がる異空間へと変貌した。
「野蛮だね。暴力で序列を覆そうなんて、極めて非効率的だ」
空間の端、虚空に浮く椅子に座り、優雅に紅茶を啜る少年――学園序列9位・九条 理人。
彼はデバイスを操作することなく、思考だけで周囲のナノマシンの通信プロトコルを書き換え、レイジの「脳が見ている世界」を完全にジャックしていた。
3. 精神的迷宮:『プロトコル・オーバーライド』
「ここはどこだ。幻覚か?」
レイジが右腕を構えるが、黒い霧は発生しない。いや、発生しているはずなのに、レイジの脳がそれを「認識」できないよう、視覚信号が遮断されている。
「幻覚? 違うよ。君の脳が『ここが真実だ』と演算した結果だ。僕の能力は認知の書き換え。君が右腕を振るったという事実さえ、僕が許可しなければ、君の脳には届かない」
理人が指を鳴らす。
次の瞬間、レイジの足元が消失し、無限に続く虚無の穴へと落下する感覚が襲う。実際には教室の床に立っているはずなのに、前庭器官(平衡感覚)までもがハッキングされ、強烈な嘔吐感と恐怖がレイジを支配する。
4. 観測者の不在
「数式を殴ることはできても、**『自分自身の脳』**を殴ることはできないだろう?」
理人の冷徹な声が、全方位から響く。
レイジの右腕は激しく脈動するが、標的が見えない。敵は目の前ではなく、レイジの内側に潜んでいた。




