表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
2/5

2 合言葉はサンタクロース



「まったくお前は出来が悪いなあ!」


「そうそうぜーんぶあんたが悪いのよ!」



 そういってこの人達は今日も笑って私をぶつんだ。



 1回。


 2回。


 3回。


 避けるともっとぶたれる。

 だから私はぶたれて、ふっとぶ。

 そうした方が早く終わるから。




「えへへ…ごめんなさい」


 私は笑って 

 謝って 謝って 

 泣かないようにしてきた。

 泣くともっとぶたれるから。



 私が悪いんだ。

 もっと良い子にしてたら 

 ぶたれないよね?


 痛いのはいやだもん。

 がんばらなきゃ。

 もっと もっと。


 だから神様

 お願いします。

 助けて下さい。


 サンタクロースさん

 一度でいいから、来てください。

 いっぱいお祈りするから

 私のところへ来て下さい。






 でも……

 でも……



(叫ばねえと届かねえぞ)


 あのちょっと怖そうだけど優しいおじちゃんはそう言ったよ。


 叫べって言った。

 祈っても届かないって。



 私だって 生きてる

 私だって 私だって……!



「合言葉は……サンタクロース……」


「はぁ?なんだって?」


「あんたのとこにサンタなんか来ないわよ!だいたいサンタなんて……」



 私だって 生きたい!

 だから…! 叫ぶんだ!


「サンタさーん!助けて―!」


「てっめえ!大きな声出すなってあれほど…!」


 負けない!

 負けたくない!

 私だって

 私だって……!






「よくできたな」


 そう言ってドアをけり破って入ってきたのは、サンタさんじゃなくて、さっきのおじちゃんだった。


「誰だ!ドア壊しやがって!」


「サンタは子どもにプレゼントやるためなら不法侵入上等だろ?大目に見ろよ」


「ふざっ……!」


 俺がゆっくり銃口を向けたところでそいつらの口と動きが止まる。




 こいつらはいつもそうだ。

 逆らわねぇと思ったらやりたい放題。


「自分は正しい」

「お前が悪い」


 って念入りに刷り込ませていく。

 そのうち相手はその鎖に絡めとられ、思考を失う。


 それを打ち破るには、より強くなるしかない。文字通り、死んでもいいという覚悟で。


 ────あるいは、何をしても生きたいと強く願うか、だ。



 優しさ?

 助け合い?

 友情?


 ああ、それは大切なんだろうよ。


 けどな。

 そのキラキラな光で隠されたドス黒さは見えてるか?


 唯一信頼できると思って相談していた奴が

 翌日には秘密をばらし、嘘を振りまいている


 苦楽を共にした友人と思ってた奴が

 裏ではクソみたいに言いたい放題言っている。


 仲間だと思ってた奴らが

 嘘っぱちな話を信じて爪弾きにする


 そんな身近な人間を嘲笑う奴らが

 ネットで平和と命について物知り顔で話している


 平和が大事、命が大事という奴が

 戦争で飢え死にそうなガキには見向きもしねえ。




 次の日の保証なんてどこにもない。

 この世は強者の思うがままだ。


 そしてそんな強者に媚び諂う奴らが、御機嫌取りのために弱者を甚振る。


 そして高らかに言うんだ。

「オマエが悪い」と。

「だから私はやってもいい」と。


 お笑い草だ。

 俺に言わせりゃ同じ穴の狢でしかない。

 やってる事は変わりゃしねえ。

 正義ヅラしてる分、タチが悪い。



 それでも世の中は声のデカい奴、強い奴の意見が通っていく。



 弱者の声は、神になんて届きはしない。

 誰も聞きはしない。





 だから俺は「悪党」になったんだ。









「メリークリスマス。お前らにはコイツをくれてやる」


 俺はそいつらの口の中に銃口をねじ込んだ。

 ガタガタ震え何かモゴモゴ言ってるが、知ったことか。


 ガチャリ、と撃鉄をあげる金属音が部屋に響く。




 ───ああ、その顔だ。ガキがしていた顔と一緒だ。


「その顔で、てめえらも笑うのか?」



 なあ、神様よ。

 本当にいるんなら、ちゃんと見ておけ。

 お前の作った嘘っぱちな世界を、俺は信じない。



 俺は人差し指に力を籠める。

 そして ── 銃声が鳴り響いた。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ