表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
6/63

町までの道を行く

 草原の中の、あぜ道を彼ら歩いて行く。


 どれくらい歩いただろう? マーストンは後方を振り向けば『妖精の迷い森』が大きな岩に阻まれ見るとが出来ない。


 遠くに見える山々からやって来る風が、彼の横を通りに抜け、ダークエルフさんの黒く長い髪を揺らす。


 そんな彼女は、ニンフと一緒に楽し気に歩いている。


 そして彼らの目の前には、杭と、それをつなぐ板が張り巡らされた柵が現れて、永遠と思えるほど続いて行く。


 なおも、あぜ道を歩いて行けば、それは僕らの行く道さえもふさいでしまっていた。


 ――そしても……この道は、それほどまでに馬車も通らないのだろうか? 開け閉めがめんどくさいだろうに……。 


「それにしてもこの道を塞ぐ柵には、何回見ても関心感心させられますね」


 そう言っている僕の前で、ニンフはバネを使っている柵の扉を押して、戻る姿を眺めている。


「ふふふ」


 ダークエルフさんがそれを見て笑っている。


 ――ニンフが何故かおねぇさん役を始め、僕らのそばに居てくれるけど……。ダークエルフさんと仲良くしてくれて助かった。そして僕の行動が、どれだけ見切り発車だったかわかった。


「行こう。ふたりとも」


 そうやって歩き出すと、すぐに羊の姿を眺めることができるようになる。


 そして珍しかった風景は、日向ぼっこをしながら、草を()む羊たちを数え切れなくなるほど見ていくと、この羊をどういう風に飼育しているのか? って疑問にかわるが、誰も答えを出すことのないまま、やっぱり羊の多くいる風景が続いて行く。


 のんびりした空気と、豊かな自然の風景。


 彼は優しい瞳で羊たちを眺めるが、羊にニンフが近づくと、警戒してニンフの手をとり彼女を羊から離した。


 そんな様子を、囚われていたダークエルフさんは風で流れる髪を、手でとめながらやっぱり優しい顔をして見ていた、が! 2人と去った後、残った羊がガッンと後ろ足で地面を蹴りあげた。


 羊のロックオンは、ニンフとマーストン定まっているようだ!?


「キャー!」


 そう言って彼女は叫び、マーストンたちのもとへと、疾風のように走って行く!


 ニンフの空いている手を取り、羊の存在に気づいたマーストンと一緒に逃げた。


 声は聞こえなくてもニンフが笑い、そしてマーストンとダークエルフさんは、笑いながら羊から走って逃げ去った。


 彼らから逃げられた羊はポッンと、そんな様子を見ていたが、ゆっくりと仲間の元へと帰っていった。


 ◇◇◇◇◇ 


 そしてどれくらい歩いたのか、羊の柵の中に彼らは、まだいた。


「可愛い」

 そう言ってニンフたちは、道を大きく外れ、羊たちを梯子して渡り歩いている。


 そしてさすが、彼女たちはニンフとダークエルフ、僕のようにこっちを警戒し、大きな羊をやんわり避ける作業に追われることはなく、華麗にさけられるようになっていた。


 この調子だと、ダークエルフさんから出る謎の電撃により、丸焼きになる羊はいなさそうだ。


 ――だが、町に行けばそうはいかないはず、どうしようかな……。


 そう考えていると、ニンフがこちらへ走って戻ってくる。その後に続きダークエルフさんも。


「走らないでいいよー、どうしたの?」


 そう言うと、ニンフが進行方向を指さした。


 彼女の長い金髪と、胸に結ばれている藍色のリボンが、草原を散歩する風にあおられふわっと風になびいた。


 その風の向かった先、僕らの進行方向から、馬車がガタゴトと音をたてながらやって来る。


 ほし草を乗せるような、日よけの幌がない荷馬車。


 ――御者は座るの赤い髪の青年の様で、……あの髪どこかで……?


 その青年は、白いシャツを着ていたが、隣の座席に置かれら銀色に光る鎧は……。


「おーい、マーストン」


 そうマーストンの名前を呼ぶ、見知らぬ赤髪の青年。

 しかしどこかで……。


 歳は、僕と変わらないように見えるが、どうだろう?


 背広の袖と背中を掴んで、ニンフは僕の後ろに隠れてしまった。


 ヒーヒーン! 馬は僕の前で前足を浮かし、ガタッと音をたてて馬車は止まる。

 彼は鎧側にいる、僕らのもとへ下りてくるようだ。


 彼を警戒してか、ニンフは僕の背後から離れてしまうが、馬のいななきで、マーストンが振り返ると、ニンフが馬の近くに立っていた。


「ニンフー、馬がびっくりするから触ってはだめだよー」


 しかし彼の注意する声に、彼女はさも『わかっているわ』と、いう様にうなずくが、わかっているかもしれないが、距離は変わる事は無かった。


 そしてそれを降りて来た、戦士の彼も心配するようにマーストンの隣で、一緒に見ている。


 その時、ダークエルフさんがニンフの手を引き、馬から少し離れた場所に連れていってくれた。そしてニンフの顔を見て頬む、なのでニンフもにっこりと笑った。


 ――その様子を見て、少しだけ…………、ニンフが祖父と契約したばかりの、右も左もわからなった頃、僕と兄妹のようだった時の彼女を思い出した。


 あの頃は、僕も彼女も精神年齢が子どもで、お互い補っていたが、ダークエルフさんは今、1人になってしまうと……きっと……心細いだろ。


 ◇


「大丈夫そうだな」

「ごめん、なんか君の馬を気に入ってしまったみたいで」


 ――銀の鎧で戦士だろうという事はわかる。


 記憶にないが、たぶんギルドなのだろうが、ギルドでは作戦会議、次のギルドクエストについて話し合っていることが多い。


 まわりを見る余裕はあまく、……ここは、わからないものは、わからないと素直に言うしかないだろう。


「その顔は、俺が誰か覚えてないようだな。悲しいぜぇ。俺はお前の事をづっと見てたのにな」


 そう言って彼は僕の心臓を、げんこつでノックする。


「あ……それはすまない。君の顔はどこかで見たことはある。君は戦士なら、たぶん……ギルドだろうけど」


「まぁ、そうだろうなー。俺は回復の出来る奴の顔と名前は覚えたが、お前のパーティーメンバーは皆目だからな」


「あぁ……」


 以前から、ヒーラー不足は深刻らしいけど、それで僕を見ていたのなら、僕自身もそこまで彼をそこまで覚える事はなかっただろう。少しだけ胸をなでおろした。


 何せ、今までは『正義の鉄槌』内の事だけでも、手一杯だったから。


「まぁ……可愛いお嬢さんたちの次だな、お前は。几帳面に回復を寄越しそうだが、やはり、女の子に回復された方が、なんというか夢がある」


 ――僕がもう過去になってしまった、彼らの事を思い出し、少し表情を曇らせたため誤解があったのか、彼はそんな事をはなした。


 それが逆に、パーティーメンバーでなくても、気をつかって貰った事について、なんか微妙にしんみりとしてしまった。


 そんな僕の前に、現れた彼女たちを何気なしに見た。


 そこには、お姉さんぽい顔をしているニンフが、ダークエルフの隣で立っていた。


 そして灰色のワンピースを風に揺らしながら、ニンフはやっぱり、馬たちをすごく見ていた。


 ――……手には、いつのまにか薬草が! 油断も隙も無い。


 そしてダークエルフさんは、僕がニンフを見ているのを見て、彼女もニンフを見た。笑いかけるように口角を上げていたが、そのまま笑顔が固まった。白いパジャマの様な服を着た彼女は、今度は手を口元へ当てて戸惑っている。


 うーん……、彼女なら大丈夫だろう、見守ってみよう。


「まぁ、僕は純粋なヒーラーってわけじゃないから、他にヒーラーいるなら、そちらの冒険者を僕も強くお勧めする。僕自身も女性であるってことに拘らないが、ヒーラーのいるパーティーへ加入し存分に、魔法を使ってみたいと思うからね」


「だが、世の中そんなに甘くないようだ。ギルドに一週間もいる事になった。根が生えるまで、後、少しだからお前を迎えに来たマーストン、俺はアレックスだ!」


 彼はそう言って真っすぐに手を差し出し、僕たちは握手する。


「あぁ、よろしくアレックス。マーストンです」


「じゃー俺たち仲間だな! 一緒にパーティーを組もう、マーストン! あそこのベンチはこりごりなんだ。けつが痛くなる!」


「けつ……」


「ペチッ」



 あ…………ニンフだった。ニンフが、背伸びして僕より少しばかり背の低い、アレックスの頬に苦い薬草を押し当ててた。その横で安心したようなダークエルフさんがいる。


 ――しかしいったい、いつの間にここへ?


 彼は頬にあるニンフの薬草を受け取り、不思議そうに表と裏をひっくり返してみた。


「いいのか? これは精霊の薬草じゃないのか?」


 ――はい…………、その精霊が、目の前のニンフです。


「どうぞ。ニンフは食べて貰いたいそうですよ」


「そうか――、お嬢さんは金持ちなんだな……。非常用で買おうを思ったが、1万ダニマは、手が出せなかった」


「1万!?」


 僕が驚く中、アレックスは薬草と初遭遇で、黙々とあの苦い薬草を食べている。

 それはそれで驚いた。


「あまり出回ってない上に、乾燥させると効果が半減するからな、出回るとすぐ売りきれるからかもしれないが……」


「そんな高価なものだなんて……。あっ、はい、これ口直しの蜂蜜入りの水です」


 それを彼は手で遮る。

「いや、いい。本物であれば味を覚えておきたい。時々、偽物を売りつけるやつがいるからな」


 漢気(おとこぎ)……、あのとんでもなく苦い薬草を初見で、食べきったばかりか、口直しの蜂蜜水をいらないなんて……。


 僕が驚くなか、ニンフが荷馬車の後ろにまわり、ちょこんと座り、風を受けてなびく髪を手で押さえている。


「じゃーまず出発だな」

「ですが……」


「大丈夫だ。初めからパーティーに、入ってくれるとは思っていない。まぁ、暇な時は手伝ってもらいたいがな」


 そう言って僕の背中を軽く叩き、馬車の横へと誘導する。彼は僕がパーティーを抜けてたことを知っていた。彼らはその事を触れ回っているのだろうか?


 やはり気が重くなった、だが、それと関係なくアレックスはいい人間なのかもしれない? 精霊ニンフの感を信じていいかもしれない。


 薬草が大きく評価されて、単純に嬉しかった可能性もあるけど?


 今は次へと進みたい、ここのまま、落ち込むのではなくアレックスとも、パーティーを組んでいくと考えた方が、健全だ。



 そんな気持ちのマーストンが見つめる中、御者席にベルトでとめてあった、鎧を後ろの荷台の箱の中へアレックスは入れた。


 そしてダークエルフさんも、ニンフの横にちょこんと座って、馬車という新しいものに進んで乗っている。僕だけがその場にとどまるわけにはいかないだろう。


「あの、固定のパーティーについて約束は出来ませんが、ありがとうございます迎えに来てくれて、冒険の、ギルドクエストのパーティーへ是非行きましょう!」


「本当か!? よろしくな!!」


「はい、よろしくおねがいします」


「じゃー行くぞぉ! では出発!」


「「はい」」


 手綱が打たれ、馬たちが歩き出す。


 あぜ道の道の悪いせいで、荷馬車は左右、上下に揺れ動くが、今のところダークエルフさんの様子に変わったところはないようだ。


 振動を逃がし、エルフらしい気品ある様子で、ゆったりとしながら乗っている。


「ニンフ、すまない。ダークエルフさんを見ていてあげて」


 『任せて!』という感じに、頭をコクコク動かすニンフに、「「ありがとう」」って言う、ダークエルフさんと僕。


 ――結構まずい、ファミリー化して来てしまっている……。)


「立ち入ったことを聞くけど、彼女たちは君のパーティーメンバー?……ってことはないか、君のパーティーメンバーなら、今朝会った。結局のところ、君はうー……ん、戦力外要員であるらしい。彼らの中ではね。だから、俺はその機に乗じて馳せ参じた」


「ある程度わかっていたことです。ですが、パーティーから抜けるにしても彼らと話し合わなければ、僕と合わない人間は多くいると思いますが、なぜこんな結果に……違うな……。うーん、彼らが話せば、話が通じます。だから、二言、三言話してみますよ。納得できない。もしくは理解した。そのどちらかの気持ちから、始めてみようかと思ってます」


「うん! 俺には理解できないね。 無理そうなら、無理でいいじゃねぇか。だが、お前は回復が出来るから、お前についていってやるぜ!」


 そこまで言うと、彼は身を寄せて来た。


「それにダークエルフの彼女は、こんな田舎では招かれざる客だ。彼女が暮らすためには、もう少し都会へ行くべきだ。それには戦士の助けがいるはずだ」


 そこまで言うと、もとの位置へ戻り、前だけを見て馬車を走らせる。


 どうやら、考える時間を僕にくれたらしい。


 馬車はのんびり、草原の中を走って行く。


 続く




見ていただきありがとうございます!


またどこかで。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ