決着の時!
地上の円。
半円を上から下へ走る執事と、半円を下から上へと走るマーストン。
その中心には、アレックスと、クリスティーヌが潜伏している。
そしてもう1人、ノームのヘルモンドが今、またデコイとなって立っている。
◇◇◇
ニンフを気絶させるほどの攻撃を喰らっても、執事はすぐに行動を開始した。
中央に立つ、ヘルモンドを沈黙させる!
その為に彼は傷ついた体で、ヘルモンドの前に現れなければならなかった。
ヘルモンドは、それほどの戦士、執事の感もそう言っていた。
中央突破、それを狙い執事は岩石を飛び越え、飛び越え行く!
彼を挟んで前方左右から、ふたたびアレックスとクリスティーヌが現れ、先ほどと同じ攻撃を仕掛けて来る。
「早い!?」
あの2人は、今度の攻撃は魔法を切り捨てている。
己の剣技だけで攻撃を仕掛けるというのですか!?
「しかーし、動きが単調なら、見切られてしまいますよ!」
そう執事が言った時には、前方に浮かぶ岩石に鞭を巻きつけ、その鞭に体を任せ、地面へと落下するように飛び降りた後だった。
「ダーク!」
「はい!」
彼らは、次の執事の攻撃に備え、まわりに注意を払う。
しかし、次に起こったのは衝撃と爆発音。
それは後方からした。
次に視界に入ったのは、ヘルモンドの立っていた岩石が土煙に包まれていた。
それは、大部分が消失している状態――。
「クッ」
「ヘルモンドさん!?」
瓦礫の煙が晴れた時、ヘルモンドの伏せた動かない体の背中の上着を持った、執事が立っていた。
その手には鈍く光る短剣。
次の瞬間、ヘルモンドの姿は消える。
片手から消えた重さを、執事はゆっくり見た。
「お前たちのリーダーか……」
凍てつく様な、怒りに震える声。
「お前たちのリーダー、あの青年が召喚師なのですか?」
「何を言っている? その前にお前の敵を見ろ! 餓狼の刃!!」
アレックスが剣を振るうと、狼の群れを思わせる衝撃波が執事に襲いかかる。
執事、彼も剣士と真っ向勝負は分が悪い。
背広の裏に隠され丸められていた鞭を取り出し、先ほどと同じ様に岩石の中に逃げ込もうとした時――。
アレックスの放った衝撃波が、ブーメランの様に円を描き執事の目の前に戻ってくる!?
「何!?」
そう声を漏らした時、彼が洋服の中に着込んでいた防御用のチェーンアーマーが切り裂かれ、皮膚が裂かれていた。
執事は切り裂かれ、僅かにつながっているだけの執事服を破り捨てた。
しかし――。
次の瞬間、あの忌々しいリーダー、そうマーストンと言われた小僧の声が響いた。
「お越しください! 偉大なるノームの王、ヘルモンド!」
そしてそれは目の前にふたたび奴が現れた。
忌々しい、人間の小僧の呼び出したノーム。
それは斧を握り、こちらを目掛け振り抜いてくる。
執事は防御を展開させ、大ダメージはこらえたが、臓腑への攻撃でゲホッ、ゲホッと、咳き込むと地面が鮮やかな赤に染まる。
「クッ何故だ……」
何故、こちらがわかる? そう声を出す前に、臓腑が焼ける様に熱い。
腹に薄い魔法の防御壁を展開するが、今までひ弱な人間からこんな目にあった事がない。
魔法の厚みでごわごわする感触が、執事の腹だちを増幅させた。
今、予想だにしなかった事が起きている、だが確実にわかる事がある。
まず、あの背の高い男を潰せば、この展開、何よりの忌々しさを潰せる。
そう答えを弾き出した時、執事は地上の円の端のマーストンを目がけ追っていた。
あのリーダーは、岩石地帯の中へ入らない。
クリスティーヌ様や、あの戦士より体の使い方がまだ浅いのだろう。
岩石地帯で、私に捕まる事を恐れ外周を回っている。
そして時を見て、クリスティーヌと戦士のコンビネーション、それに合わしてノームの攻撃が来るが、彼らは人間、魔力が少なく、好機となるチャンスを狙っている。
それはいつか、それもそう時間のかからない間に、魔力が0になる事を意味している。
こちらとしては時間さえ稼げば――。
勝てる。
そう私が思っているのでしょうか? 先ほど、リーダーの前に出た娘。
――あれはニンフ。
何故か、一般のニンフと違い成熟した女性の姿はしてませんが、噂に聞く万能な薬草を手にしていれば、彼らに時間制限はありません。
こちらが、彼らを見誤る時を狙っているのか?
人間は厄介な生き物です。
そんなくだらない手を、すぐ考える。
◇◇◇
先程から、執事が僕を追いかけてる。
僕は後衛という役割だから、戦う暇はない。そうレイソンに言ったが……。
「後衛だから、直接攻撃に弱いからランクが上がると、魔物に追いかけられるんですよね! レイソン聞いてますか!? 後衛でだから、いやでも、仲間の為なら走るですよ!」
そう僕は叫んだ。
正直、執事とレイソンはどこか似ている。
だから、レイソンがいるこんな機会だからこそ叫んでいる。
僕は変わりたい、だから、レイソンの仲間のケイトと、クリシラのために叫んでいる。
仲間だった。それは僕にとって大切な事だから。
そして――。
その時が来た!
執事の鞭が僕を絡めとる!!!
そう鞭は、僕の両手ごと胴体をギューギュー縛る。
「なんだと!?」
「ニンフ! 執事を確保しろ!!」
そう叫ぶと、祖父から譲り受けた上着の胸ポケットが引き裂かれる。
「あぁぁあぁぁ……大事な祖父の形見が……」
大豆のツルが伸びて来て、僕と!
そして執事を固く結びつけた!
「餓狼の刃!!!」
「紅蓮の刃!!!」
潜伏していたアレックスと、クリスティーヌの剣技が執事を捉え、彼は青く発光する。
次の瞬間、ヘルモンドから放たれた先のとがった岩石が、執事が捉える……。
その前に彼は消失し、身代わりに残った木の人形が、地面に落下する前に、彼が居た周辺を破壊して大きなクレーターを開けた!
「やったー! 見た? 見た? マーストン、ヒーラーの奥義、絶対防御だよ!! まぁー結局は、ヒーラーのスキルの強さにかかっているのだけどね。今回はあの執事さんだいぶダメージ負ってて、運よく助かっただけだけどね!」
セラティーが元気よく報告してくれる。
よく見れば、僕の上着はところどころ、切り刻まれている……。
「祖父の上着が……」
「えぇ……お爺様の上着……」
そう僕らがなげいると――。
「まーちゃん、セラティー元気だして、物はいつか壊れるものじゃよ」
そう言って僕らの腰を、ニンフがさすり慰めてくれているようだ。
「ニンフ、お爺様の物まね、うまいね……」
「ニンフは学校ずる休みして、祖父と居たからね……」
「それはダメ。マーストンとお爺様は結局、ニンフに甘かったんだからまったくもう」
その時、肩にコッと小石の欠片が当たる。
振り返るとヘルモンドが岩に座り「もう帰っていいか?」そう問いかけて来た。
「ありがとうございました。お帰りください」
そういうと彼は手を振って帰った。
そして僕らパーティーメンバーも、彼に手を振る。
「マーソトン、走っていた時のあれは何だ?」
「自分でもわかりません。なんか、追われている状態に腹が立ち、腹の中にあった気持ちがまた溢れました」
「まぁー、俺たちには溢れる前に言ってくれよ」
そう言って、彼は肩を叩く。
それに続き、クリスティーヌが「何でも、聞きますよ」と、言ってくれたので、僕は「ありがとう」と、答えた。
「とにかく! ボクたちは勝ったんだ! 【世界樹の葉】大勝利!!
「「おぉー!!」」
続く
見ていただきありがとうございます!
またどこかで!




